反社会学講座ブログ

パオロ・マッツァリーノ公式ブログ
反社会学講座ブログ TOP > 2017年03月

冬ドラマの感想

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。
 冬ドラマの感想。悔やまれるのは、『カルテット』を見逃してしまったこと。評判聞いてると、絶対おもしろいヤツ。しかも途中から見ちゃダメなヤツ。脚本が坂本裕二さんだったんですよね。やっぱりドラマは脚本家をチェックしておくべきでした。
 『A LIFE』の地味な秀作という評価は最後まで変わらず。薄味なのは、単純にキャストが多すぎたから。橋部さんの脚本による医療ものなら、オリジナルじゃないけど『フラジャイル』が傑作でした。なんであれ、評判にならなかったんだろう?
 ミステリでは、NHKの『スリル!』。蒔田さん、久々です。『ハードナッツ』は、えー、もう4年前ですか。
 私は、本格派のミステリは活字のためのエンターテインメントだと思ってます。活字だからこそ可能な叙述トリックに、あっ、そうだったのかっ! とダマされるのが楽しいんです。探偵がトリックを長々と説明する場面は活字なら10ページ続いても平気だけど、映像で10分やられたらキツいでしょ。映像化するなら、ゆるくてキャラの立ったバカミスにかぎります。
 『スリル!』は地上波とBSで同時に放送されて、キャストは共通なんだけど、地上波の『赤』では警視庁庶務課のヒトミが主役、BSの『黒』は弁護士の白井が主役という実験的な作りでした。でも、父親が詐欺師でも警視庁の職員になれるんですかね? 庶務課ならいいのかな。
 NHKはマジメなようでいて、じつは実験的な番組をけっこうやってるんです。どちらかというと民放のほうが、視聴率を気にしすぎて、無難なものばかり作ってる気がします。
 無難でないドラマの代表が、先日の再放送で見た『奇跡の人』。ぶっとびましたよ。最低男の最高のストーリーに、魂をわしづかみされて振り回されました。一部で絶賛されてたのも納得です。ヘレンケラーの物語をロックにしちまうなんて、どこからそんな発想が出てくるんですか。よくぞこの企画を通したなNHK。しかも主役は銀杏ボーイズの峯田さん。民放だったら企画自体が通ったとしても、主役はべつの人、きっとジャニーズとかにさせられてますよ。
 最初からずっと見てきたファンとしていわせてもらうと、『相棒』はそろそろ真剣に幕引きを考えるべきです。私は来シーズンは見ないかもしれません。
 武田鉄矢さんで『水戸黄門』が復活すると話題になってますけど、まったく期待してません。たぶん、モノマネ芸人の視聴率は100パーセントでしょう。それより、4月からBSジャパンで『木枯し紋次郎』の再放送がはじまるようなので、まだ見たことがないかたは、ぜひこの機会に。人情なし。感動なし。ハッピーエンドなし。苦い後味の話ばかりの異色の時代劇に衝撃を受けると思います。原作の笹沢佐保は、紋次郎シリーズ以外にも股旅ものの短編をたくさん書いてますが、主人公がたいてい最後に死にますからね。
[ 2017/03/29 21:11 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)

不道徳なヤツほど道徳を説きたがる

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。
 森友学園の理事長の会見、見ましたか? あっ、見てないなら、ムリに見る必要はありません。理性も知性もない狂信者の演説は聞くに堪えません。聞いてると吐き気がしてきます。
 根拠も論理も具体性もないたわごとをわめき続け、自分を正当化したつもりになってるだけ。100%の自己弁護。100%の自己憐憫。100%の責任転嫁。悪質なクレーマーと同じ思考回路です。
 二言目には日本、日本というけれど、あんたは日本代表じゃない。教育勅語や明治天皇を持ち出すけど、あんたは天皇の代理人でもない。
 経歴詐称や書類改竄など、平気でウソをつきまくる。差別をする。自分より立場が弱い者を恫喝し、おエラいさんにはとことん卑屈にふるまえる。こんな、道徳のカケラも持ち合わせてない人間に、道徳を教える資格なんてありませんよ。
 まさに、私が『みんなの道徳解体新書』で指摘したとおりです。英語や数学や体育は、それを得意な人が先生になってこどもに教えます。でも道徳にかぎっては、道徳のことをなにも知らない不道徳なヤツが教えてもいいんです。ズルやインチキをしてるヤツほど、善人の皮を被って、こどもに道徳を説きたがるものなんです。
 会見では、産経新聞までもが自分を批判したと怒ってました。じつは私も、3月7日に各紙がどう報道してるのか確かめたとき、産経もあの土地取引に関しては批判してるのを知って、意外に感じたんです。てっきり、エセ右翼フレンズをかばってると思ってたもので。そこはちょっと安心しました。右や左や保守やリベラルに関係なく、まともな常識のある人はみんな、あれはおかしい、フェアじゃない、と思ってたわけです。
 となると、あの土地取引を問題ないとし、国会への証人喚問も拒否し、理事長を擁護し続けた自民党の非常識ぶりが際立ってきます。前にもいったけど、法に反しなければなにをやってもいいという考えは、道徳ではありません。それが通るなら、道徳教育は不要です。幼稚園児に法律を教えればいい。「ぼくたちは、法の抜け穴を探しまーす!」と唱和させたらいい。
 たとえ法に反してなくても、えこひいきや不公平だとわかったら、それをやらないのが道徳です。そんなあたりまえのこともわかってない自民党にも、道徳を語る資格はありません。

 ついでにもう一点。土地取得に関しては批判しても、森友学園の教育については「教育理念はいろいろあっていいし、私学だから問題ない」などと擁護する人がいますけど、それはまちがいです。だったら逆に、私学なら反日教育をしてもいいのですか?
 たとえ私学であろうと、極端な愛国教育と極端な反日教育、どちらも許されません。なぜなら、こどもは教育を選べないから。こどもは親が選んだ教育を強制的に受けさせられます。もし、その教育が極端に偏向していたとしても、こどもにはそれを批判する能力もないし、自分からやめることもできません。だからこそ、教育はできるだけニュートラルでなければならないんです。教育理念はいろいろあるといっても、それは常識の範囲内での「いろいろ」です。森友学園のやってることはあきらかに常識外れです。
 オトナになってから自分で思想信条を選び直せる余地を残しておくのが、正しい教育です。幼いころから極端な思想教育を受けた子が、オトナになってもその影響力から抜け出せなかったら、それは教育ではなく洗脳です。
[ 2017/03/13 23:09 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)

教育勅語という妄想と実像

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。
 稲田さんが国会で「親孝行や、ともだちを大切にすることなど、教育勅語の精神を取り戻すべきだ」と発言しました。
 てことは、教育勅語による教育を受けていない稲田さんは、親孝行もしてないし、ともだちも大切にしてないのですね?

 教育勅語が出来たのは明治時代です。ということは、江戸時代の日本人は、親孝行もしなかったし、ともだちも大切にしなかったことになります。
 逆の例もあげましょうか。戦時中、空襲を避けるため都会から疎開したこどもたちが、疎開先のこどもたちからヒドいいじめにあったという話はたくさんあります。おかしいじゃないですか。教育勅語で育ったこどもたちが、なぜともだちを大切にしなかったのですか。

 親孝行や友愛といった道徳は、教育勅語が出来るずっと前から存在してました。教育勅語がなければこどもを教育できないといってる人たちは、江戸時代以前の日本人が不道徳だったと、先祖をディスっていることになります。
 教育勅語がなくたって、親孝行や友愛を教えることはできます。教育勅語を知らない外国人も、親孝行するし、ともだちを大切にしてますよ。
 日本の戦後教育だって、親孝行や友愛を否定してたわけじゃありません。戦後教育で育った稲田さんだって、親孝行や友愛がいいことだとご存じだったわけですよね。
 戦前教育を賛美する人たちは、まるで戦後教育が普遍的な道徳を否定してきたかのような批判をするんです。それこそが「印象操作」なんですよ。

 戦前戦後の庶民文化史を研究してきた私は、日本の戦後教育が必ずしもいいとは思いません。ダメなところ、批判したいところもたくさんあります。でもだからといって、戦前の教育が素晴らしかったとは、ちっとも思いません。いまの日本は歴史上もっとも犯罪が少ない時代といってもいいし、現代の日本人は、戦前の日本人よりもかなり道徳的です。それがすべて教育のせいだとはいいませんが、戦前教育にさほどの効果がなかったのも事実です。
 戦前教育を理想化してる人たちは、戦前の日本の実像を勉強せず、勝手な妄想で美化してるだけなんです。
[ 2017/03/09 20:57 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)

Web春秋連載が更新されました

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。
 今月もWeb春秋の連載、「会社苦いかしょっぱいか」が更新されました。
 今回のテーマは「知られざるビジネスマナーの歴史」。ビジネスマナーについては『反社会学講座』で取りあげてまして、10数年ぶりの再調査だったのですが、私の調査能力も、資料検索の環境も、格段に進歩してますので、以前とは比べものにならないほど深く広く掘りかえすことができました。
 「ご苦労さま」と「お疲れさま」の使いかたが時代によってかなり変化してきたことは、一部の国語学者のあいだでは研究されてますけど、一般のかたはほとんどご存じないんじゃないですか。とくにお疲れさまに関しては、日本語の乱れといってもいいくらいの変化なのですが、なんとなく許容しちゃってますよね。
 私も以前は気にもしなかったのですが、調べだしたら、たしかにほうぼうで「お疲れさまでした」といわれてることに気づきました。図書館を出る利用者に係の人が、お疲れさまでしたといってるんです。そのあいさつ、要る? べつに無言でもいいんじゃないかって思いますけどね。コミュニケーションをとらなければいけないという強迫観念かな。
 ビジネスマナーの講師や本が、都市伝説や歴史捏造を広める元凶となっているのは本当に腹が立ちます。文化史をマジメに研究してる者からすると迷惑でしかないです。ウソ並べて文化を破壊してるオマエらがエラそうに他人のマナーを指導してんじゃねえよ、と説教したい。
 本文ではサラッと流してますが、詳しく知りたいかたは以下の本を参照してください。
 欧米では人前で化粧をするのは売春婦という伝説については、『日本人のための怒りかた講座』『怒る! 日本文化論』。
 メラビアンの法則については、『反社会学講座』。
 ヴィクトリア女王がマナー知らずの客に恥をかかせないために自分もフィンガーボウルの水を飲んだという伝説は、『みんなの道徳解体新書』で、それぞれ検証しています。

 そして今回、なんと、連載最終回でございます。1年間ご愛読ありがとうございました。この連載は、書き下ろしを加えて単行本化されますので、お楽しみに。
[ 2017/03/01 20:00 ] おしらせ | TB(-) | CM(-)
プロフィール

Author:パオロ・マッツァリーノ
イタリア生まれの日本文化史研究家、戯作者。公式プロフィールにはイタリアン大学日本文化研究科卒とあるが、大学自体の存在が未確認。父は九州男児で国際スパイ(もしくは某ハンバーガーチェーンの店舗清掃員)、母はナポリの花売り娘、弟はフィレンツェ在住の家具職人のはずだが、本人はイタリア語で話しかけられるとなぜか聞こえないふりをするらしい。ジャズと立ち食いそばが好き。

パオロの著作
会社苦いかしょっぱいか

みんなの道徳解体新書

日本人のための怒りかた講座

エラい人にはウソがある

昔はよかった病

日本文化史

偽善のすすめ

13歳からの反社会学(文庫)

ザ・世のなか力

怒る!日本文化論

日本列島プチ改造論(文庫)

パオロ・マッツァリーノの日本史漫談

コドモダマシ(文庫)

13歳からの反社会学

続・反社会学講座(文庫)

日本列島プチ改造論

コドモダマシ

反社会学講座(文庫)

つっこみ力

反社会学の不埒な研究報告