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一足先にデータで流行語大賞を決定しました

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。
 流行語大賞の審査基準がよくわからんという批判は、毎年繰り返されてきました。
 そもそもノミネートされる言葉のなかに、これどこで流行ってたんだよ、みたいなものがたくさんあるし、どっかのおっさん、おばさんたちが密室で適当に相談して選んだだけの流行語大賞が、まるで国民の総意を得たかのようなつもりでいるのは許せん! とお怒りのかたも多いと聞きます。
 わかりました。私がみなさんのご不満解消に一肌脱ぎましょう。本家より一足先に、データを使って客観的に流行語大賞を決めてしまいましたので、その結果を発表いたします。

 まずは方法を説明します。流行語大賞候補として先日発表された言葉が、朝日・読売新聞の記事にどれだけ使われていたかを記事検索で確かめるという単純明快、公明正大、極力私情を挟まないスマートなやりかたです。
 今年の流行語という条件を満たすためには、昨年との比較が必要になります。今年になってから登場した言葉、または、昨年も少し使われてたけど今年になって爆発的に使われるようになった言葉、そのいずれかでなければ流行語とはいいません。
 そこで今回の調査では、2013年11月から2014年10月までを昨年度、14年11月から15年10月までを今年度ということにして、それぞれの候補語が両紙で使われていた記事数を比較することにしました(11月12日時点での検索結果)
 読売の検索システムはオプションによって検索結果がかなり変わるのですが、今回は、「表記のゆらぎを含めない全文検索」による結果です。
 なお、朝日・読売ともに検索システムの仕様により、同じ記事がダブってカウントされてしまうことがまれにあります。でもすべての検索結果をチェックするのは大変だし、これまで何年も新聞記事検索を利用してきた経験から、ダブりによって大幅に結果が変わることはないと判断したので、今回ダブりのチェックまではしてません。そこまで厳密さを求めるなら、ギャラをください。

 大賞発表の前に、個別の注目点を見ていきましょう。
 まずはお笑いフレーズ系。「ラッスンゴレライ」「あったかいんだからぁ」「安心して下さい、穿いてますよ」の3つが候補入りしています。
 当然ながら、3つとも昨年の登場数はゼロです。今年は朝日読売合計で、
「ラッスン」が16、「あったかい」が15と接戦を繰り広げています。そして「安心して」が……0。え、ゼロ? 安村さん、マスコミの人はハマってませんよ。

 「ドラゲナイ」は朝日は0ですが、まさかの読売1。なんの記事かと確認したら、あるスポーツイベントにエントリーしたチーム名でした。ま、こういう使われかたで登場するのも、流行語ならではです。

 「I AM KENJI」と「I am not ABE」ですが、朝日のシステムでは検索ができませんでした。英文がダメなのか、一文字とみなされたのか、私のやりかたが悪いのかもしれませんけど、今回は対象からはずしました。このふたつが流行語大賞に選ばれる可能性はほぼないと思うので問題ないでしょう。

 全体的には、朝日と読売の結果がかなり似通ったものになったことが意外だったのですが、やはりというか、政治関連の言葉にかぎると、大きな差が見られました。今年の記事件数に両紙で差があったものは、こちら。
 早く質問しろよ   朝日32 読売8
 アベ政治を許さない 朝日84 読売5
 戦争法案      朝日532 読売94
 シールズ      朝日226 読売26

 「シールズ」は今年結成した団体ですから、昨年はゼロのはず。なのに朝日15、読売13件ヒットしたのは、英米にはシールズという苗字の人がけっこういるからです。昨年のメジャーリーグ・ワールドシリーズに登板したシールズ投手など。
 それにしても、わかりやすい結果ですよね。両紙の政治姿勢の差がこれほど鮮明に出るとは。安倍政権支持の読売と不支持の朝日。

 今回のノミネートで意味不明だったのが「チャレンジ」。あまりにも普通の言葉なので、なんだこれと思ったら、東芝の不正事件で使われたんですか。知らなかった。
 で、「チャレンジ」ですが、朝日読売の合計登場数は、昨年より134件も減ってます。前の年より使われなくなった言葉を流行語としてノミネートしちゃうあたりがなんとも……。

 さて、いよいよ大賞の発表とまいりましょう。
 審査基準を3種類ご用意しました。それぞれ意味があります。ひとつは、増加率。昨年の何倍使われたか。もうひとつは、昨年からの増加数。そして、今年はじめて登場した言葉。
 なお、どれも朝日と読売を足した数で計算しました(別々にも出しましたけど、上位の結果はほぼ同じだったので)

昨年からの増加率
1位 ドローン 24.6倍
2位 マイナンバー 20.6倍
3位 トリプルスリー 14.3倍

昨年からの増加数
1位 北陸新幹線 1608
2位 マイナンバー 882
3位 ドローン 874

今年登場した言葉
1位 戦争法案 626
2位 存立危機事態 337
3位 爆買い 271

 以上が新聞データから検証した今年の流行語大賞です。おめでとうございます。
 どうです? まあまあ納得のいく結果になったのでは。
 さきほど解説したように、「戦争法案」については朝日がブーストをかけているので疑問符がつくかもしれません。でも「北陸新幹線」は逆に読売のほうが600件も多いんですよ。タイアップ? ゴリ押し? なので、両者痛み分けということで。

 最後に私個人の感想を。日常会話のなかで使えるかどうかも、流行語の条件として重要ではないでしょうか。よく使われた言葉としては「マイナンバー」「ドローン」なんだろうけど、日常会話では使いづらい。
 そういった意味で、個人的にこのなかから大賞を選ぶなら「爆買い」ですね。実際に普段の会話でも使えそうです。なにかをまとめ買いした人に、「なに爆買いしてんだよ」といったりとか。「爆買い」は今後普通に日本語として定着する可能性もあります。

 今回私は新聞記事で決めましたけど、他にもネットの検索ワードとか、客観的なデータで流行語を調べる方法はいろいろあるはずです。少数の審査員の合議制というなれ合いは、そろそろやめにしませんか。
[ 2015/11/13 20:24 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)
プロフィール

Author:パオロ・マッツァリーノ
イタリア生まれの日本文化史研究家、戯作者。公式プロフィールにはイタリアン大学日本文化研究科卒とあるが、大学自体の存在が未確認。父は九州男児で国際スパイ(もしくは某ハンバーガーチェーンの店舗清掃員)、母はナポリの花売り娘、弟はフィレンツェ在住の家具職人のはずだが、本人はイタリア語で話しかけられるとなぜか聞こえないふりをするらしい。ジャズと立ち食いそばが好き。

パオロの著作
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