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私と純文学

 こんにちは。パオロ・マッツァリーノです。
 少しずつブログの仕組みがわかってきたので、レイアウトをいじってみました。サイドに著作のカバー画像をずらっと並べたいなあと思い、画像ドラッグアンドドロップみたいに簡単にできるかと期待したら、サイドにこういうの表示するには、HTMLのソース書かなきゃいけないのね。ブログってラクに作れるかと思ったけど、見栄えをよくしようとすると、結局、普通のサイト作るのと労力は変わらない気が……。
 最初の記事で、拍手ってボタンが謎だと書きましたが、消しかたがわかったので消しました。
 当ブログは、余計な要素を極力取っ払う方針で運営します。アクセス解析なんてのもやりません。コメント、トラックバック、ありません。これはべつに読者とのコミュニケーションを拒否してるわけではありません。自分の書いた文章以外には責任持てないから表示したくないんです。
 ご意見・ご感想・ご質問のあるかたは、メールフォームから送信してくだされば、読みますし、返事を出すこともあります。メールフォームが書きづらければ、反社会学講座の本家サイトに記載してあるメアド宛にいつもお使いのメールソフトなどで送ってください。
 返事は、100パーセントは期待しないでください。これまでの実績ですと、そこそこ、返してます。返事しないのは、なんと返事したらいいのかわからない場合が多いです。抽象的すぎる質問を受けたとき。込み入った議論をふっかけられたとき。自分の守備範囲でないことを聞かれて、本当に答がわからないときもあります。でも、すべて目を通して参考にはしてますので。

 せっかくだからブログっぽく、今日の新聞ネタなんかも書きますか。
 2月11日付読売新聞には、直木賞作家の佐藤賢一さんのインタビューが1面に、先日芥川賞を獲った田中慎弥さんのインタビュー記事が2面に載ってました。エンタメ作家と純文学作家のインタビューです。
 エンターテインメントと純文学のちがいはなにか。読むと爽快、痛快になるのが、エンターテインメント。読むと不愉快になるのが純文学。人間のイヤな面、汚い面、醜い面をひっぺがして見せるから。エンタメもときにそれをやりますが、必ずきれいに片付けて、既存の倫理を傷つけぬようにして終わります。
 わかりやすい例がテレビの2時間サスペンス。どんなに凶悪な事件が起こっても、最後で必ず犯人がわかり、崖の上ですべての真相を語って逮捕または自殺によって勧善懲悪が保たれ、視聴者は爽快な気分で床につき、翌朝目覚めるころにはサスペンスのことなどけろっと忘れてます。
 佐藤さんのインタビュー記事はこんな文章ではじまります。「今の日本は、バブル崩壊後の次の価値が見つけられていない。先の見えない時代には、新しい価値を提示してくれる指導者が必要だ」。
 ほら、痛快でしょ。いかにもエンタメ作家らしいものの見かたです。世の中のオッサンたちも、こういう歴史ロマン的な社会の見かたが大好物なんです。
 でも、バブル崩壊前には、立派な価値が提示されてたんですかね? それもしかして金儲け至上主義のことですか? 産業発展のためなら公害なんてたいした問題じゃない、多少犠牲者が出たくらいで騒ぐんじゃない、ってのが、高度成長期の主要な価値観のひとつだったことは、否定しようのない真実です。いま、ソフトバンクの孫さんは、次々と新事業を興して新たな価値を提示し続けてますけど、孫さんを国の指導者にしよう、なんて声は聞こえてきません。それどころか、新たな価値を提示する成功者は、やっかまれて批判されるのが世の習いです。歴史ロマンで現実の人間と社会は説明できません。

 では、田中さんのインタビュー記事はどうだったかといいますと、あまりにありきたりな内容でがっかりです。
 田中さんといえば、受賞後のぶっきらぼうなインタビューで有名になりました。私は田中さんの作品は読んだことありませんが、たぶん、変人なんだろうなと思います。それでいいんです。純文学作家は、人をイラつかせるような変人でないとダメなんです。
 受賞後のマスコミ報道を見てると、田中さんを、じつはいい人なのだという方向へ持っていこうとしてる印象を受けました。母親からいい話を引き出そうとしてたりね。田中さんご本人は、それ望んでるのかな。なぜマスコミのみなさんは、変人を変人のまま讃えてくれないんですかね。賞をもらうのはいい人でなきゃいけないんですか。むしろ、芥川賞は変人賞なんだ、変人を讃える賞なんだと認識を変えたほうがいい。
 30すぎまで小説書くだけで、働いたことがなかったというのはたしかに世間的に見れば変人確定エピソードでしょう。でも、よく考えてみてください。石原慎太郎さんだって、学生時代にいきなり作家デビューして売れっ子になり、結局これまで、作家と政治家しかやったことがない人です。まともに働いたことがないんですよ、あの人。世間一般の基準からいえば、完全なる変人です。石原さんはロマンを語るのが上手で、自分を強い人間にみせるのが得意なので、変人扱いをまぬがれているだけです。一皮むけば絶対変人のはずなのに常識人のふりをする石原さんこそ、日本一うさんくさいオッサンです。
 ところで私はそんなに純文学を読んでるのか? いいえ、エンタメのほうが断然好きです。エンタメばかり読んでると、心が爽やかにマヒしてしまうので、たまに純文学を読んで不愉快な気持ちになり、心をリフレッシュするのもいいものですよ。
[ 2012/02/11 22:46 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)
プロフィール

Author:パオロ・マッツァリーノ
イタリア生まれの日本文化史研究家、戯作者。公式プロフィールにはイタリアン大学日本文化研究科卒とあるが、大学自体の存在が未確認。父は九州男児で国際スパイ(もしくは某ハンバーガーチェーンの店舗清掃員)、母はナポリの花売り娘、弟はフィレンツェ在住の家具職人のはずだが、本人はイタリア語で話しかけられるとなぜか聞こえないふりをするらしい。ジャズと立ち食いそばが好き。

パオロの著作
会社苦いかしょっぱいか

みんなの道徳解体新書

日本人のための怒りかた講座

エラい人にはウソがある

昔はよかった病

日本文化史

偽善のすすめ

13歳からの反社会学(文庫)

ザ・世のなか力

怒る!日本文化論

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パオロ・マッツァリーノの日本史漫談

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続・反社会学講座(文庫)

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つっこみ力

反社会学の不埒な研究報告