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地域の絆と犯罪の話 完結編

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。
 あんまり同じ話ばかり続けても飽きるので、今回で地域の絆と犯罪の件についてはひと区切りとします。

 私がくびを長~くして待ちわびているのに、いまだに、地域の絆が薄れると犯罪が増えるという仮説を立証した人がひとりも現れません。
 地域の絆で犯罪を防ごう、と旗を振ってる人は何万、何十万人もいるのに、ですよ。自分たちがぶち上げた仮説をだれひとりとして立証できないくせに、私が実例をあげて矛盾を指摘すると、ヘリクツで反論してくるんだから、ずっちいなあ。
 「割れ窓理論の活動によってニューヨークの犯罪は激減した」って話も都市伝説だったことが、アメリカの社会学者によってすでに暴かれてます。さて、どうやって地域の絆と犯罪の関連性を立証するつもりなのでしょうか。
 立証するには、まずは、地域の絆という見えないものの強弱を数値化するところからはじめなければいけません。どうやって数値化するんですかね。バーベキューの回数とか?
 絆のほうはともかく、犯罪のほうは統計から簡単に数値化できます。なのに、ほとんどの人はそれすらしていません。そこなんですよ、私が説教したくなるのは。
「あなたが住んでる町では、過去10年間、毎年どれだけの犯罪が起きてますか?」
 この質問に答えられる人は、ほとんどいません。管轄の警察署に問い合わせれば教えてもらえるのに、だれひとりとして聞こうともしていない。エンブレムの似たデザインなんてどうでもいいことは血まなこになって調べるのに、自分の身近な犯罪状況という大事なことは調べようともしない。調べもせずに、テレビのワイドショーが視聴率目当てに煽りまくる犯罪の恐怖に震え上がったあげく、地域の絆などというおまじないでケガレを祓おうとしています。
(犯罪発生状況を過去10年分調べろといったのには意味があります。もともと犯罪が少ない日本では、少なくとも10年ぐらいの推移を見ないと正確な状況がわからないからです。)

 あれ、なんかこの状況って、聞いたことがあるような……。これって戦時中の日本人の行動とほとんど同じじゃないですか。
 戦時中、日本の庶民は敵の戦力や実際の戦況などの情報をまったく知らないまま、隣組の絆を強くして戦争に勝とうとしてました。それをばかばかしい、非科学的だと批判しようものなら、非国民、国賊とののしられ排除されました。
 いま、犯罪という敵に立ち向かおうとしている多くの日本人は、敵に関する正確な情報をまったく知らないままに、地域の絆なんて精神論で盛り上がり、見えない敵とやみくもに戦おうとしています。その行為を愚かで非科学的だと指摘する人間は、いずれ、地域の絆を破壊し人々の和を乱す異端者とみなされることでしょう。

 結局、日本人は敗戦からなにも学ばなかったようです。
 現実のリスクに目を向けて正しくその実態を評価・分析し、もっとも有効な手段をとる、というごくあたりまえのことが、戦後70年たってもまだできない。
 戦後の教育で日本人は変わったといわれますが、そうですかね。日本の戦後教育は、日本人を前近代的・土俗的な思考の泥沼から引きずり出すことに失敗したとしか思えないのですが。
[ 2015/09/08 20:06 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)
プロフィール

Author:パオロ・マッツァリーノ
イタリア生まれの日本文化史研究家、戯作者。公式プロフィールにはイタリアン大学日本文化研究科卒とあるが、大学自体の存在が未確認。父は九州男児で国際スパイ(もしくは某ハンバーガーチェーンの店舗清掃員)、母はナポリの花売り娘、弟はフィレンツェ在住の家具職人のはずだが、本人はイタリア語で話しかけられるとなぜか聞こえないふりをするらしい。ジャズと立ち食いそばが好き。

パオロの著作
会社苦いかしょっぱいか

みんなの道徳解体新書

日本人のための怒りかた講座

エラい人にはウソがある

昔はよかった病

日本文化史

偽善のすすめ

13歳からの反社会学(文庫)

ザ・世のなか力

怒る!日本文化論

日本列島プチ改造論(文庫)

パオロ・マッツァリーノの日本史漫談

コドモダマシ(文庫)

13歳からの反社会学

続・反社会学講座(文庫)

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つっこみ力

反社会学の不埒な研究報告