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最近気になった世論調査

 こんにちは、機長のパオロ・マッツァリーノより、ご搭乗のみなさまにごあいさつを申し上げます。弊社はコストダウンを実現するため、機体はすべて中古を購入、ペンキなども塗り直さずそのまま使用しております。そのため、便ごとに機種と見た目が異なることをご了承ください。
 本日の機体は米軍より格安で払い下げられたMV-22、通称オスプレイでございます。米政府により安全性は保証されておりますのでご安心ください。なぜ格安だったかを深く詮索するのはご遠慮ください。
 弊社のCAもすべて中途採用ですので、能力、見た目などにバラツキがございます。年齢・性別などを深く詮索するのはご遠慮ください。
 なお、中国のみなさま、領土問題への苦情は機内では受け付けておりません。東京都消費生活総合センターに連絡されますよう、お願いします。

 先月、6月に言論NPOという団体が「第8回 日中共同世論調査」の結果を公表しました。今回、各新聞などで取りあげられたので、この調査の存在をはじめて知りました。
 日中両国で、互いの国に対する印象などを調査したそうです。調査を紹介した新聞記事によりますと、日本人の中国に対する印象は、「良くない印象」「どちらかといえば良くない印象」を合わせると、84.3%で過去最悪を更新したというんです。
 でも、中国側の調査だと、日本に対する印象で良くない(どちらかといえば含む)と回答したのが64.5%です。
 おや、中国の人たちのほうが、日本に対して好意的なんですね。私はこの結果を意外に感じました。中国人はもっと日本を嫌ってるとばかり思ってたんです。
 でも考えてみれば、そんなに日本を嫌ってたら、中国の富裕層が日本観光に押し寄せてきませんよね。嫌いな国の電気製品を爆買いしないだろうし。
 日本旅行業協会の「旅行統計2012」を見ても、日本に来る外国人観光客の半数は、中国・韓国・台湾の人です。逆に、日本人が行く海外旅行先で多いところはといいますと、中国・韓国・アメリカで、全体の約半数を占めてます。お互いに嫌ってるというわりには、ずいぶんと行き来してるようです。
 私が気になったのは、印象が「良くない」と「どちらかといえば良くない」という回答を一緒くたにしてしまってるところです。実際には、両者には意識にかなり差があるはずなんです。
 「良くない」ときっぱり答える人は、たぶん政治的にも文化的にも本当に相手を嫌ってる人です。「どちらかといえば良くない」と答えた人は、たいして関心はないんだけど、ニュースとかを見ると、どっちかといえば、イヤかなあ……でも旅行には行ってみたいよね、なんて人でしょう。もし選択肢に「どちらともいえない」があったら、ほとんどの人がそちらに丸をつけてた可能性があります。
 だからこの二つを一緒にして、良くない印象が8割とするのは、統計の解釈としてはかなり乱暴です。というわけで、「良くない」と「どちらかといえば」の実数がそれぞれどのくらいだったのか知りたくて、調査の元データを参照したのですが、その数字はなぜか公表されてないんです。
 それより、内容以前に、調査方法のところでひっかかりました。日本側の調査は訪問留置回収法で、有効回収標本数は1000である。うん? いやいや、普通こういう調査では、有効回収率を発表するものです。何人にお願いして何人から回答を得られたか、その率が大事ですから。
 ところが公表されてるのは有効回収数のみ。しかも、1000ぴったり? 去年までの調査も確認したところ、毎回、有効数は1000ぴったりになってます。毎年ぴったり同じ数を回収? 奇跡です。
 中国側の調査はなぜか面接法でやってるそうで、あちらの有効数は毎年1500~1600くらいの範囲でバラツキがあります。それが普通です。
 というわけで、言論NPOにメールで調査方法について問い合わせてみたところ、回答していただきました。それによると、調査はある調査会社に委託しているそうですが、調査会社がいうには、毎年、年齢や地域が偏らないように抽出した人たち1000人にお願いして、1000人分回収してるとのことです。
 ありえない。
 日本国が多額の費用と大量の調査票回収員を投入して行い、回答することが法で義務づけられている国勢調査でさえ、近年では4%程度の未回収分があるんです。
 なのに、名前を聞いたこともない民間の調査会社からいきなり頼まれた、回答する義務も義理もまったくない調査に、1000人全員がきっちり回答してくれることなど、ありえません。
 たとえお願いしたときに「いいですよ~」と快諾しても、回収に行くと留守で連絡が取れなかったり、「やっぱりめんどくさいからやめた」「仕事が忙しくて忘れてた。あんた適当に書いといてよ」なんて人が必ず出てきます。人間だもの。人間って、いいかげんなんだもの。
 とくにこの手の政治意識みたいな調査では、興味関心のある少数の人だけが熱心に回答して、興味のない人からは相手にされないのが普通です。だからまず、ランダムに選んだ1000人が全員引き受けてくれたという時点で、怪しいと思わなきゃ。
 そもそも、回答数を1000人ぴったりにする理由はなんなんでしょう? 中国側の調査は端数が出てるのに、その結果を疑う人はいません。日本側だって、べつに964人とかだって全然かまわないのに、そこだけこだわるのは不自然です。
 私がこの調査の依頼者だったら、調査票をすべて再確認しますね。
 アンケート調査の正しい見かたを教える本は、何冊も出ています。谷岡一郎さんの『社会調査のウソ』とか、私もあちこちで勧めましたけど、いいかげん、マスコミの人たちも読んで勉強してほしいんですよ。まずは調査の方法を確認しましょう。調査内容を論評するのは、そのあとです。
[ 2012/07/21 14:33 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)
プロフィール

Author:パオロ・マッツァリーノ
イタリア生まれの日本文化史研究家、戯作者。公式プロフィールにはイタリアン大学日本文化研究科卒とあるが、大学自体の存在が未確認。父は九州男児で国際スパイ(もしくは某ハンバーガーチェーンの店舗清掃員)、母はナポリの花売り娘、弟はフィレンツェ在住の家具職人のはずだが、本人はイタリア語で話しかけられるとなぜか聞こえないふりをするらしい。ジャズと立ち食いそばが好き。

パオロの著作
みんなの道徳解体新書

日本人のための怒りかた講座

エラい人にはウソがある

昔はよかった病

日本文化史

偽善のすすめ

13歳からの反社会学(文庫)

ザ・世のなか力

怒る!日本文化論

日本列島プチ改造論(文庫)

パオロ・マッツァリーノの日本史漫談

コドモダマシ(文庫)

13歳からの反社会学

続・反社会学講座(文庫)

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コドモダマシ

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つっこみ力

反社会学の不埒な研究報告