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敬老の日にふさわしくないお話

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。ちょっと体調が思わしくなくて、まいりました。まだ40代ですけど、以前より体力が落ちたなあと意識することはあります。逆にそういう意識って、持ってないといけないと思うんです。中年になったら、自分は年を取っていくのだ、これからじょじょに衰えていくのだ、という残酷な現実を意識してないと、ムリして身体壊したり、ヘマをやったりしかねません。

 老人の万引き犯が増えているというニュースをたびたび耳にします。さすがに敬老の日の前後にそういうネガティブな話題を取りあげるマスコミはないだろうから、こんなネタを持ち出すのは私くらいかもしれないけど。
 高齢者人口が増えているから当然だろうという単純な解釈も成り立ちます。ただ気になる点がひとつ。その万引き老人たちは、老人になってから万引きデビューしたのでしょうか?
 それまでの人生では品行方正に生きてきたのだが、老人になって収入が減って生活が苦しくなり、ついつい万引き行為に手を染めてしまうようになった――
 同情心あふれるその見かたは、たぶんまちがってます。万引きとはいえ、窃盗です。れっきとした犯罪ですからね。人の倫理観って、そんなにころころ変わるものではありません。老人になってから急に倫理観が失われて万引きデビューする人がたくさんいるとは、考えにくいんです。
 万引きは、クセになりやすい犯罪だといわれています。やらない人はよほど食い詰めないかぎり一生やらないけど、やる人はたいした罪の意識もなく何度も繰り返す。一度味をしめるとなかなかやめられず、クセになってしまうことが多いのだそうです。
 私は若いころ店員のアルバイトを長くやってまして、万引き被害も何度も目にしてますので、その分析にうなずけます。実際、いきなり初犯で捕まえるケースよりも、あいつちょくちょく店に来るけど、いつも挙動が怪しいぞ、と店員にマークされていて、何度目かで捕まえることのほうが多かったと記憶してます。万引き犯には、一度成功すると同じ店で何度もやる習性があるのはたしかです。
 万引きで捕まった老人は、老人になってからデビューしたのでなく、若いころから恒常的に万引きをしていたと考えるほうが、納得がいきます。若いころは見つからないよううまくやってたし、万が一見つかってもダッシュで逃げられた。しかし年を取って、だんだん勘が鈍ったり動作が緩慢になってるのに、自分の衰えを意識していないので、ヘタこいて捕まってしまう――それが万引き老人の真の姿、若いころから万引きを重ねてきてやめられなかった者のあわれな末路である、なんて想像してしまうのは、私の偏見でしょうか。
[ 2012/09/15 11:01 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)
プロフィール

Author:パオロ・マッツァリーノ
イタリア生まれの日本文化史研究家、戯作者。公式プロフィールにはイタリアン大学日本文化研究科卒とあるが、大学自体の存在が未確認。父は九州男児で国際スパイ(もしくは某ハンバーガーチェーンの店舗清掃員)、母はナポリの花売り娘、弟はフィレンツェ在住の家具職人のはずだが、本人はイタリア語で話しかけられるとなぜか聞こえないふりをするらしい。ジャズと立ち食いそばが好き。

パオロの著作
みんなの道徳解体新書

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