反社会学講座ブログ

パオロ・マッツァリーノ公式ブログ
反社会学講座ブログ TOP > 2015年03月

若者に政治参加をうながす方法

 ナポリ3区の有権者のみなさまこんにちは。忘れたころにやってくる、新党アルデンテ代表パオロ・マッツァリーノです。
 日本では選挙権を18歳に引き下げる方向へ動いているようです。もっと若者に政治参加してもらおうというのは、喜ばしいことです。
 だったらこの際ついでに、国会議員の被選挙権のほうも大幅に見直して、老害がはびこる政治の世界も若返りを目指してはいかがでしょう。
 新党アルデンテは、衆議院には60歳までしか立候補できなくすることをご提案します。その代わり、参議院は61歳以上が立候補できる「長老院」にリニューアルするのです。リニューアルっつうかリブート? リフォーム? ま、そのへんの表現はどうでもいいか。
 年齢要件以外の仕組みはすべて、いまの参議院のやりかたを引き継ぎますので、事務的に面倒なことはほとんど起こらないはずです。議員が高齢化するので、あたたかいお茶と和菓子を用意するとか、おくすりの時間を教えてあげるとか、頻尿の議員のために議場の中に仮設トイレを作るなどといった対応は必要になるかもしれませんが。

 このアイデアの狙いは、国が進む方向の決定権を、若者と現役世代の手に取り戻すことにあるんです。高齢の議員は、豊富な人生経験をもとに、長老院で助言を与えるご意見番の役割を果たしていただきます。でも、最終的な決定権は現役世代の衆議院にあるわけです。長老院で議決されたことも、現役世代が納得できなければ衆議院でひっくり返すこともありますよ、と。
 いまの日本では老人の投票率が高いから、老人に媚びを売る議員ばかりが増えて、若者の意見が軽視されてます。どうせオレらの意見は通らねえよ、ってあきらめが、若者を政治から遠ざけている面もありますよね。
 この改革をやれば、確実に政治家が若返ります。日本の将来は現役世代が決めますよ、決められますよ、となれば、若者のみならず50代以下の現役世代ももっと真剣に政治参加を考えるはずです。

 私が参考にしたのは、江戸時代の隠居制度です。まだ元気なうちに、若い世代に実権を譲って隠居するという、日本古来の素晴らしい美徳を現代の政治の場に活かすのだから、保守を名乗るみなさんは、きっと涙を流して感激し、賛成してくれることでしょう。
[ 2015/03/31 20:29 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)

今期のドラマ総括

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。
 今期のドラマが終わったところで、やはりというか、『○○妻』と『相棒』の後味の悪い終わりかたに批判が集中してました。
 ハッピーエンドじゃないと満足できないってのも、心が貧しい感じがしますけど、たしかにこの2作の終わりかたは、ハッピーかどうかと関係なく、もの足りなかったのは否めません。

 『○○妻』は途中まではとても見応えがあったのですが、終盤一気に失速して、説教くささだけが目につくようになったかと思ったらあのラストですからね。
 でも、それを同じ遊川脚本の『純と愛』のラストを引き合いに語られるのは心外です。『純と愛』も朝ドラ史上初(?)の救われないエンディングだったわけですが、私はあの最終回を、朝見てまた夜もう一回見直したくらいに気にいってました。『あまちゃん』のラストがどんなだったかもう思い出せませんが、『純と愛』のは、はっきりおぼえてます。

 『相棒』は、ファーストシーズンからずっと見ています。『相棒』はこれまでも、「正義」とはなにか、というけっこうハードなテーマをつねに突きつけてきました。後味の悪かった回はいくつもありますよ。だから今シーズンの最終回もテーマからはずれてはいないんです。『相棒』らしいっちゃ、らしい。ただ、2時間のドラマとして出来がいまいちだったんで、失望の声が大きくなったのでしょう。
 最終回だけでなく、今シーズンは、あきらかにつまらないな、と感じるエピソードが何本もありました。長年見ててそんなふうに感じたのははじめてなので、全体的な質の低下のほうがよっぽど問題です。本当に毎週おもしろかったのはシーズン5くらいまでで、それ以降はじょじょに右肩下がりだったんですけど、ある程度の水準は保ってたんです。だけど今シーズンはねえ……。
 次の相棒よりも、そろそろシリーズの幕引きを考えてほしいと、ファンだからこそ思います。

 さて、今期のドラマでもっともおもしろかったのは意外な大穴、『怪奇恋愛作戦』でした。深夜枠ですよ。B級テイスト満載ですよ。低予算ぽいのに、作り物には金かけてるようで、最後のエピソードなんか、真っ二つにされた死体とか、かなりリアルでグロいのが出てきました。でも基本、バカな人たちが出てきてバカな会話ばっかりしてるんです。
 で、それを40代の役者さんたちが演じてるってのがまたツボ。あ、麻生久美子さんはまだ30代かな? これ、もしも若い役者さんばかりでやったら、空回りした悪ふざけになってしまいかねません。オトナの悪ふざけだから、絶妙な間合いで、いい味が出せたんです。
 若者がふざけるのは、あたりまえというか意外性がなくておもしろくない。年寄りがふざけると、認知症かと心配されて笑えない。ふざけるのにもっとも適しているのは、じつは、オトナなんですよね。もっとふざけよう、オトナたち。
[ 2015/03/28 23:26 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)

しつけが悪いのを「やんちゃ」とごまかすな

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。
 ちかごろ、しつけの悪いこどもや犬を、「やんちゃ」という言葉で美化・正当化する人たちがいるのが気になります。
 「ウチの子、やんちゃなんですぅ」と嬉しそうにいう親や飼い主。それがいいことだと思ってるの? 不穏な空気を感じます。「元気」ではなく「やんちゃ」とわざわざいうのはそこに、騒いだり暴れたりして他人に迷惑をかけているというニュアンスが含まれてるからです。
 こどもが被害者になることにはやたら神経質になっているクセに、こどもや犬が騒いで周囲に迷惑をかけたり暴れたりして加害者になることには無頓着な親たち。自分のしつけがなってないのを、「やんちゃ」というかわいらしい響きの言葉でごまかしてるだけ。ぶしつけなガキや犬など、ちっともかわいくない。
 私はこどもや若者の権利や自由を擁護しますけど、しつけにはかなりキビシいほうです。体罰は絶対に否定しますがしつけは絶対必要です。図書館や電車などで、よそのこどもやその親に、何度も注意してるくらいです。
 人間のこどもと犬のしつけの基本は同じです。叩いたり殴ったりせず、根気よく何度も教え込むしかありません。犬も幼児も自分で社会性を身につけることはできないからです。親や飼い主が教えなければ、ダメ犬、ダメ人間になります。道徳の授業とかでは代替できません。
 犬を飼ったら、なにはなくとも、「おすわり」と「待て」ができるようにしつけるのが基本なのに、それすら教えない飼い主が多いんです。飼い主が買い物するあいだ、スーパーやお店の前につながれてる犬がいますけど、しつけのいい犬は、おすわりでおとなしく待ってられるんです。バカな犬は飼い主がいないあいだ、ずうっと吠えてます。しつけのできないバカな飼い主に買われてる犬は不幸です。迷惑を被る周囲の人たちも不幸にします。しあわせなのは飼い主だけ。

 人間のこどもだと、レストランや電車や病院の待合室などで騒いだり走ったりするのが問題になります。赤ん坊が泣くのはしかたないとしても、物心ついた幼児が公共の場で騒いだら、叱るのが親の義務です。
 そういうと必ず返ってくる言葉が、「ウチの子、何度いっても聞かないんですぅ」。
 その言葉、額面通りには受け取れません。そういう親って、ホントに叱ってるのかな。2、3回叱っただけであきらめてるんじゃないですか。
 ずっとおとなしくさせろ、なんてムリをいうつもりはないですが、限度を越して騒いだら、親はそのたびに注意しなければいけません。それってそんなにむずかしいことでしょうか。

 以前、雑誌のコラムに書いたのですが、数年前に私が目撃した例をお話しします。
 平日のランチタイムにファミレスに入ったときのこと。通された席の近くに、こどもづれで食事をしている3人のヤンママグループがいました。
 うわ、うるさくなったらイヤだなあ、と警戒したのですが、どうせ食べたらすぐに出るつもりだったので、少しのあいだガマンしようと決めました。
 しばらくすると案の定、こどもたちがキャーキャー騒ぎ出しました。
 するとヤンママのひとりが「うるさい。」ビシッとひとこと、こどもたちを叱りました。不必要に怒鳴ったりしないけど、意志を感じさせる、小気味いい叱りかたでした。
 こどもたちは声を小さくしました。ヤンママたちもおしゃべりを続けます。しばらく静かでしたが、こどもはすぐにまた調子に乗ります。今度はこどもたちが椅子の上に立ち上がりました。するとまたさっきのヤンママ、「座れ。」ビシッと一喝。こどもたちは座り、ママたちはまたおしゃべりに興じます。
 そのヤンママはヒステリックになることもなく、ねちねちあとをひく叱りかたでもなく、こどもたちが限度を越すたびにビシッ、ビシッと叱るんです。
 感心しましたね。わざとゆっくり食事をして、しばらく横目で観察してました。いかにも「やんちゃ」そうなママさんが、立派にこどもをしつけてるじゃないですか。いやあ、第一印象で偏見を持って悪かった、あなたは素晴らしい母親です、マザーオブザイヤーに認定します、と心の中で表彰しつつ、店を出たのでした。
[ 2015/03/15 22:38 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)

少年凶悪犯罪についての追加情報と前向きな提案

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。
 忘れたころに少年凶悪犯罪が起きては、また根拠もなく少年凶悪犯罪の増加を叫ぶ人が出てくるって毎度毎度の展開には困ったもんです。
 で、そのたびに私の『反社会学講座』が反論材料として言及されて新たな読者を獲得できるってのは、ありがたいと感謝すべきなのか、同じ議論を蒸し返し続ける日本人の学習能力のなさを嘆くべきなのか。

 私は『反社会学講座』で、昭和18年前後に生まれた世代(現在70代前半)がもっとも凶悪だったと、統計から導かれるひとつの事実を示しました。
 そのへんのことをもっと詳しく学問的に検証してる論文をみつけていたのですが、ずっと紹介しそびれてました。この機会に紹介しておきます。
 中尾暢見さんの「激増する高齢者犯罪」(『専修人間科学論集』2014年3月)。この論文では、1940年から46年生まれをひとつのコーホート(世代)として追跡しています。彼らが少年だったとき少年犯罪が多かった、そして、この世代が成人した1966年以降、少年犯罪が激減した、というところまではすでにおなじみですね。
 中尾さんは彼らのその後も分析してるんです。彼らが成人すると、今度は成人の犯罪が急増しました。91年から04年、彼らが中高年だった時代には、中高年の犯罪が増えてたというじゃありませんか。
 そしていまや、彼らは高齢者となったわけですが、いま問題になっている高齢者犯罪の増加は、彼らが高齢者になる数年前からの傾向だったとのこと。ただし、彼らが高齢者の仲間入りをしてから犯罪増加に拍車がかかったことは否めません。
 なんとまあ……。少年のときだけではなかったんですね。現在70代前半の世代には、他の世代よりもかなり高い割合で犯罪体質の人が含まれていることは、まちがいないようです。

 さて。みなさんはこの事実をどう受け止めますか。
「ほらみろ、やっぱり未成年のときにキビシく罰しなかったから、そいつらはオトナになっても年寄りになっても、犯罪を繰り返すような人間になってしまったではないか!」
 なるほど。その解釈なら、「過去の反省を踏まえ、いまの年寄りの轍を踏まぬよう、一刻も早く少年法をキビシくすべきだ!」と主張することもできますね。
 でも、おおかたの人たちは、その主張に反論するのでは。
「いまの年寄りが全員犯罪者なわけじゃない、ほとんどの人はまともで、犯罪者はごく一部にすぎない」
 ですよね。私もそう思うし、中尾さんの論文でもそこはきちんと釘を刺してます。念を押すなら、いまの若者世代はその老人たちよりももっとまともです。

 もしも昭和30年代、凶悪少年犯罪が多発していた時期にいちはやく少年法がキビシく改正されていたら、はたして、その後の成人犯罪や現在の高齢者犯罪の増加は抑えられていたのでしょうか。
 私はそこまで刑罰の抑止力を信じる気になれません。むろん、ある程度の抑止力はありますが根絶はできません。日本の犯罪発生率は諸外国に比べると、すでにかなり低くなっているので、「ある程度」と「根絶」の中間くらいになってると見るべきです。だからこれ以上罰を重くしても効果は出ないだろう、と。
 それが証拠に、週刊誌やネットではだいぶ前から少年凶悪犯罪者の実名を晒すという、事実上の厳罰化を実行しているにもかかわらず、また事件は起きたじゃないですか。
 などといいつつ、私は必ずしも少年犯罪の厳罰化に反対ではありません。それは被害者や被害者遺族の溜飲を下げるのには、多少なりとも役に立つからです。ただし厳罰化も実名報道も、これ以上の犯罪抑止効果は期待できませんよ、といってるんです。
 過去の反省を今後の犯罪抑止に活かしたいのなら、脳科学者や犯罪学者や心理学者などが集まり、70代の人たちの脳や少年時代からの生活パターンなどを徹底的に調べ、なぜこの世代に犯罪者が多いのか、犯罪体質とそうでない人の違いはなにか、それを科学的に究明したらいい。そのほうがよっぽど前向きで役に立つ取り組みになるはずです。
[ 2015/03/09 21:20 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)
プロフィール

Author:パオロ・マッツァリーノ
イタリア生まれの日本文化史研究家、戯作者。公式プロフィールにはイタリアン大学日本文化研究科卒とあるが、大学自体の存在が未確認。父は九州男児で国際スパイ(もしくは某ハンバーガーチェーンの店舗清掃員)、母はナポリの花売り娘、弟はフィレンツェ在住の家具職人のはずだが、本人はイタリア語で話しかけられるとなぜか聞こえないふりをするらしい。ジャズと立ち食いそばが好き。

パオロの著作
みんなの道徳解体新書

日本人のための怒りかた講座

エラい人にはウソがある

昔はよかった病

日本文化史

偽善のすすめ

13歳からの反社会学(文庫)

ザ・世のなか力

怒る!日本文化論

日本列島プチ改造論(文庫)

パオロ・マッツァリーノの日本史漫談

コドモダマシ(文庫)

13歳からの反社会学

続・反社会学講座(文庫)

日本列島プチ改造論

コドモダマシ

反社会学講座(文庫)

つっこみ力

反社会学の不埒な研究報告