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過去を舞台とした現代劇

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。
 完成が遅れている単行本の原稿執筆にいそしんでおります。そのため、あまりブログやツイッターの更新ができません。

 朝はテレビをつけたまま、なんやかやとやりながら、朝ドラの『マッサン』を耳で聞いているだけのことが多いのですが、ときどきセリフが耳にひっかかるんです。
「うちのワインは安全・安心!」
「ウイスキーで日本を元気にしたい!」
 どちらのセリフも、大正時代の人はおそらく、いわなかったはずです。
 「安全・安心」「日本を元気にしたい」といったフレーズが頻繁に使われるようになったのは、かなり最近のことです。「安全・安心」は90年代後半ごろから、「日本を元気に」はもっとあとです。つまり、新語・流行語といってもいいくらい。
 でも、みなさんすっかり慣れてしまい、むかしからあるフレーズだと思ってるから、大正時代を舞台としたドラマで現代語が使われても違和感を感じない。
 こんなことをいうと、そんな言葉のはしばしにまでリアルにこだわったら、過去を舞台にしたドラマや時代劇は作れなくなる、といわれることでしょう。
 もちろんそのとおりです。私は言葉尻をとらえてケチをつけているのではありません。現代人が理想とする価値観やものの考えかたを投影しすぎているところが気になってしまうんです。これは『マッサン』だけでなく、同時代を舞台にしていた『花子とアン』『ごちそうさん』でも、うすうす感じてたことですが。
 過去を再現したセットで、過去の衣裳を着て演じているのに、セリフやものの考えかたが平成の日本人のものなので、なんか、ちぐはぐした印象を受けてしまうんです。
 ドラマや映画をフィクションだとわきまえた上で楽しむなら、なんの問題もないのですが、むかしはああだったのだな、むかしの人たちは人情にあふれていたんだねえ、などと鵜呑みにしないでくださいね、って話です。
 ちなみにですが、実際のマッサンの母親は嫁いびりなんてしなかったそうじゃないですか。嫁いびりってのもドラマの要素としては、さんざんやり尽くされてて、ちょっとどうなのよ、って気もします。どうせなら逆に、もっとぶっとんだお母さんにしたほうがおもしろかったかも。
 本当に大正時代の文化、空気を忠実に再現したら、かなりアナーキーなドラマになると思いますよ。江戸時代から引きずってきた古い因習がどんどんぶち壊されていった時代ですから。電車で化粧をする女性が最初に出現して問題視されたのも大正時代だったわけですし。
[ 2014/12/05 21:32 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)
プロフィール

Author:パオロ・マッツァリーノ
イタリア生まれの日本文化史研究家、戯作者。公式プロフィールにはイタリアン大学日本文化研究科卒とあるが、大学自体の存在が未確認。父は九州男児で国際スパイ(もしくは某ハンバーガーチェーンの店舗清掃員)、母はナポリの花売り娘、弟はフィレンツェ在住の家具職人のはずだが、本人はイタリア語で話しかけられるとなぜか聞こえないふりをするらしい。ジャズと立ち食いそばが好き。

パオロの著作
会社苦いかしょっぱいか

みんなの道徳解体新書

日本人のための怒りかた講座

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13歳からの反社会学(文庫)

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