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日本人の知性

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。
 STAP細胞の例の記者会見についてなんですけど。理系の人たちは、あれでいいの?
 会見そのものがどうのこうのでなく、会見に対する世間の態度ですよ、問題なのは。
 多くの一般人は、科学研究の真偽や正誤を、「会見に誠実さが見えた」「涙のなかに笑顔があった」だとかいう、およそ科学や論理からかけ離れた文系印象論、ワイドショー的感情論で決めようとしてるんですよ。
 記者会見という舞台での演技がどれだけ素晴らしかったか、観客の心をどれだけ動かしたかといったものさしですべての真偽を決め、善悪を断罪しようとするいまの日本の状況は、知性の否定であり、司法制度の否定でもあります。はっきりいって、かなりコワいとしかいいようがありません。
 今回の記者会見の内容だけでは、研究論文の真偽はだれにもわからないでしょう。しかし世間一般の反応からは、日本人の科学リテラシーが非常にお粗末だという事実だけは、あきらかにわかります。
 なにかにつけて最近の日本人は、「ものづくりの復権」とか「ものづくり立国」だとか口にするんですけど、まさにその「ものづくり」に欠かせないのは、科学的な思考と基礎知識、そして論理的思考なんですよ。それがアタマに入ってない人間に、ものなんか作れるわけがない。
 なにか新たな科学技術を生み出せるのは、知性という基盤があってこそです。知性のないやつにかぎって、誠実だの情熱だの、きれいごとの気持ちだけで森羅万象を説明しようとします。気持ちがこもってればいいのだ、みたいなごまかしをするんです。そんなヤツが作るのは、せいぜいオカルトグッズぐらいなものでしょう。
 科学の真偽は科学と論理の土俵で納得のいくまで議論・検討すべきです。ヘンな感情論が先に立ってはいけません。これは科学倫理とかいう以前の問題です。

 私は再三、昨今の日本で道徳教育や宗教教育を強化しようとする動きに反対しています。戦前戦後の事例に照らし合わせても、いまのこどもたちの道徳心が特別薄いとは、私は決して思わないからです。全体的には、道徳心はむかしより向上してます。これ以上道徳を教えるのは、感情論ですべてを判断する危険な人間を増やすだけ。空気を読むことばかりに長けて、他になにもできない人間を増やすだけ。
 それよりも、いまの日本人に足りないのは、ものごとを事実から客観的・論理的に考える力なんだから、そちらをもっとこどものころから訓練したらどうですか。
 なぜそれをやりたがらないか? それをやると、オトナのウソがバレて下克上が起こりかねないからでしょうね。日本の将来よりも、いまの自分の保身を望むオトナがいかに多いかってことですよ。
[ 2014/04/13 13:51 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)
プロフィール

Author:パオロ・マッツァリーノ
イタリア生まれの日本文化史研究家、戯作者。公式プロフィールにはイタリアン大学日本文化研究科卒とあるが、大学自体の存在が未確認。父は九州男児で国際スパイ(もしくは某ハンバーガーチェーンの店舗清掃員)、母はナポリの花売り娘、弟はフィレンツェ在住の家具職人のはずだが、本人はイタリア語で話しかけられるとなぜか聞こえないふりをするらしい。ジャズと立ち食いそばが好き。

パオロの著作
会社苦いかしょっぱいか

みんなの道徳解体新書

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