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負けず嫌いな人

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。小さいお子さんをお持ちの親御さんが、「ウチの子、負けず嫌いなんですぅ」と、やや困ったニュアンスをおもてに出しつつも、けっこう嬉しそうに自慢気におっしゃることがあります。やる気に満ちた若い娘さんで、「ワタシ、負けず嫌いなんです」と公言している人がいます。
 どちらのケースも、負けず嫌いという性格あるいは資質を、肯定的に捉えているようなのですが、私はそういう人たちのことが、ちょっぴり不安になります。負けず嫌いって、そんなに素敵なものなのでしょうか?
 いま、日本でもっとも有名な負けず嫌いといったら、iPS細胞を使った手術を6件もおこなったと偽った研究者である、といえましょう。あれだけ追及されて、詳細を問われてもなにも答えられないのに、全部ウソだとは認めず、6件のうち1件は本当だといい張るんですから、相当ツワモノの負けず嫌いですよ、あの人。
 あんなのは負けず嫌いではない? 単なるズルだ? いいえ。そのふたつの差は紙一重なんです。同じコインの裏表といってもいいでしょう。
 負けをくやしがり、それをバネに正々堂々と努力して成功を勝ち取るタイプの負けず嫌いなら、それは素晴らしい資質です。しかし現実にはそういう人ばかりとはかぎりません。たいした実力も才能もないのに、自分の限界以上の成功を夢想してしまう負けず嫌いの人やこどもは、ともすると負けないことに執着するあまりにズルをするようになります。どんな手段を用いてでも、勝てばいい、勝てばうれしい、という歪んだ性格の人間になってしまう怖れがあります。
 しばらく前のことですが、原稿が進まず、現実逃避にテレビをだらだらと見ていました。なんかおもしろいのねえかなぁ、とチャンネルを次々に変えてたら、小学生の鉄道クイズ王決定戦みたいのをやってました。回答者3人のうち、上位2人が、デッドヒートを繰り広げている終盤戦でした。
 2位につけていたガキが、突如パニクりはじめたんです。「うわぁー、負けちゃうよぉー、ダメだ、負けるよー」と泣きごとをいいながらじたばたし出しました。オトナだったら人前では絶対やらない恥ずかしい行為をやってしまうあたり、やっぱりこどもだなあ、と笑えたのですが、まもなく私の表情はくもりました。このガキが負けたくないあまりにズルをやりはじめたからです。まだわかってもいないのに早押しボタンを先に押してしまって、「えーと、えーと、どっちかなんだよぉー」などと、あからさまに時間稼ぎをして考えてます。
 結局、このガキはズルをして優勝してしまうのです。見ててとても不愉快でした。この子の教育上、非常によくない成功体験をさせてしまったな、と心配になりました。こういう負けず嫌いのこどもに対しては、きびしいようですが、キミはズルをしたから失格だ、といい渡し、再挑戦するチャンスをあげるから、それまで努力しなさいと教えるべきだったのではないでしょうか。負けは負けと認め、そのくやしさをバネに努力する人間になるように教育しないと、オトナになってもずっとズルい世渡りをしていこうとするかもしれません。それで自分が破滅するだけならいいのですが、ズルってのは、たいていの場合、他人を巻き込むから困るんです。
[ 2012/10/20 22:24 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)
プロフィール

Author:パオロ・マッツァリーノ
イタリア生まれの日本文化史研究家、戯作者。公式プロフィールにはイタリアン大学日本文化研究科卒とあるが、大学自体の存在が未確認。父は九州男児で国際スパイ(もしくは某ハンバーガーチェーンの店舗清掃員)、母はナポリの花売り娘、弟はフィレンツェ在住の家具職人のはずだが、本人はイタリア語で話しかけられるとなぜか聞こえないふりをするらしい。ジャズと立ち食いそばが好き。

パオロの著作
みんなの道徳解体新書

日本人のための怒りかた講座

エラい人にはウソがある

昔はよかった病

日本文化史

偽善のすすめ

13歳からの反社会学(文庫)

ザ・世のなか力

怒る!日本文化論

日本列島プチ改造論(文庫)

パオロ・マッツァリーノの日本史漫談

コドモダマシ(文庫)

13歳からの反社会学

続・反社会学講座(文庫)

日本列島プチ改造論

コドモダマシ

反社会学講座(文庫)

つっこみ力

反社会学の不埒な研究報告