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井上公造さんの矛盾したセンテンス

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。
 ベッキーさんと川谷さんの件についていろいろ申しておりますが、べつに味方してるのではありません。芸能ニュースにはヘンテコな論理がたくさん出てくるので、メディアリテラシーを考えるのにもってこいの教材として日頃から注目しているのです。
 さて、また新たなLINE画面が公開されて話題になってます。ただしあまりにウケ狙いな言葉や、アイコンが古い四角だったりしたことで、捏造ではないかと疑う声も高まっています。しかし他人を叩いてご機嫌なモラルテロリストたちは、まったく耳を貸さないご様子。
 四角いアイコンに関しては、彼の将来を憂う音楽関係者が古いスマホを持ち出したから、などとムリヤリな説明がネットに流布してますが、本人の同意なく所有物を持ち出したら窃盗犯です。憂うべきはそちらでしょう。
 ベーコンが『ノヴムオルガヌム』で指摘したように、虚妄や迷信を信じやすいタイプの人たちは、いったんこうだと思いこむと、反証例がどんなにたくさんあっても無視してしまうもの。これは、私の『「昔はよかった」病』をけなしてる人たちにもあてはまりますけども。

 さて、流出画像について芸能リポーターの井上公造さんが755におかしな書き込みをしていましたので、感情論や倫理的判断を抜きにして、論理的に検証してみましょう。

「ベッキーのLINE流出の件、本物だと言い切れる理由はなぜですか?」
 という質問に対し、井上さんはこう回答します。
「取材で、裏付けを取ったからです。偽物なら、ベッキー側は訴えるべきです!」

 どこがおかしいか、おわかりでしょうか。
 取材で裏付けを取って本物だと確信しているなら、こんな発言をするはずがありません。もし井上さんがホントに裏を取ったという自信があるのなら、偽物である可能性は消えたはずですよね。だとしたら、こう答えるはずです。
「取材で、裏付けを取ったからです。本物だからベッキー側が訴えることはありえません!」
 なのにそう断言できてないということはすなわち、裏付けが非常に弱いことを示しています。

 さらなら疑問は、だれに取材したのかという点。あの画像が本物であるということを、いったいだれがどうやって証明できたというのですか?
 あのやりとりは二人だけでされていたわけで、第三者は会話に介入していません。となると、会話の中身が本物であると証言できるのは当事者である二人しかいないのです。
 文春に持ち込まれた時点ですでに画像や文章が捏造・改竄されている可能性も否めません。捏造・改竄されていたとしても、それがわかるのは当事者の二人だけ。それ以外の人が真偽を判定するのは不可能です。だから関係者にどんなに取材しても裏は取れないのです。
 LINEの運営会社なら通話記録みたいなものから証明できるかもしれませんけど、そんな大事な情報を芸能レポーターにリークするはずがありません。
 残るは、井上さんが当事者である二人に直接取材して本物だという言質を取った可能性ですが、それはもっとありえない。その場合は完全に本物だとわかっているのだから、「偽物なら訴えるべきです」なんて書きこむわけがありません。
 よって、実際には井上さんは裏を取れていないのです。

 ついでにもうひとつ。
「本人が否定しないから本物」
 と主張する人たちがいますが、これも正しいとはいえません。だったら、
「本人が否定すればニセモノ」
 となるのですか? そうとはかぎりませんよね。否定したらしたで今度は「ウソつき!」と叩かれるだけ。
 つまり、否定しようがしまいが、本物であると信じる(信じたい)人たちの気持ちは変わりません。ですからこの場合、「否定も肯定もしない」のがもっとも無難な選択肢です。
[ 2016/01/23 22:02 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)
プロフィール

Author:パオロ・マッツァリーノ
イタリア生まれの日本文化史研究家、戯作者。公式プロフィールにはイタリアン大学日本文化研究科卒とあるが、大学自体の存在が未確認。父は九州男児で国際スパイ(もしくは某ハンバーガーチェーンの店舗清掃員)、母はナポリの花売り娘、弟はフィレンツェ在住の家具職人のはずだが、本人はイタリア語で話しかけられるとなぜか聞こえないふりをするらしい。ジャズと立ち食いそばが好き。

パオロの著作
会社苦いかしょっぱいか

みんなの道徳解体新書

日本人のための怒りかた講座

エラい人にはウソがある

昔はよかった病

日本文化史

偽善のすすめ

13歳からの反社会学(文庫)

ザ・世のなか力

怒る!日本文化論

日本列島プチ改造論(文庫)

パオロ・マッツァリーノの日本史漫談

コドモダマシ(文庫)

13歳からの反社会学

続・反社会学講座(文庫)

日本列島プチ改造論

コドモダマシ

反社会学講座(文庫)

つっこみ力

反社会学の不埒な研究報告