反社会学講座ブログ

パオロ・マッツァリーノ公式ブログ
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最近よかった映画など

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。ニャー。猫ひろしさんのオリンピック出場方法に関して賛否両論あるといいますが、私が目を通したところでは、否のほうの意見には、なぜいけないのかを論理的に説明できてるものがひとつもありません。オリンピックに「論理」って種目がなくてよかったですね。もしあったら、日本代表はきっとアジア予選敗退でしょう。

 先日、ひさしぶりにレンタルDVDの店に行ったのですが、ちょっとした気の迷いから、キュートンのライブDVDを借りてしまいました。予想を裏切らないヒドいネタが多いので、あえてオススメはしませんが、ときおり妙にヘンなツボにはまってくるんで嫌いじゃありません。私の一番のお気に入りは、鬼奴さんがひとしきり踊り狂ったあとに正面を向いて、「金麦と待ってるからー!」と叫ぶネタ。檀れいはそんな動きしねえよ!

 BSフジで再放送していたドラマ『結婚できない男』。もう6年前の作品ですか。本放送のときは2話目から見はじめたので、今回は初回だけ、のつもりが最終回まで見ちゃいました。やっぱり傑作です。ムダなシーンがひとつもないといったら、いいすぎか。
 ドラマとはまったく無関係ですが、阿部寛さんと夏川結衣さんが夫婦役をやってる映画『歩いても歩いても』も近年の日本映画の中では屈指の名作。事件らしい事件も起こらないおだやかな日常のひとこまから、ふっと人間の業と悪意が立ちのぼる。すぐれた短編小説を読んだような味わいがあります。

 私は年に300本くらい映画を観ます。というとマニアだなと思われるかもしれませんが、実際に最後まで観るのは5本に1本くらい。そんな贅沢な見かたができるのは、WOWOWかNHKBSで放送されるのを、おもしろそうなものを片っ端から録画しといて、あとで観るからです。最初の20分くらいでつまんないなと判断したら、そこですっぱりやめて消去してしまいます。『アバター』でさえ、話に興味が持てなかったので、途中でやめてしまいました。だから青い人たちがどうなったのか結末を知りません。
 最近観たなかでは、『トゥルーグリット』が、開始10分で、おもしろくなる予感がビンビンしてました。予感は本物で、西部劇の王道に沿っていながら、古臭さをまったく感じさせないところが、さすがコーエン兄弟だなと。日本ではちかごろ時代劇映画の新作がやたらと公開されますが、どれも古臭いし、力がないように思えてしまうのはなぜでしょう。かえってむかしの白黒の時代劇のほうが、表現の力強さや威圧感に驚いたりします。今井正監督の『仇討』とかね。

 あとは『メアリー&マックス』。ファンタジーでない長編のクレイアニメということで珍しいので観てみました。きっつい内容ですよ。オーストラリアの孤独な少女メアリーがアメリカの電話帳から適当に選んだ相手に手紙を送り、長年にわたる文通が続くのですが、その相手マックスはアスペルガー症候群(自閉症に似たものだそうです)のおっさん。手紙のやりとりだけで互いの人生がつづられるのですが、途中二人が仲たがいしてからメアリーはアル中、離婚、自殺未遂と、転落人生をおくります。こんなに心が重くなるクレイアニメははじめてです。それでもラスト、メアリーがはじめてマックスのもとを訪ね、マックスの想いを知るシーンでは、涙しちゃいました。だからといって、こういうのを安易に感動という言葉で語ってほしくはないですね。
[ 2012/03/28 22:25 ] おすすめ | TB(-) | CM(-)

悩めるお母さんのための読書案内第9回がアップされました

 こんにちは。スマートじゃないホンを使ってるパオロ・マッツァリーノです。スマートなんだったら、図書館や劇場や電車内に入ったら、それを感知して自動的にマナーモードになる、あるいは強制的に電源を切るような機能くらい、そろそろ搭載してほしいものです。
 さて、「悩めるお母さんのための読書案内」第9回が更新されました。アップ直前になって、ちょこっと修正をお願いしたくてわがままいったら、まにあわずにアップされてから直してもらったりとゴタゴタしてしまいました。
 さて、今回取りあげたのは『寺子屋式古文書手習い』。興味のない人にはまったく意味のない本かもしれません。私も江戸時代の古文書を読むところまでハマってはいませんが、明治時代くらいまでの資料を読むには、印刷資料や新聞記事であっても、変体仮名のような古い文字の知識と、基礎的な漢文が読める素養がないとつらいです。

 私はここのところ、近現代の文化史・庶民史みたいな小さな歴史ばかりに興味を持って調べてますが、それは庶民目線で現代と過去を比較することでしか見えない真実がたくさんあるからです。
 たとえば電車や汽車でのマナー問題なんてのは、いまにはじまった話でなく、明治時代からすでに新聞で取りあげられてるんです。
 大正時代、すでに「近頃はあたしみたいな婆さんが電車で立ってても、若い人は本を読むふりなんかして、席を譲ってくれない」とマナー低下を嘆く新聞投書が見られます。マナーや道徳はむかし高かったのがだんだん低下したわけではなく、ずっと底値安定のままなんですね。
 もっと驚いたのは、この数日後に「あんたみたいに物欲しげにしてるババアには、こっちも席を譲る気がしなくなるんだよ」と、いまならネットでしか見られない罵詈雑言が、新聞投書として堂々と載るんです。
 小さな歴史を見ていれば、戦前・戦後を通じて、日本人の道徳心・公徳心は向上も低下もしていないとわかるのですが、デカい歴史ロマンばかりを追いかけて、小さな庶民史をないがしろにする人は、「むかしはよかった」というんです。
[ 2012/03/22 21:30 ] おしらせ | TB(-) | CM(-)

違いのわかる? わからない? 男

 こんにちは、パオこく堂です。あれ? 卒業式で君が代を歌ったら、口と声がずれているぞ。
 さて、かっぱえびせんのパッケージが変わって、おいしくなったと書かれているのをスーパーでみつけたので、買ってみました。
 んー……? しばらく食べてなかったので前のと比べようがないのですが、ちょっとしょっぱくなったような。気のせいですか。もともとおいしいお菓子なので、大幅に味を変えてしまったら元も子もありません。リニューアルといってもこんなもんでしょう。

 夜に原稿を書くことも多いので、夏場は晩飯のときしばしばノンアルコールビールを飲んでました。冬以降飲んでなかったら、こちらも定番商品がいつのまにかリニューアルしていたようなので、試してみました。
 新製品のアサヒドライゼロは味がない。ビールのスーパードライの味を忠実に再現してるともいえますが、私の好みではありません。キリン・フリーは、以前は妙に酸味が強くて敬遠してましたが、マイルドになったようです。サントリー・オールフリーはどこが変わったのかわかりません。もともとバランスが取れた味でしたし。私がひいきにしていたのは、もっとも苦みを感じられてビールっぽかったサッポロプレミアムアルコールフリー。こちらはリニューアルで香ばしさと甘みをやや強めたようで、そのせいか苦みが少々引っ込んだ感じ。でも各社リニューアル後も、結局私の順位はサッポロ、サントリー、キリンのまま変わらずということで。

 パソコンに入れた音楽ファイルをオーディオのスピーカーで聴くために、Icon uDACというUSBDACを使ってます(現在店頭で販売されてるのはuDAC2という後継機)。パソコンのUSB端子から音楽信号を取りだして、アナログ変換してアンプに送り込む装置です。これが最近、音が途切れたり、接続しても認識しないことが多くなりました。どうやら付属品だったUSBケーブルの接触不良のようなので、ものは試しと、音がいいとされるオーディオ用USBケーブルを購入してみました。
 オヤイデ電気のd+USB classB。パソコン用のUSBケーブルは400~500円も出せば買えますが、こいつは2千数百円もするんです。この程度で驚いちゃいけません。オーディオ用をうたう高級USBケーブルには、数万円するものすらあるのですから。かっぱえびせんみたいに気軽に試せません。
 つなげて音を聴いてみました。結果ですか? なんにも変わりません。プリンター用に使ってるごく普通のケーブルと付け替えて聴き比べても、差はわかりません。(うちのシステムは、スピーカーがダリ・ロイヤルタワー、アンプがマランツPM8001、プレーヤーがデノンDCD1500AE)まあ、私としては、予想どおりの結果でしたから、それほどがっかりもしません。
 USBケーブルで音が変わるというのは、ほぼ気のせいです。スピーカーケーブルなどは多少音が変わりますが、数千円、数万円の投資に見合う変化ではないし、そもそも実際付け替えてみるまで自分の好みの音色になるかどうかの保証もないし返品も効かないのだから、きわめてタチの悪いバクチです。
 USBにかぎらず、ケーブルを何種類も試してムダ金費やすくらいなら、そのお金を貯めて、DACやスピーカーやアンプそのものを、もっといいものに買い替えたほうが絶対、満足度は高いことでしょう。
[ 2012/03/19 10:41 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)

デザインの力

 こんにちは。モッフルメーカーを買おうかどうか1年前から迷っているパオロ・マッツァリーノです。こないだふと思い出したんです。買おうかなあと迷ってたら震災が起きて、そのあとずっと忘れてたことを。結局買ってないですけど。
 震災後1年経っても、エネルギー政策の方向性に関しては、まだ水面下で足の引っ張りあいして迷走中ってのが情けない話。
 私は、原発は時代遅れの技術だと思ってます。使用済み核燃料の処理や再利用に関して、国家の支援を受けた世界中の研究者が40年以上にわたって研究してきたのに、いまだに実用レベルに達してない。私企業の研究者だったらもう、研究部門ごとリストラされてます。自然エネルギーを批判する人たちは、なにかというと、実用化の見通しがたたない、とケチをつけますが、だったら原発技術の進歩のなさだってもっと痛烈に批判されてしかるべきです。
 自然エネルギーのなかでは、少なくとも日本では、地熱発電がもっとも現実味があるように思えます。危険性はほとんどないし、発電量もそこそこ見込めるし、事実上、燃料費は永久無料。
 なのに解せないのが、日本では地熱発電に適した場所は国立公園内だから発電所を建てられないという理屈。むしろ、人が住んでない国立公園内に建てれば、立ち退き交渉でもめることはないし、地元へ交付金ばらまく必要もない。いろんな意味でクリーンなエネルギーです。
 美観を損ねるから、というのが理由らしいのですが、だったら話は単純です。地熱発電所のデザインコンペをやればいい。自然の中に建っていても美観を損ねない、自然と共存できる発電所のデザイン案を、世界中の建築家、建築デザイナーに考えてもらえばいいんです。環境と技術の融和は世界的な関心事ですから、大々的に告知すれば、世界中から応募が殺到しますよ。
 だいたい、自然の中に人工的な建築物を建てることが美観を破壊するというのなら、宮島の厳島神社なんかどうなんですか。自然の海岸に、真っ赤っかで派手派手な人工建造物がドカンと鎮座しています。不自然極まりない。しかも厳島神社は国立公園内にあるんですよ。だけど、自然の美観を損ねてるから取り壊せってだれもいいませんよね。
 神社だから特別許されるの? じゃあいっそのこと、神社の社殿のカタチをした地熱発電所にしちゃいましょうか。クールジャパンです。外国人観光客が押し寄せます。お土産用に地熱まんじゅうを売ります。
 まあ、こんなのはネタレベルのアイデアにすぎませんが、マジメな話、私はデザインの力でこの問題は解決可能だと信じてます。
[ 2012/03/14 09:13 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)

ホットコーヒー裁判の真相

 こんにちは。パオロ・マッツァリーノです。世間にはNHKの受信料を払ってない人がいます。経済的事情で払えないのならわかるのですが、単にケチで払わないくせに、それを権力への反抗だとかヘンな理屈こねて正当化するケチンボは不愉快ですね。NHKはニュースと天気予報以外はスクランブルかけて、受信料払わないと見られないようにすればいいのに。
 私はBSまで含めれば、NHKの番組に受信料を払う価値はあると思ってます。NHKとWOWOWはカネ払って見てます。
 先日NHKBSで放送されたアメリカのドキュメンタリー『ホットコーヒー裁判の真相』はひさびさに衝撃的な内容でした。
 これは当時ずいぶん話題になった、マクドナルドのコーヒーをこぼしてヤケドしたと訴えたおばあさんが数億円の賠償金をもらえた、とされる事件。あれを再検証した番組です。日本でも、「そんなことで訴えて大金持ちになれるなんてアメリカって国はばかげてるぜ」「クレーマーと弁護士ばかりがボロ儲けするゆがんだ訴訟社会だ」みたいな言説が広まりました。いまだにそう思ってる人も多いでしょう。私も例外ではありませんでした。でも、事実はかなり違ってたんです。

・被害者は駐車場に停めたクルマの助手席で、砂糖とミルクを入れようとして(テイクアウトで買ったばかりの)コーヒーのフタを開けようとして、脚にこぼしてヤケドした(その意味では被害者にも責任はあり、裁判でも被害者側に2割の責任があったとしている)
・ただし、そのヤケドは皮膚移植が必要なほどの重症で、治療に1万ドル以上かかった。被害者はマクドナルドに、保険でカバーできなかった治療費と、コーヒー容器の改良を求めたが拒否されたため、訴訟を起こした。
・裁判の過程でべつの事実も明らかにされた。コーヒーでヤケドしたという苦情が、過去10年で700件以上も寄せられていたにもかかわらず、マクドナルドはそれを無視し、なんの対策も講じようとはしなかった。
・陪審員はその事実を重く見て、企業側の責任を問うことにした。対策を講じなかったことで得たコーヒーの利益を算定し、補償的賠償16万ドル、懲罰的賠償270万ドルを課す判決を出した。なお、これは陪審員全員一致の判決だった。

 この判決が報道されたことで、クレーマーによるボロ儲けという批判が急速に広まったのです。ところが事実にはまだ先がありました。

・裁判官は陪審員が決めた賠償額を48万ドルに減額した。その後、原告と被告のあいだで非公表の金額による和解が成立した(だから実際にもらったのはせいぜい日本円にして数千万円ってところでしょう)
・アメリカの大企業の経営者たちは、この事件に批判的な論調が世間に広まったのを好機ととらえ、巨額の資金を投入し、消費者の権利を制限する法律の制定に動いた。
・「巨額な医療訴訟を起こす不届き者が増えたせいで医療費が高騰し、一般の消費者がわりを食っている」などと巧みに宣伝した結果、市民の支持を集め、州によっては賠償額に上限を設ける法律が施行された。しかし、賠償額が制限されたにもかかわらず、医療費の高騰は以前より激しくなっている(医療費が高騰する真の理由は、製薬会社と保険会社が巨額の利益を得てるからである)
・企業が従業員や顧客と契約を結ぶ際に、従業員や顧客は企業を裁判に訴えることはできず仲裁で解決する、という強制的仲裁条項を契約書に盛り込むことも合法化された。しかもその仲裁をするのは企業側が選んだ人間である。

 実際、アメリカでは雇用契約やクレジットカードの契約に、この強制的仲裁条項が盛り込まれることが増えてきたといいます。この契約をすると、たとえ会社のミスで不利益を被っても、裁判に訴えることができないのです。
 番組では、軍事産業の会社に雇われイラクに派遣された女性が、同僚に集団レイプされたにもかかわらず、強制的仲裁条項が契約書にあったため、会社側の管理責任を裁判に訴えることが出来なかった例をあげています。
 なんか、納得いきませんよね。強制的に仲裁で解決し、裁判は起こせないという契約が有効になるなら、もはやアメリカの法制度は機能停止したも同然じゃないですか。

 なんか番組見てたら、愕然を通り越して、吐き気がしてきました。
 日本も決して他人事じゃないですよ。ここ数年、テレビや雑誌では理不尽なクレーマーやモンスターの事例を紹介する番組や記事が頻繁に見られます。たしかに許せないヒドい例もあります。でも、なんかちかごろ世間に「苦情をいうのは個人のわがままである」「クレーマーはすべて悪」という空気がだんだん強くなってる感があるのも否めません。
 それでなくとも日本の社会はもともと、異論に対してとても不寛容でした。和を乱すな、空気を読め、などといって、正当な主張まで門前払いして泣き寝入りを強いるのが、日本人の得意技だったのです。それに加えて、クレームはすべて悪、文句をいうのはモンスター、とする風潮が加わったら、批判も権利の主張もできない硬直した社会になってしまいかねません。
 クレームやモンスターをすべてひとくくりに善か悪かと決めるのは危険です。問題は、面倒でも個別に判断して対処するしかないんですね。

[ 2012/03/08 17:41 ] おすすめ | TB(-) | CM(-)
プロフィール

Author:パオロ・マッツァリーノ
イタリア生まれの日本文化史研究家、戯作者。公式プロフィールにはイタリアン大学日本文化研究科卒とあるが、大学自体の存在が未確認。父は九州男児で国際スパイ(もしくは某ハンバーガーチェーンの店舗清掃員)、母はナポリの花売り娘、弟はフィレンツェ在住の家具職人のはずだが、本人はイタリア語で話しかけられるとなぜか聞こえないふりをするらしい。ジャズと立ち食いそばが好き。

パオロの著作
みんなの道徳解体新書

日本人のための怒りかた講座

エラい人にはウソがある

昔はよかった病

日本文化史

偽善のすすめ

13歳からの反社会学(文庫)

ザ・世のなか力

怒る!日本文化論

日本列島プチ改造論(文庫)

パオロ・マッツァリーノの日本史漫談

コドモダマシ(文庫)

13歳からの反社会学

続・反社会学講座(文庫)

日本列島プチ改造論

コドモダマシ

反社会学講座(文庫)

つっこみ力

反社会学の不埒な研究報告