反社会学講座ブログ

パオロ・マッツァリーノ公式ブログ
反社会学講座ブログ TOP > 未分類 > 不愉快な日々

不愉快な日々

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。
 ここんところ、なんとも不愉快な日々が続きました。結果的に人質事件は残念な結果に終わってしまったようですが、それに匹敵するくらい後味が悪いのは、バッシングのほうでした。人質ふたりに対するバッシングのひどさは想像以上で、日本人はどんだけ日本人が嫌いなのかと、海外の人たちも呆れる始末。

 毎度おなじみの自己責任論は出るだろうなと思ってましたけど、もっとヒドかった。日本に迷惑かけたんだから自害しろだの、あれは韓国人だというデマを流しておとしめようとしたり、正気とは思えぬ発言の数々。でまた、そういう意見をいってるのが無名・匿名の一般人だけじゃないんですよね。そこそこ名のある人やテレビに出てるような人までがツイッターで堂々と発言してるってのがね。しかも10代20代の若者じゃない、いい歳こいたおっさん、オバサンなんですよ。やっぱり問題はゆとり教育じゃなかったんだなとわかります。
 私はリベラルな人間ですから、自分とは相容れない意見や信条を持ってる人間の存在も認めます。不愉快ですけどね。でもその不愉快さも含めて認めるからリベラルなのであって、不愉快な者は四の五のいわず排除してしまえと考えるようになったら、それこそイスラム国の思想と一緒になってしまいます。
 不快な言論が多いからといって、言論の自由を制限しろって方向へ議論を向けてはいけません。それは民主主義の自殺につながります。バカがバカな発言を自由に出来るのも民主主義のおかげだし、バカにバカといえるのもまた、民主主義のおかげです。

 ただね、自己責任だ、自業自得だと思うのは個人の自由でも、いつ殺されるかもわからない状況に置かれていた人に対して、その考えを口に出したりツイートしたりすべきでないことくらい、良識あるまともなオトナならわかるでしょうに。
 それをあえて発言するヤツらは「偽悪者」です。悪ぶって過激な意見をいうことが強さだとかん違いしてるだけ。
 以前から私は、偽善はべつに悪くないと主張し、偽善者になれと勧めてきました。偽善者は、動機がどんなに不純でも、結果的にだれかを救っているからです(この辺の議論を詳しく知りたいなら私の『偽善のすすめ 10代からの倫理学講座』を読んでください)
 偽悪者がすることは、だれも救いません。偽悪や偽悪者が具体的な問題をなにか解決したことなどありません。偽悪がよのなかの進歩や改良に貢献したためしがないんです。
 偽悪者がやることといったら、愚にもつかない理屈をこねて、問題そのものをなかったことにするくらいのこと。死ねばいいとか、あれは日本人じゃないから、なんて理屈はどれも問題解決を模索するのでなく、問題そのものが存在しないから解決の必要性がない、と詭弁を弄してるだけにすぎません。

 日本では、問題は起こさないのが「優」。問題が起きたら隠蔽するか、他人のせいにするのが「良」。ひたすら謝罪するのが「可」。問題を解決しようと努力しても、全然評価してもらえません。それどころか、解決に失敗するとなにもしなかったときよりも責められます。
 日本では、問題を起こした時点でもうアウトなんです。日本のオトナたちは若者に「失敗を恐れるな」といいますが、ウソですよ。信用したら痛い目に遭います。日本ほど失敗にキビシい国はありません。
 そんな不条理な日本に生きていて、日本人は誇りを持て? なにをどう誇るの。日本人は自信を失っている? 自信を失わせるような社会の仕組みになってるからでしょ。日本は素晴らしいと説くテレビ番組が、ますますむなしく見えてきます。
[ 2015/02/02 18:05 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)
プロフィール

Author:パオロ・マッツァリーノ
イタリア生まれの日本文化史研究家、戯作者。公式プロフィールにはイタリアン大学日本文化研究科卒とあるが、大学自体の存在が未確認。父は九州男児で国際スパイ(もしくは某ハンバーガーチェーンの店舗清掃員)、母はナポリの花売り娘、弟はフィレンツェ在住の家具職人のはずだが、本人はイタリア語で話しかけられるとなぜか聞こえないふりをするらしい。ジャズと立ち食いそばが好き。

パオロの著作
会社苦いかしょっぱいか

みんなの道徳解体新書

日本人のための怒りかた講座

エラい人にはウソがある

昔はよかった病

日本文化史

偽善のすすめ

13歳からの反社会学(文庫)

ザ・世のなか力

怒る!日本文化論

日本列島プチ改造論(文庫)

パオロ・マッツァリーノの日本史漫談

コドモダマシ(文庫)

13歳からの反社会学

続・反社会学講座(文庫)

日本列島プチ改造論

コドモダマシ

反社会学講座(文庫)

つっこみ力

反社会学の不埒な研究報告