反社会学講座ブログ

パオロ・マッツァリーノ公式ブログ
反社会学講座ブログ TOP > 2016年11月

道徳教育終了の危機を、現場の先生はどう見ますか

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。
 トランプさんが次期大統領に選ばれたことで、TPPと道徳教育に終了の鐘が鳴り響いています。
 これまで学校の道徳教育では、「ウソをつくな」「他人の悪口をいうな」「差別やいじめをするな」「異性を侮辱するな」と教えてきました。ところが、それに反することを公然とやってきた人が、アメリカという超大国の最高権力者に選ばれてしまったのです。
 不道徳なことをやりたい放題やっても叱られるどころか、大統領になれちゃうのなら、もはや道徳教育は意味をなしません。
 さて、学校現場で道徳の授業をやっている先生がたに、ぜひうかがってみたいものです。この道徳の危機的状況を、こどもたちにはどう教えます? 「本当はトランプさんはいいひとなんだよ! さあ、みんなでトランプさんのケツをなめよう!」とでも?

 そんな絶妙だか微妙だかわからんタイミングで発売された私の最新刊が、道徳教育の本質をえぐる『みんなの道徳解体新書』。
 ツイッターには、ちょこちょこと感想などが流れてきます。さっそく読んでくれたみなさん、ありがとうございます。
 本の帯の「きみのこころも、シュールにかがやけ!」というコピーをほめてくれたかた。うれしいですね。あのコピーも私が考えたんです。『みんなの道徳解剖教室』というタイトル案のほうは変更されちゃいましたけど、解体新書というタイトルも気にいってます。
 数時間で読めた、一日で読んだというかたもいます。そうでしょう。さくさく読めるように書いてますから。だからといって私の本はスカスカではありません。それどころか、1年以上かけて調べた情報がぎっしり詰まってます。
 漫談のような軽い文体でふざけてるようだけど、じつは私の言葉にはすべて裏付けがあるので、きちんと反論しようとするとかなり骨が折れると気づくはずです。ゆるキャラだとなめてキックしたら、着ぐるみのなかに鉄板入ってた、みたいな。
 『「昔はよかった」病』など、以前の著書でも同様で、毎度のことなんで慣れっこですが、私があきらかにした事実を受け入れたくなくて批判してる人たちのほとんどは、まともに反論できてないんです。彼らは抽象的もしくは紋切り型のフレーズで、ふわっと全否定してるだけ。

 道徳の授業をしている現役の先生が『みんなの道徳解体新書』を読んでくださったようですが、現場を知らない人間が勝手なことをいってるだけだ、と紋切り型のフレーズで斬り捨ててました。
 私が道徳教育のダメなところを辛辣な皮肉と笑いで批判したもんだから、気分を害したのでしょう。でもね先生、ご自分が私の主張になにひとつとして反論できないからって、紋切り型の批判はいけません。
「現場を知らない者が口を挟むな」というフレーズは、なんの根拠もなく自分を正当化できるので便利ですが、説明や反論の義務を放棄してるわけで、ディベートだったら反則負けです。
「学校現場を知らない民間人校長が教育方針に口を出すな!」
「医療現場を知らない患者が医療ミスだとか騒ぐな!」
「政治の現場を知らない市民が政治家のやることに文句をいうな!」
「テレビの現場を知らない視聴者が番組にケチをつけるな!」
 こんなんで論破したことになるのなら、まあ、ラクはラクですけどね。でもそれが通るなら、私はこういって批判をかわすこともできるんですよ。
「出版の現場を知らない読者が、オレの本をレビューで批判するな!」
 もちろん、私はそんなこころの狭い人間ではありません。自由に意見や感想を述べてくださいね。

 現場の先生たちは、道徳副読本に載ってた江戸しぐさが捏造された歴史文化であることに気づかなかったじゃないですか。むかしの人は礼儀正しかったねー、なんて適当なことを教えてたんでしょ?
 たとえ道徳教育のまちがいに気づいてたとしても、現場にいるから何もいえないってこともありますよね。先生だって家のローンがあったり、養う家族がいたりする。上が決めたことにヘタに逆らってクビや左遷になるリスクは避けたいはず。学校にかぎりません。そうやってすべての現場はゆがんでいくのです。
 だから、外部の人間がゆがみやまちがいを指摘することに意味があるんです。むろん、根拠のある客観的事実を指摘しなきゃダメですよ。感情的なクレームでなく。
 私は『みんなの道徳解体新書』を書くにあたって、入念な下調べをしました。そうして得た大量の情報を、笑いをまじえた軽い読みものに仕立てるのがいつもの私の流儀なんです。なので、紋切り型で片付けられるほどヤワなものではございませんよ。
 現場の先生がたにこそ有益な情報をたくさん提供してる本なんだけど、読まないなんてもったいないなあ。
 もちろん、生徒のみなさんが読んで、先生を論破しちゃうのもアリですよ。
[ 2016/11/18 21:57 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)

『みんなの道徳解体新書』の内容紹介ページができました。

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。
 『みんなの道徳解体新書』の内容紹介ページができました。
 左の「パオロの著作」欄の画像からリンクしています(広告や書店へのリンクではありません)
[ 2016/11/09 20:45 ] おしらせ | TB(-) | CM(-)

Web春秋の連載第8回が更新されました

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。カズレーザーさんは学生時代から私の本をチェックしてくれてるそうです。やっぱり勢いのある人は本を選ぶセンスもいいですね。きっと宇治原さんは、私の本を読んでないんじゃないかなぁ……

 さて、今月もWeb春秋の連載『会社苦いかしょっぱいか』が更新されました。
 今月のテーマは都会の会社員とは切っても切れない通勤電車。鉄道にまったく興味がない私ですが、今回いろいろ調べたおかげで、むかしの鉄道文化にちょっと詳しくなりました。
 あ、そういえば先日、電車で化粧する女性は大正時代からいたとツイートしたところ、多くの反響がありました。そのなかに、大正時代に電車に乗るのは一部の上流階級だけだったのだろう、なんて意見がありましたけど、そんなことはないですよ。大正時代には、電車や市電が庶民の足として欠かせないものになってました。
 そして、現在電車でのマナー違反とされる行為はほぼすべて、戦前からあった――あったどころでなく、いまよりマナーがヒドかったことを証明する史料がさらにたくさんみつかりました。

 大正3年の『実業の日本』に、銀座の輸入商かなにかに勤めるサラリーマンが、通勤電車の人間模様を「通勤日誌」として連載しています。乗客同士のケンカもよくあるし、車内禁煙なのにタバコを吸う人もいます。
 この筆者が知り合いの英国人と乗り合わせたときのこと。乗客がたくさん立ってるというのにまたを広げて我が物顔に座っている男がいました。英国人は筆者に英語で話しかけます。あんな不作法な男はイギリスにはいないよ。武士道の日本人がこれでは呆れるね。
 英国人は車内の掲示を指さして、あれはなにが書かれてるのかと問います。あれは、飛び乗り乗車をするな、キップを丸めるな、など、乗客への注意書きだと教えると笑い出します。「まるでキミの国の市民は小学校のこどもか幼稚園の小さいのだな」。かなり辛辣な罵倒に筆者は、彼が英語で話してくれてよかった。日本語だったら問題になったと冷や冷やします。

 昭和5年刊の『ラッシュアワー展望』は東京駅の元助役が書いた鉄道エッセイなので、具体的なエピソードが盛りだくさん。当時からキセル、つまり不正乗車の被害額が莫大なものになっていたそうです。世界各国の鉄道と比べてみても、公徳心・道徳観念の希薄なことは日本人がもっとも著しいと嘆きます。
 若い駅員に「きみ」と呼びかけられた男が、私は代議士だ! 駅夫風情が私にキミとは失敬じゃないか! と駅事務室にねじ込んできます。応対した助役が事情を聞くと、電車が完全に止まる前にホームに飛び降りて転んだところに若い駅員が駆け寄り、キミ、どうかしましたかと声をかけたというんです。駅員は親切にしたのにねえ。
 なんとか頭を下げて帰ってもらったものの、助役は「代議士がそんなにエライものなのか」と憤るのでした。

 要するに、タチの悪いクレーマーも、マナー違反者も、100年前からたくさんいたんです。日本人の道徳心や恥の意識が劣化したなんてことはありません。むしろ少しましになったくらいです。
[ 2016/11/01 20:29 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)
プロフィール

Author:パオロ・マッツァリーノ
イタリア生まれの日本文化史研究家、戯作者。公式プロフィールにはイタリアン大学日本文化研究科卒とあるが、大学自体の存在が未確認。父は九州男児で国際スパイ(もしくは某ハンバーガーチェーンの店舗清掃員)、母はナポリの花売り娘、弟はフィレンツェ在住の家具職人のはずだが、本人はイタリア語で話しかけられるとなぜか聞こえないふりをするらしい。ジャズと立ち食いそばが好き。

パオロの著作
みんなの道徳解体新書

日本人のための怒りかた講座

エラい人にはウソがある

昔はよかった病

日本文化史

偽善のすすめ

13歳からの反社会学(文庫)

ザ・世のなか力

怒る!日本文化論

日本列島プチ改造論(文庫)

パオロ・マッツァリーノの日本史漫談

コドモダマシ(文庫)

13歳からの反社会学

続・反社会学講座(文庫)

日本列島プチ改造論

コドモダマシ

反社会学講座(文庫)

つっこみ力

反社会学の不埒な研究報告