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鳥貴族の件の本質的問題点

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。
 焼き鳥居酒屋チェーンの鳥貴族の一店舗で、酎ハイのドリンクサーバーにまちがえて消毒用アルコールを接続して客に出していた問題について、キビシい指摘をしておきます。ちなみに私は鳥貴族には一度も行ったことはありませんし、なんの利害関係もありません。

 消毒用アルコールは健康上は無害だから問題はない、飲んでしまった客には返金する、などと、なんかさらっと済ましてしまおうとしてますけど、この件、そんな単純な問題ではないですよ。
 コンサルタントだか弁護士だかで、正直に公表した点に誠実さを感じるなどと評価してる人もいましたけど、なに寝言いってるの。ワシントンの道徳ばなしじゃないんだから。
 たしかに健康上の問題はないでしょう。わざとやったのではなく、単なるミスだったという点にも同意します。
 でも、それは問題の本質ではありません。問題は、ミスの対処のしかたがずさんなことなんです。

 7月19日に、数名の客から酎ハイの味がヘンだ、泡が立ってるなどと指摘があって、店側も味の変化に気づいたにもかかわらず、味の誤差だとして、23日にサーバーを点検して原因がわかるまで4日間も、あきらかに味がおかしい酎ハイを客に出し続けていたんです。
 味がおかしいとわかってる商品を、4日間も客に出し続けていたんですよ。もはやこの時点で、飲食店としてあるまじき重大な失態です。味へのこだわりがない、と証明されたようなものですから。

 そもそも酎ハイの味に「誤差」などありえません。濃いか薄いか、だったらありえます。客に「今日の酎ハイ、なんか薄くない?」といわれたら、それは誤差と説明できるでしょう。しかし「味がちがう」「味がヘン」ならそれは、材料がちがっている、傷んでいる、もしくは異物が混入している、原因はこの3つしかありえないんです(複数の客が指摘してるので客の舌のせいではない)

 いずれにしても、すぐに原因を調べ、つきとめるまで提供してはいけません。それこそが本物の、「誠実な」態度です。
 今回はたまたま無害なものだったけど、それはラッキーだっただけ。もし有害なものだったら、4日間も提供し続けていたのだから、大変なことになってたでしょう。

 数名の客が指摘しただけだから、たいして騒ぐほどのことではない、なんて甘く考えてたら、それも大まちがい。
 欧米人は食事をして飲食店に不満があれば、その場で指摘することが多いのですが、日本人って、なんもいわない人がほとんどなんです。今回の件を指摘したのは数名だったかもしれませんけど、実際には数十名が、味がおかしいことに気づいてたはずです。でも、その人たちはなにもいわずに帰ったんです。日本人の場合、文句をいわないけど二度と来ないってパターンが多いので、今回の件で店は数十名の客の信頼を失ったと危惧しなければなりません。

 もうひとつ、見過ごせない重要な問題があります。酎ハイの味がヘンだと客に指摘されたことを、店側はチェーン本部にすぐに報告してたのか、ということ。この点について、会社側の公表文書ではうやむやにされてます。
 本部が店から報告を受けていたなら、4日も待たず、即座に点検をすべきでした。知ってて放置していたのなら、本部側が食品の安全を軽視していたのですから、重大な過失です。
 仮に、店側が報告していなかったとしたら、もちろん問題ですが、それを店長個人のミスと片付けることはできません。
 その場合考えられるのは、そんな客の些細な指摘で酎ハイの提供をやめたら売上ががた落ちして本部から叱られる、だから黙っていよう、と店長が判断したケース。社員の成績管理がキビシい会社では、ありえない話ではありません。もしもそうだったとしたら、会社内の体質を改善しないかぎり、今回同様の失敗が繰り返される可能性があります。

 正直に公表した、という点にもやや疑問が残ります。7月末には発覚していた件を、半月たった今、なぜこのタイミングで公表したのでしょうか。マサカとは思いますが、インチキ臭いコンサルタントみたいなヤツが、世間の目やニュース番組がオリンピック一色になっている時期に公表すれば関心が向きにくくなるはずだ、などと入れ知恵したのではないですよね? これは私の邪推であってほしいのですが。

 鳥貴族のサイトでは「味へのこだわり」「安全安心」を自慢してますが、今回の件ではどちらも実践できてません。
 でもこれに関しては鳥貴族だけを責められません。日本の企業はやたらと「こだわり」「安全安心」を連呼するのですが、お題目を唱えるばかりで具体的な中身を伴ってないですから。ためしになにか不祥事や事故を起こした企業のサイトを見てごらんなさい、必ずといっていいほど、「安全安心」をうたってます。
 「トクホ」とかなら公的機関の審査に通らないと名乗れないけど、「安全安心」にはなんの審査もありません。だれでもいえる言葉には、なんの保証もありません。
[ 2016/08/18 21:35 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)
プロフィール

Author:パオロ・マッツァリーノ
イタリア生まれの日本文化史研究家、戯作者。公式プロフィールにはイタリアン大学日本文化研究科卒とあるが、大学自体の存在が未確認。父は九州男児で国際スパイ(もしくは某ハンバーガーチェーンの店舗清掃員)、母はナポリの花売り娘、弟はフィレンツェ在住の家具職人のはずだが、本人はイタリア語で話しかけられるとなぜか聞こえないふりをするらしい。ジャズと立ち食いそばが好き。

パオロの著作
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