反社会学講座ブログ

パオロ・マッツァリーノ公式ブログ
反社会学講座ブログ TOP >

前向きに生きてくれなんて望まない

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。
 難病患者や末期ガン患者は、明るく元気にすべてに感謝し前向きに生きて、人々に勇気と感動を与えなければいけないのですか。
 私は、難病患者やガン患者が泣きわめくことを認めたい。おのれの不運を恨み、天にツバすることを認めたい。ヤケになって、呪詛の言葉を吐き散らすことを認めたい。感謝などしなくてけっこう。勇気も感動も求めません。
 難病や不治の病になった人のほとんどは、ただ不運なだけです。その人にはなんの責任もありません。ヤケを起こして健康な人に恨みごとをぶつけるくらいの権利はあるでしょ。そういう人間の弱さを認めることこそを「寛容」というんじゃないですか。
 病気になった人に対して、自己管理が甘いからだ、などと科学的根拠のない精神論的因果をでっち上げて責める人を、私は軽蔑します。
 一方で、不運な人が聖人のように美しく生きることを期待して、勇気と感動をもらおうとする人たちのことも、私はあさましいと思ってます。
 私はオトナになってから突発性難聴を患い、片耳の聴力をほとんど失いました。デカい音で音楽を聴いてたわけでもなく、原因は不明です。まあ片耳は問題なく聞こえますから、不便なことは多々あるけれど、生きていくのに重大な支障はありません。その程度のことでも、ちきしょう、なんで自分が、と思いましたよ。
 ですから、もしも不治の病で余命を宣告されたら、ヤケを起こすかもしれません。聖人のように生きる自信なんてありません。だから他人にも、強く美しく前向きであれ、などと望まないのです。
[ 2017/06/28 10:45 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)

誤解二題

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。
誤解その1。
 「鵜呑みにするな」という言葉を誤解してる人がいるようです。根拠のない話をたやすく信じてはいけない、というのが、「鵜呑みにするな」の正しい意味・用法です。
 ところが、こちらが根拠をあきらかにして主張してるにもかかわらず、「鵜呑みにしてはいけない」などという人がいます。それだと単なるイチャモンだし、反則です。
 根拠があきらかなのに、自分の気にくわない事実を信じたくないから鵜呑みにしないというのは、強情張ってるだけの愚か者です。

誤解その2。
 私は日常生活での「昔はよかった」はありえないといいましたけど、古いものをすべて否定してるわけじゃありません。趣味の世界にかぎって、それを楽しむのならアリだと思ってます。
 たとえば、観光地でSLを走らせてそれに乗りに行くってのはアリです。でも、都会での毎日の通勤がSLだったらイヤでしょ。ススで黒くなるし、冷暖房のない列車なんて、もう考えられません。
 ここ数年、LPレコードが再評価されてますけど、レコードで音楽を聴くのはアリです。レコードの音には独特の味わいがありますから。
 でもだからといって、CDもデータ再生もすべてやめてアナログレコードだけの時代に戻れといわれたら、それは絶対イヤですよ。
 たまにマニア気取りなのか、昔の音楽や映像作品だけをベタ褒めして、今の作品をまったく評価しない人がいますけど、それは違いますよね。新しい作品にだって、いいものはあります。
 趣味の世界では、昔「は」よかったではなく、昔「も」よかった、という態度が望ましいのでは。
[ 2017/06/18 20:58 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)

『みをつくし料理帖』が滅法おもしろい

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。いつものように朝ドラは、テレビをつけたままいろいろやりながらの視聴。日によって観たり観なかったり。それでもストーリーがなんとなくつかめちゃうのが朝ドラたるゆえん。この前の関西が舞台だったヤツは、人工感動甘味料たっぷりのウソ臭い話だったけど、今度の『ひよっこ』はなかなかいいんじゃないでしょうか。
 私が感心したのは、主人公みね子のおじ(峯田和伸さん)が、ビートルズの素晴らしさを熱っぽく伝えようとするも、周囲の若者は全然無関心というシーン。時代の現実を正しく描いてます。60年代、ビートルズの良さを認めてたのは、ごく一部の人たちだけでした。ほとんどの若者は興味がないか、バカにしてたんです。

 今期はドラマが不作とかボヤいてたら、遅れて大当たりが来ました。『みをつくし料理帖』。時代劇です。
 これ以前、民放で北川景子さん主演の単発ドラマとしてやってましたよね? いまひとつだったんで、途中で見るのやめちゃいましたが。
 同じ原作を作り直す、いまふうにいえば、リブートですか。大成功ですね。原作は読んでませんが、おそらく黒木華さんのほうが原作のイメージに近いのでは?
 黒木さんは古風な顔立ちのせいで、時代劇とかの起用が多いけど、ホントはもったいない。現代劇でも頭抜けてうまい人だから。ももクロの映画でも、新任教師役の黒木さんが登場した瞬間から、だらけた空気が引き締まって映画のグレードが上がりました。けなす人もけっこういた『リップヴァンウィンクルの花嫁』も私は好きですね。周囲に流されっぱなしで不幸になる、あんまり共感できないキャラなのに、黒木さんが演じるとなんだか絵になる。
 で、『みをつくし料理帖』でも当然のごとく、うまい。他にもうまい役者ばかり揃えてしまったので、木村祐一さんだけヘタなのが目立っちゃいました。でもこれ、木村さんのせいでなく、キャスティングの失敗です。東京の人がムリに関西弁しゃべると、関西の人は気持ち悪いっていうでしょ。その裏返しで、普段関西弁の木村さんが江戸弁で芝居するから、ぎこちなくなっちゃってるんです。

 時代劇が衰退したのは、チャンバラと勧善懲悪という固定概念から抜けられなかったせいだと私は思ってます。似たような話ばかり作れば、飽きられますよ。NHKが『ちかえもん』とか、チャンバラに頼らない時代劇を作っていることは非常に野心的な試みで、もっと評価されてもいいのでは。あ、そういえば『ちかえもん』も『みをつくし料理帖』も脚本は藤本有紀さんじゃないですか。
[ 2017/06/03 22:02 ] おすすめ | TB(-) | CM(-)

テロの本当のおそろしさ

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。イギリスでテロ事件が起きて、世界中から「テロとは断固として戦う」みたいな声が聞こえてきますが、私はいまだに釈然としないことがあるんです。
 みなさんもうお忘れかもしれませんけど、ほんの1年前ですよ、イギリスのEU離脱国民投票直前に、EU残留支持派の女性議員が、離脱を支持するイギリス人男性に惨殺される事件が起きたのは。
 これ、政治的理由で議員が殺されたのだから、まぎれもなくテロなんです。実際、殺された議員のご主人は、葬式だか追悼式だかの席で、妻はテロによって命を落とした、と明言してました。私もそう思います。なんという卑劣なテロだろうと憤りをおぼえました。
 ところが、です。イギリスのメディアも、他の国のメディアも、この件をテロとして強く非難しなかったように思います。
 いつもなら「テロには決して屈しない」「テロとは断固として戦う」などと毎度おなじみのコメントを発表するはずの各国首脳たちも、口をつぐんでました。
 なぜか? それは、この件をテロだと激しく非難してしまうと、イギリス国民の半数以上にあたるEU離脱賛成派を、テロリストの同胞であるかのように非難することになるからです。そうしないための配慮だったのでしょう。
 こうして、卑劣な政治テロは、単なる殺人事件として片付けられました。

 これこそが、テロの本当の恐ろしさなんじゃないですか。テロとはなにかという、世界共通の明確な定義はないんです。そのときどきの支配者層や多数派国民に都合のいいように決められてしまうんです。
 つまり、その国の国民の大多数が支持する政策を維持するための殺人ならば、それがどんなに卑劣な殺人であっても、テロとはみなされない可能性がある。逆に、その国の政治的少数派がなにか文句をいえば、それだけでテロとみなされる可能性もあります。

 ですから政治家のみなさんには、こう宣言していただきたいのです。
「テロとは断固として戦う。たとえそのテロリストが自分の仲間や支持者だったとしても」
 そうでないと、テロ対策が政治的弾圧のための道具として利用されかねませんから。
[ 2017/05/28 22:43 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)

コント『3人の霊と暮らす男』

コント『3人の霊と暮らす男』

 ボクはいま、3人のおっさんの霊と狭いアパートの部屋で同居している。
 きっかけはテレビCMだ。彼女いない歴20年の大学生であるボクはCMに影響され、うちにもどんぎつね出ないかなあと軽いキモチでどん兵衛を食べた……
 つもりだったのだが、まちがえて赤いきつねを食べていることに気づいた。
「はい、ちゅーもーく!」
「なんか違うの出た」

 それ以来、説教とウンチクをたれるのが好きな長髪中年男性の霊が部屋に居着いてしまった。
「人という字は」
「その話、もう聞き飽きました」
「ところでキミは、なぜ私を呼び出したのですか」
 経緯を説明した。
「キミは一度失敗しただけであきらめるのか、このバカチンがっ!」
「すいません。って、怒られたポイントがよくわからねえなあ。……待てよ? 赤いきつねを食べてあなたが出てきたということは、チキンラーメンを食べればガッキーが出てくるのでは?!」
「チャレンジしてみんしゃい!」
 とってつけたような博多弁にうながされ、ボクは速攻でチキンラーメンを作って食べた……
 つもりだったのだが、あわてていたせいで、まちがえてわかめラーメンを食べてしまった。
「わーかめ好き好きー!」
「また違うの出たっ」

 今度もおっさんの霊、しかもなぜか、もじゃもじゃヘアーとつんつんヘアーのコンビで登場。新旧どちらが呼ばれたか迷ったので両方来たという。知らねえよ。

 こうしてボクは、髪型が個性的な3人のおっさん霊と暮らすはめになった。
 その後、あらためてどん兵衛とチキンラーメンを食べてみたが、なにも出てこなかった。
[ 2017/05/21 21:26 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)
プロフィール

Author:パオロ・マッツァリーノ
イタリア生まれの日本文化史研究家、戯作者。公式プロフィールにはイタリアン大学日本文化研究科卒とあるが、大学自体の存在が未確認。父は九州男児で国際スパイ(もしくは某ハンバーガーチェーンの店舗清掃員)、母はナポリの花売り娘、弟はフィレンツェ在住の家具職人のはずだが、本人はイタリア語で話しかけられるとなぜか聞こえないふりをするらしい。ジャズと立ち食いそばが好き。

パオロの著作
会社苦いかしょっぱいか

みんなの道徳解体新書

日本人のための怒りかた講座

エラい人にはウソがある

昔はよかった病

日本文化史

偽善のすすめ

13歳からの反社会学(文庫)

ザ・世のなか力

怒る!日本文化論

日本列島プチ改造論(文庫)

パオロ・マッツァリーノの日本史漫談

コドモダマシ(文庫)

13歳からの反社会学

続・反社会学講座(文庫)

日本列島プチ改造論

コドモダマシ

反社会学講座(文庫)

つっこみ力

反社会学の不埒な研究報告