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考へるヒント

考へるヒント


もしも、18歳のひきこもりが爆破事件を起こしたら、
地域との絆がないからだと責められるだろう。
でも、爆破事件を起こした72歳の元自衛官は、
地域活動にとても熱心だった。

18歳のひきこもりが爆破事件を起こしたら、
戦後教育のせいにする人がいるだろう。
72歳の元自衛官が爆破事件を起こしても、
戦後教育のせいにはされないのに。

18歳のひきこもりが爆破事件を起こしたら、
アニメやゲームの暴力表現を規制しろ、と叫ばれるだろう。
72歳の元自衛官が爆破事件を起こしても、
時代劇の暴力表現を規制しろ、という声はあがらない。

18歳のひきこもりが爆破事件を起こしたら、
小中学校での道徳義務化を急げとわめかれるだろう。
72歳の元自衛官が爆破事件を起こしても、
高齢者に道徳を教えろとはいわれない。

18歳のひきこもりが爆破事件を起こしたら、
少年法の刑罰が軽いから抑止力にならないのだと決めつけるのだろう。
72歳の元自衛官が爆破事件を起こしても、
老人の刑罰が軽いから抑止できなかったのだと分析する人はいないのに。
[ 2016/10/24 19:02 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)

秋ドラマの感想と、校閲について

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。秋ドラマの初回を見た感想と、校閲に関してひとこと。

『IQ246』
 死体や人間を一目見ただけで職業から性格までズバリいい当てて名探偵ぶりをアピールする、って陳腐なパターン、もうやめません? そんなの、脚本家や作家が正解を用意して探偵に当てさせてるんだから当たるに決まってるじゃん。
 あっ、もしかしてこういうのを見た人が、メラビアンの法則とか、人は見た目が9割とかいうインチキ理論を鵜呑みにしちゃうのかな?
 ちなみにトランプ氏の奥さんって、見た目がものすごくアホっぽいんだけど、見た目で決めつけちゃってもいいですかね?

『逃げるは恥だが役に立つ』
 これが抜群におもしろい。失業中の独身女性が得意な家事の腕を活かし、仕事で忙しい独身男性と契約して住み込み家政婦になるけど、諸事情から周囲には結婚したように偽装する、って軽いノリのラブコメなんですが、大学院卒高学歴者の就職難や、晩婚・非婚化といった社会現象を織り込んで、主人公がそうせざるをえなくなる状況を丁寧に積み上げていくので、突飛な設定なのに破綻してません。
 ためしに原作マンガの1巻を読んでみたら、ドラマはマンガがはしょってる部分もきちんと補完してリアリティを高めてるんです。これは脚本家の仕事を素直にスゴイとほめるべきですね。

『校閲ガール』
 地味にスゴいとかいってるけど、全然スゴくない。主役ひとりに欲ばっていろんなキャラクターを盛り込みすぎなので、人格が分裂してるようにしか見えません。空気が読めず自分勝手かと思えば努力家の面を見せてみたり、急に姉御肌で啖呵切ったりと、従来のドラマなどのキャラ設定のいいとこ取りをしたつもりなんだろうけど、むちゃくちゃなだけ。
 ストーリーも納得いきません。小説家が、幼い息子がいいまちがえたことを懐かしんで実在の橋の名前を変えてたのに、校閲がそれをまちがいだと指摘して直させるって、ヒドくない?


 もの書きの立場からいわせてもらうと、私は校閲が事実確認までやることに疑問を持ってます。言葉と文字の正誤、それから歴史の年号、人名・書名などの表記のチェック。これくらいをきっちりやってくれれば、それでじゅうぶん。校閲の内容チェックといっても、たいていはネットで検索してるだけですし。私が書いてる近現代文化史に関しては、ネットの情報が誤っていることも多いんで、あまり参考になりません。
 私は校閲に嫌われるタイプの書き手です。校閲の指摘をことごとく却下したりします。表記の統一とかね。
 たとえば、「ぶどう」「ブドウ」「葡萄」という表記が原稿の中に混在してると、どれかに統一するよう求められます。日本の出版界の慣例では、表記が不揃いなのは美しくないこととされるからです。
 それを指摘するのも校閲の業務だから、きちんと見つけてくれるのはありがたいんですよ。でも、私は修正しないことも多いんです。さすがに同じページ内でバラバラだと不揃いな印象があるけれど、離れたページにある場合、「ぶどう」と書いたときは「ぶどう」の気分であり、「ブドウ」と書いたときは「ブドウ」と書きたい気分だったわけですよ。書き手の気分のゆらぎが文字面にあらわれているのだから、それは日本語表現の豊かさです。むしろ統一してはいけません。
 あと、私はなるべく漢字でなくひらがなを使うことにしています。漢字ばかりだと見た目がいかめしくなるので。
 だから「言う」ではなく「いう」とひらがなで書くことに「統一」しています。これは個人のクセ、文体です。ところがむかし、ある雑誌に原稿を書いたところ、ゲラで「いう」がすべて「言う」に直されてました。私はすべて「いう」に戻すよう赤を入れました。そしたら、この雑誌では「言う」と漢字表記で統一しているといわれました。知らねえよ、そんなの。などと我を通していると、嫌われて仕事の依頼がこなくなります。
[ 2016/10/18 13:51 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)

Web春秋連載第7回のこぼれ話

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。
 今月もWeb春秋で大好評連載中の『会社苦いかしょっぱいか』が無事、更新されております。毎回ボリュームがあるので細かいところがちょっと雑ですが、いずれ書籍化の際に手直しするのでご容赦を。
 第7回のテーマは新入社員ということで、季節感なんてぶっとばせ! って勢いでがんばっております。ていうか国際的には、夏前に学校を卒業して、秋から働きはじめる人も多いんで、べつにおかしくはない、と強がりをいっておきます。
 しょっぱなから、入社式の意外な歴史的・文化的真実があきらかになります。こんなトリビア、だれも教えてくれなかったでしょ? 私だって調べるまで知らなかったんですから。私の本の内容から出題すれば、林先生はほとんど初耳だと思いますよ。
 ただ、むかしの新入社員がどうだったか、どう見られてたかは、予想を実例で裏づける結果になりました。むかしの若者も、いまの若者も、やっぱりダメなところはほぼ同じです。大正、昭和初期から、ちかごろの新入社員は劣化している、といわれ続けてきたし、もちろんそれ以前の丁稚小僧や職人見習いも、同じことをいわれていたのでしょう。

 さて、毎回どっさりむかしの資料を調べるのですが、芸能ネタもたくさんひっかかりまして、これがけっこう興味深い。
 新入社員について調べてたら、「ドリフの新入社員志村けん」なんて記事があって、志村けんとは何者か、みたいなことが書いてあったり。志村さんの「けん」って芸名で、お父さんの名前からとったんですね。はじめて知りました。
 つい先日もやってましたけど、NHKで不定期に放送する『となりのシムラ』ってコント番組、いいですよね。毎回楽しみにしてます。
 私はバカ殿ってなにがおもしろいのか、さっぱりわかりません。誰に需要があって続けてるんだろう? だから志村さんの番組は敬遠して見てなかったんですが、中年の悲哀と中年あるあるを見事に演じている『となりのシムラ』を見て、志村さんって上手いなあ~と、再認識。お笑いというより、喜劇役者としてまちがいなく日本のトップですよね。

 太陽族ブームの年の「親子二代の太陽族」という記事では、作家の川口松太郎が俳優になって大人気の息子のことを書いてます。この息子とは、川口浩。40代くらいのみなさんには「川口浩探検隊」のおじさんという印象しかないであろう、あの川口浩にも、イケメン新人時代はあったのです。
 まだ川口浩も若いので実家暮らしだったようですが、おやじさんも有名人なので家を知られているんです。毎日、家の前にはサインを求めるファンの女学生が何人も立っていて、ファンから電話が一日中かかってくるので、応対する女中さんたちが大変なんだとか。
 非常識なファンはむかしからいたようで、夜中に電話をかけてくる。電話をとったおやじさんが浩を起こしに行くと、こんな夜中にかけてくるのは非常識だから断ってくれといわれますが、
「生意気なことをいうもんじゃない、まだ駆け出しの青二才に長距離電話をかけてくれる好意を無にしてはいけない」
「ねむいからイヤだよ」
「ちょっとでもいいから出ておあげよ」
 って、おやじさんの神対応に驚きます。いまだったら警察に通報されかねませんよね。この時代のひとたちは、なんとも鷹揚というか。むかしもスターがあぶないファンに襲われる事件はたまにあったんですけど、あんまり気にしてないんですよ、このころの人たちって。
[ 2016/10/03 20:59 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)
プロフィール

Author:パオロ・マッツァリーノ
イタリア生まれの日本文化史研究家、戯作者。公式プロフィールにはイタリアン大学日本文化研究科卒とあるが、大学自体の存在が未確認。父は九州男児で国際スパイ(もしくは某ハンバーガーチェーンの店舗清掃員)、母はナポリの花売り娘、弟はフィレンツェ在住の家具職人のはずだが、本人はイタリア語で話しかけられるとなぜか聞こえないふりをするらしい。ジャズと立ち食いそばが好き。

パオロの著作
みんなの道徳解体新書

日本人のための怒りかた講座

エラい人にはウソがある

昔はよかった病

日本文化史

偽善のすすめ

13歳からの反社会学(文庫)

ザ・世のなか力

怒る!日本文化論

日本列島プチ改造論(文庫)

パオロ・マッツァリーノの日本史漫談

コドモダマシ(文庫)

13歳からの反社会学

続・反社会学講座(文庫)

日本列島プチ改造論

コドモダマシ

反社会学講座(文庫)

つっこみ力

反社会学の不埒な研究報告