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悩めるお母さんのための読書案内が更新されました

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。夏休みになると、平日の昼間からこどもが街の中をたくさんうろついてて、うっとうしいです。どこが少子化なんだ、とか思っちゃいますけど、なかなか数字と実感は一致しないものです。

 Web春秋連載の『悩めるお母さんのための読書案内』が更新されてます。今回は論理的思考についての本。といっても、論理的に考えればなんでも解決できる、みたいな理想論を安直にすすめる本ではありません。論理と常識は相反するものではなく、両方とも持ってないといけません。

 ところで先日、NHKで『ドキュメント72時間』という番組が放送されてました。同じ場所に3日間カメラを据えて、そこに行き来する人たちの人間模様を取材するドキュメンタリーです。数年前にレギュラー番組として毎週やってたときには、秀作が多くて楽しみだっただけに、終わったときはとても残念でした。
 それがひさしぶりに、4回のミニシリーズとして復活したのですが、今回も、期待を裏切らない出来。新大久保にある、客がほとんど外国人ばかりの八百屋さん、札幌すすきののおにぎり屋さん、中国からクルーズ船でやってきた数千人の団体観光客でてんやわんやになる博多の家電量販店。8月に再放送があるらしいので、見逃したかたはぜひ。
[ 2012/07/24 22:01 ] おしらせ | TB(-) | CM(-)

最近気になった世論調査

 こんにちは、機長のパオロ・マッツァリーノより、ご搭乗のみなさまにごあいさつを申し上げます。弊社はコストダウンを実現するため、機体はすべて中古を購入、ペンキなども塗り直さずそのまま使用しております。そのため、便ごとに機種と見た目が異なることをご了承ください。
 本日の機体は米軍より格安で払い下げられたMV-22、通称オスプレイでございます。米政府により安全性は保証されておりますのでご安心ください。なぜ格安だったかを深く詮索するのはご遠慮ください。
 弊社のCAもすべて中途採用ですので、能力、見た目などにバラツキがございます。年齢・性別などを深く詮索するのはご遠慮ください。
 なお、中国のみなさま、領土問題への苦情は機内では受け付けておりません。東京都消費生活総合センターに連絡されますよう、お願いします。

 先月、6月に言論NPOという団体が「第8回 日中共同世論調査」の結果を公表しました。今回、各新聞などで取りあげられたので、この調査の存在をはじめて知りました。
 日中両国で、互いの国に対する印象などを調査したそうです。調査を紹介した新聞記事によりますと、日本人の中国に対する印象は、「良くない印象」「どちらかといえば良くない印象」を合わせると、84.3%で過去最悪を更新したというんです。
 でも、中国側の調査だと、日本に対する印象で良くない(どちらかといえば含む)と回答したのが64.5%です。
 おや、中国の人たちのほうが、日本に対して好意的なんですね。私はこの結果を意外に感じました。中国人はもっと日本を嫌ってるとばかり思ってたんです。
 でも考えてみれば、そんなに日本を嫌ってたら、中国の富裕層が日本観光に押し寄せてきませんよね。嫌いな国の電気製品を爆買いしないだろうし。
 日本旅行業協会の「旅行統計2012」を見ても、日本に来る外国人観光客の半数は、中国・韓国・台湾の人です。逆に、日本人が行く海外旅行先で多いところはといいますと、中国・韓国・アメリカで、全体の約半数を占めてます。お互いに嫌ってるというわりには、ずいぶんと行き来してるようです。
 私が気になったのは、印象が「良くない」と「どちらかといえば良くない」という回答を一緒くたにしてしまってるところです。実際には、両者には意識にかなり差があるはずなんです。
 「良くない」ときっぱり答える人は、たぶん政治的にも文化的にも本当に相手を嫌ってる人です。「どちらかといえば良くない」と答えた人は、たいして関心はないんだけど、ニュースとかを見ると、どっちかといえば、イヤかなあ……でも旅行には行ってみたいよね、なんて人でしょう。もし選択肢に「どちらともいえない」があったら、ほとんどの人がそちらに丸をつけてた可能性があります。
 だからこの二つを一緒にして、良くない印象が8割とするのは、統計の解釈としてはかなり乱暴です。というわけで、「良くない」と「どちらかといえば」の実数がそれぞれどのくらいだったのか知りたくて、調査の元データを参照したのですが、その数字はなぜか公表されてないんです。
 それより、内容以前に、調査方法のところでひっかかりました。日本側の調査は訪問留置回収法で、有効回収標本数は1000である。うん? いやいや、普通こういう調査では、有効回収率を発表するものです。何人にお願いして何人から回答を得られたか、その率が大事ですから。
 ところが公表されてるのは有効回収数のみ。しかも、1000ぴったり? 去年までの調査も確認したところ、毎回、有効数は1000ぴったりになってます。毎年ぴったり同じ数を回収? 奇跡です。
 中国側の調査はなぜか面接法でやってるそうで、あちらの有効数は毎年1500~1600くらいの範囲でバラツキがあります。それが普通です。
 というわけで、言論NPOにメールで調査方法について問い合わせてみたところ、回答していただきました。それによると、調査はある調査会社に委託しているそうですが、調査会社がいうには、毎年、年齢や地域が偏らないように抽出した人たち1000人にお願いして、1000人分回収してるとのことです。
 ありえない。
 日本国が多額の費用と大量の調査票回収員を投入して行い、回答することが法で義務づけられている国勢調査でさえ、近年では4%程度の未回収分があるんです。
 なのに、名前を聞いたこともない民間の調査会社からいきなり頼まれた、回答する義務も義理もまったくない調査に、1000人全員がきっちり回答してくれることなど、ありえません。
 たとえお願いしたときに「いいですよ~」と快諾しても、回収に行くと留守で連絡が取れなかったり、「やっぱりめんどくさいからやめた」「仕事が忙しくて忘れてた。あんた適当に書いといてよ」なんて人が必ず出てきます。人間だもの。人間って、いいかげんなんだもの。
 とくにこの手の政治意識みたいな調査では、興味関心のある少数の人だけが熱心に回答して、興味のない人からは相手にされないのが普通です。だからまず、ランダムに選んだ1000人が全員引き受けてくれたという時点で、怪しいと思わなきゃ。
 そもそも、回答数を1000人ぴったりにする理由はなんなんでしょう? 中国側の調査は端数が出てるのに、その結果を疑う人はいません。日本側だって、べつに964人とかだって全然かまわないのに、そこだけこだわるのは不自然です。
 私がこの調査の依頼者だったら、調査票をすべて再確認しますね。
 アンケート調査の正しい見かたを教える本は、何冊も出ています。谷岡一郎さんの『社会調査のウソ』とか、私もあちこちで勧めましたけど、いいかげん、マスコミの人たちも読んで勉強してほしいんですよ。まずは調査の方法を確認しましょう。調査内容を論評するのは、そのあとです。
[ 2012/07/21 14:33 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)

教育委員に願うこと

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。先週は七夕でした。願いごとを書いた短冊がつるされた笹が、いろんなところに置かれてました。
 きっと、日本全国の教育委員会の笹には、こんな短冊がぶらさがっていたんでしょうね。
「いじめと自殺の因果関係がありませんように」
「いじめが道徳教育だけで自然と消えてなくなりますように」
「いじめ問題を学校現場が処理してくれますように。自分の任期中に教育委員までめんどくさいことがまわってきませんように」
「無事任期を終えて、引退後は山登りとガーデニングと絵手紙にいそしめますように」

 いじめが発覚しても教育委員や校長がなにもしないのは、当人たちが無能なせいもあるけれど、学校教育法の問題もあるんです。学校教育法とその施行規則には、児童生徒に対して、体罰以外の懲戒を加えることができるとあります。その懲戒の例としてあげられてるのは、退学・停学・訓告です。ただし、小中学生に対しては、退学と停学はできないことになってます。
 てことは要するに、小中学生がクラスメートに対してどんなに陰惨ないじめをしていたとしても、学校側は訓告処分、「いけませんよ」と口でいうことしかできないと、法律で定められちゃってるわけです。
 今回のいじめ自殺事件でも、いじめが発覚しても担任はちょっと叱っただけで、あとは笑ってみてたとする報告がありました。みなさんそれを責めますが、おそろしいことに、その担任は、法律にかなった対応をしていたことになるんですよ。
 バカにしてますよね。あとは道徳教育で心を豊かにしていじめを防げとでもいうんですか。「己の欲せざるところは人に施すなかれ」とか声に出して論語を読ませれば、自分がしてほしくないことは他人にもしなくなるとでも思ってるのなら、救いようのないアホ教育者です。自分が絶対されたくないことを、あえて他人にするのが「いじめ」なのに。
 だから学校教育法を早いとこ改正して、小中学生に対しても停学や謹慎などの懲戒を科せられるようにすべきです。本来なら、法律が被害者の味方をしなければいけないのに、いま、それができてない。だから、非合法な体罰でいじめっ子を処罰するか、被害者が自殺してから裁判で責任を取らせるか、事実上、その極端な二択しか残されてないんです。
 いじめと自殺に因果関係があろうがなかろうが、どうでもいいんです。いじめ自体が事実と認定されたら、それを罪として、加害児童生徒に厳正に処分をくだせるようにするのがスジってもんでしょう。
 教育委員会の判断と責任において、加害児童生徒にきちんと相応の処罰をした上で、これ以上は加害者を責めないでくれ、報道やリンチはやめてくれ、と守るのが、教育委員のあるべき姿です。すべてなかったことにする、もみ消し機関なら、ないほうがましです。
[ 2012/07/12 21:29 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)

妖怪自己責任

 有権者のみなさま、こんにちは。新党アルデンテ代表のパオロ・マッツァリーノでございます。党員は私一人なので、わが党は分裂いたしません。
 さて、いまや日本国民を二分する議論となっていることといったら、そう。レバ刺し禁止問題です(消費税じゃねえのかよ)
 禁止直前には焼き肉屋に行列してまで食べる人がいたというくらいですから、好きな人は好きなんでしょうねえ。個人的には、レバニラ炒めは好物ですが、それ以外のレバー料理にまったく思い入れがないもので、レバ刺しを一生食べられなくても全然平気なんですが、レバ刺し復活を望む声を無視するわけにはまいりません。なんたってわが党のキャッチフレーズは「ポピュリズムが第一。」ですから。

 ありがちな意見としまして、「食べて病気になってもかまいませんという誓約書を書かせ、客の自己責任で食べさせればいいんじゃないか」という人がいます。
 たしかにそれは一理あるんですが、自己責任という言葉が出るたびに、私はいつも警戒してしまいます。自己責任というのは、実態のない妖怪だと思ってますので。
 自己責任でレバ刺し食べたいとおっしゃるかたは、どこまでを自己責任とお考えなのでしょう。そこをはっきりしておいていただきたい。私の想像では、食中毒になっても店に損害賠償責任は問えない、刑事罰の対象にもしない、というだけの意味で〝自己責任〟という言葉を使っているのでは? だとしたら、考えが甘すぎます。
 レバ刺し食べて即死するのなら話は単純です。が、現実には食中毒で即死することはありません。感染から発症まで一週間くらいかかることもあるそうだし、発症して苦しみ出したとして、「これはきっとレバ刺しのせいだ。自己責任だから拙者は医者の世話にはならぬ」とガマンする武士道精神みなぎる人がいったいどれくらいいるものやら。そこまで貫徹してはじめて、自己責任といえるのですが、ありえないでしょ。自分はガマンできても、家族やこどもが苦しんでいるのを見殺しにはできません。

 その場合の問題は治療費です。レバ刺しで食中毒になったら自己責任というのなら、その治療費は全額自己負担にするのがスジです。国民健康保険などの公的医療保険を使って、本人3割負担で済まそうなんて甘い考えはダメですよ。それだと治療費の7割を他の人の保険料や税金で負担することになりますから、自己責任ではなくなってしまいます。自己責任というのなら、レバ刺し食って食中毒になった場合の治療費、入院費は全額自己負担とする、という一文も誓約書に入れてもらわねばウソになります。
 そういう人が増えたら、保険会社がレバ刺し保険ってのを作ってくれるかもしれません。きっと、ちょっと渋めの俳優がテレビCMをやります。
「レバ刺し……。食べたいけど、もしものことを考えたら、心配ですよね。そこで、この保険。月々980円で、保証は一生涯。あなたのレバ刺し食中毒治療をサポートします。まずは、お電話を」
 CMタレント、だれがいいですかね。渡部篤郎さんとか、いい線じゃない? 勝手に決めんな?

 と、盛り上がってみましたが、残念ながらこれは現実的ではありません。私が自己責任を妖怪だといったのは、理念としては存在できても、現実には存在できないからです。
 この方法を実際にやってみても、うまくいきません。ほとんどの人が不正に治療を受けるだろうことは、目に見えてます。レバ刺しを食べたことを隠して医者にかかるでしょう。医者も苦しんでる患者に、「ねえねえ、レバ刺し食べたんじゃない? 食べてないの? ホントに?」としつこく問い詰めるわけにもいきません。
 結局は、自己責任を唱える人たちも、いざとなったらだれかに助けてもらうことになるんです。レバ刺し問題にかぎらず、自己責任でなにかをしてもよいことにしよう、ってのは理想論にすぎません。自己責任で、というフレーズを気安く使ってると、いつか、妖怪自己責任に取り憑かれますよ。
[ 2012/07/03 19:23 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)
プロフィール

Author:パオロ・マッツァリーノ
イタリア生まれの日本文化史研究家、戯作者。公式プロフィールにはイタリアン大学日本文化研究科卒とあるが、大学自体の存在が未確認。父は九州男児で国際スパイ(もしくは某ハンバーガーチェーンの店舗清掃員)、母はナポリの花売り娘、弟はフィレンツェ在住の家具職人のはずだが、本人はイタリア語で話しかけられるとなぜか聞こえないふりをするらしい。ジャズと立ち食いそばが好き。

パオロの著作
みんなの道徳解体新書

日本人のための怒りかた講座

エラい人にはウソがある

昔はよかった病

日本文化史

偽善のすすめ

13歳からの反社会学(文庫)

ザ・世のなか力

怒る!日本文化論

日本列島プチ改造論(文庫)

パオロ・マッツァリーノの日本史漫談

コドモダマシ(文庫)

13歳からの反社会学

続・反社会学講座(文庫)

日本列島プチ改造論

コドモダマシ

反社会学講座(文庫)

つっこみ力

反社会学の不埒な研究報告