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教育委員に願うこと

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。先週は七夕でした。願いごとを書いた短冊がつるされた笹が、いろんなところに置かれてました。
 きっと、日本全国の教育委員会の笹には、こんな短冊がぶらさがっていたんでしょうね。
「いじめと自殺の因果関係がありませんように」
「いじめが道徳教育だけで自然と消えてなくなりますように」
「いじめ問題を学校現場が処理してくれますように。自分の任期中に教育委員までめんどくさいことがまわってきませんように」
「無事任期を終えて、引退後は山登りとガーデニングと絵手紙にいそしめますように」

 いじめが発覚しても教育委員や校長がなにもしないのは、当人たちが無能なせいもあるけれど、学校教育法の問題もあるんです。学校教育法とその施行規則には、児童生徒に対して、体罰以外の懲戒を加えることができるとあります。その懲戒の例としてあげられてるのは、退学・停学・訓告です。ただし、小中学生に対しては、退学と停学はできないことになってます。
 てことは要するに、小中学生がクラスメートに対してどんなに陰惨ないじめをしていたとしても、学校側は訓告処分、「いけませんよ」と口でいうことしかできないと、法律で定められちゃってるわけです。
 今回のいじめ自殺事件でも、いじめが発覚しても担任はちょっと叱っただけで、あとは笑ってみてたとする報告がありました。みなさんそれを責めますが、おそろしいことに、その担任は、法律にかなった対応をしていたことになるんですよ。
 バカにしてますよね。あとは道徳教育で心を豊かにしていじめを防げとでもいうんですか。「己の欲せざるところは人に施すなかれ」とか声に出して論語を読ませれば、自分がしてほしくないことは他人にもしなくなるとでも思ってるのなら、救いようのないアホ教育者です。自分が絶対されたくないことを、あえて他人にするのが「いじめ」なのに。
 だから学校教育法を早いとこ改正して、小中学生に対しても停学や謹慎などの懲戒を科せられるようにすべきです。本来なら、法律が被害者の味方をしなければいけないのに、いま、それができてない。だから、非合法な体罰でいじめっ子を処罰するか、被害者が自殺してから裁判で責任を取らせるか、事実上、その極端な二択しか残されてないんです。
 いじめと自殺に因果関係があろうがなかろうが、どうでもいいんです。いじめ自体が事実と認定されたら、それを罪として、加害児童生徒に厳正に処分をくだせるようにするのがスジってもんでしょう。
 教育委員会の判断と責任において、加害児童生徒にきちんと相応の処罰をした上で、これ以上は加害者を責めないでくれ、報道やリンチはやめてくれ、と守るのが、教育委員のあるべき姿です。すべてなかったことにする、もみ消し機関なら、ないほうがましです。


追記 (7/16)

 学校教育法では停学の懲戒処分はできないものの、出席停止ならできるのだそうです。
 停学と出席停止はなにがちがうのか調べたのですが、これがまた、すごくあいまいなんです。ほとんど同じじゃないかと思うんですが、ちがうことにしておかないとまずいらしい。なぜなら、停学と実質同じとなったら、それは小中学生に対して科せられない懲戒ということになってしまうから。
 出席停止期間中も学校の授業に出られないというだけで、欠席してることにはならないので、学習指導はしなきゃいけないとされてます。でも、どうやって? 学校の先生が特別にその子の家に出向いて毎日授業をするのはムリだろうし、地域の教育センターみたいなところで補充授業をしろとか文部科学省の通達にはありますが、だれがやるの?
 必要条件がやたら多いんで、学校現場がなかなか出席停止処分をくだしたがらないのもわかります。これじゃあ、被害者に泣き寝入りさせるのが一番ラクだって悪い考えを起こしますよ。
 法律上の問題をクリアするための苦肉の策とはいえ、出席停止は懲戒ではない、あくまで、学校の秩序を守るための制度だとしているスタンスには疑問です。
 きみは悪いことをした。だから出席停止にする。でもこれは罰ではないのだよ。
 じゃあなんなんだよ、ってことになりますわな。だって出席停止にされた時点で、当人にとってはまぎれもない罰なんだし、周囲の全員がそうみなしてます。なのに、これは罰じゃなくて教育的配慮だなどと、ヘタな詭弁で表向きだけ取り繕う姿を見せることが、いい影響を与えるとは思えません。
[ 2012/07/12 21:29 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)
プロフィール

Author:パオロ・マッツァリーノ
イタリア生まれの日本文化史研究家、戯作者。公式プロフィールにはイタリアン大学日本文化研究科卒とあるが、大学自体の存在が未確認。父は九州男児で国際スパイ(もしくは某ハンバーガーチェーンの店舗清掃員)、母はナポリの花売り娘、弟はフィレンツェ在住の家具職人のはずだが、本人はイタリア語で話しかけられるとなぜか聞こえないふりをするらしい。ジャズと立ち食いそばが好き。

パオロの著作
会社苦いかしょっぱいか

みんなの道徳解体新書

日本人のための怒りかた講座

エラい人にはウソがある

昔はよかった病

日本文化史

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13歳からの反社会学(文庫)

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コドモダマシ(文庫)

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続・反社会学講座(文庫)

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反社会学の不埒な研究報告