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テロの本当のおそろしさ

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。イギリスでテロ事件が起きて、世界中から「テロとは断固として戦う」みたいな声が聞こえてきますが、私はいまだに釈然としないことがあるんです。
 みなさんもうお忘れかもしれませんけど、ほんの1年前ですよ、イギリスのEU離脱国民投票直前に、EU残留支持派の女性議員が、離脱を支持するイギリス人男性に惨殺される事件が起きたのは。
 これ、政治的理由で議員が殺されたのだから、まぎれもなくテロなんです。実際、殺された議員のご主人は、葬式だか追悼式だかの席で、妻はテロによって命を落とした、と明言してました。私もそう思います。なんという卑劣なテロだろうと憤りをおぼえました。
 ところが、です。イギリスのメディアも、他の国のメディアも、この件をテロとして強く非難しなかったように思います。
 いつもなら「テロには決して屈しない」「テロとは断固として戦う」などと毎度おなじみのコメントを発表するはずの各国首脳たちも、口をつぐんでました。
 なぜか? それは、この件をテロだと激しく非難してしまうと、イギリス国民の半数以上にあたるEU離脱賛成派を、テロリストの同胞であるかのように非難することになるからです。そうしないための配慮だったのでしょう。
 こうして、卑劣な政治テロは、単なる殺人事件として片付けられました。

 これこそが、テロの本当の恐ろしさなんじゃないですか。テロとはなにかという、世界共通の明確な定義はないんです。そのときどきの支配者層や多数派国民に都合のいいように決められてしまうんです。
 つまり、その国の国民の大多数が支持する政策を維持するための殺人ならば、それがどんなに卑劣な殺人であっても、テロとはみなされない可能性がある。逆に、その国の政治的少数派がなにか文句をいえば、それだけでテロとみなされる可能性もあります。

 ですから政治家のみなさんには、こう宣言していただきたいのです。
「テロとは断固として戦う。たとえそのテロリストが自分の仲間や支持者だったとしても」
 そうでないと、テロ対策が政治的弾圧のための道具として利用されかねませんから。
[ 2017/05/28 22:43 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)
プロフィール

Author:パオロ・マッツァリーノ
イタリア生まれの日本文化史研究家、戯作者。公式プロフィールにはイタリアン大学日本文化研究科卒とあるが、大学自体の存在が未確認。父は九州男児で国際スパイ(もしくは某ハンバーガーチェーンの店舗清掃員)、母はナポリの花売り娘、弟はフィレンツェ在住の家具職人のはずだが、本人はイタリア語で話しかけられるとなぜか聞こえないふりをするらしい。ジャズと立ち食いそばが好き。

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