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今年よかったもろもろ

 こんにちは、そしてメリクリ、パオロ・マッツァリーノです。ムリして若者言葉を使ってみました。ガラケーってのがガラパゴスケータイの略だと、ついこないだ知りました。じゃあスマートホンは、すまけい?(ボケにムリがあるとよくいわれます)

今年買ってよかったもの
『ラジオサーバー PJ-20』(オリンパス)
 テレビ番組の留守録は、ハードディスクレコーダーの登場で革命的に便利になりましたけど、ラジオ番組を留守録できる製品となると非常に限られてしまいます。ハードディスクレコーダーでラジオも予約録音できれば、ラジオリスナーが激増するかもしれないのに。
 いま現在、おそらくベストといえるラジオ録音機が、オリンパスのPJ-20。本来はNHKの語学講座の受講者向けに開発されたのでしょうけど、私はもっぱらFMの音楽番組の録音用に使ってます。ケーブルテレビはたいていFM電波も一緒に流していて、クリアな音が聴けるのですが、それを同軸ケーブルで接続して受信できる機種は、PJシリーズくらいしかないのでは。
 私は前モデルのPJ-10からのユーザーです。10には不満点も多かったのですが、それが20ではほぼすべて改善されてました。とても良心的なモデルチェンジといえましょう。10のときは、まれにタイマー録音が時間になってもはじまらずハングアップする謎の現象に見舞われたのですが、20では一度も起こらず動作が安定しています。
 前モデルと比べて、やや不満が残る変更点といえば、早送り巻き戻しのときに音が出なくなったことと、録音レベルが低くなったこと(録音レベルは自動なので、自分では調整できません)。だいぶ小さめの音量で録音されるので、再生のとき、前モデルよりかなりボリュームをあげないといけません。ま、いずれもささいな欠点なので、製品そのものの満足度を大きく下げることはありません。

今年見たなかで一番おもしろかったテレビドラマ
『ヒトリシズカ』(WOWOW)
 有料チャンネルの番組を推すのは反則かもしれませんけど、WOWOWの連ドラはチャラチャラした役者を使わず、骨太の脚本と演出で勝負してるから、映画並みのクオリティーなんです。
 『ヒトリシズカ』は全6回と短いのですが、そのぶんムダなく、ダレなく、飽きが来ない。不可解な事件の裏に見え隠れする、失踪した15歳の少女。交番勤務や生活安全課など、事件捜査の周辺にいる警察官がその存在に気づくも、だれも彼女を捕まえられない。彼女の意図は第4回のラストでようやく明らかになるものの、話がどこに着地するのかは、最終回までわからない――ほら、ワクワクするでしょう。私はミステリーのおもしろさって、トリックの奇抜さとかじゃなく、謎が解きほぐされていくワクワク感にあると思ってます。

今年読んだなかで一番おもしろかった本
『ららら科学の子』矢作俊彦(文春文庫)
 あくまで、私が今年読んだ本ということであって、出版されたのは10年近く前です。ずいぶん前に読んだ『スズキさんの休息と遍歴』がむちゃくちゃおもしろかった記憶があるのに、なぜかいままで他の矢作作品に手をつけなかったのですが、気まぐれに手に取ってみたところ、最初の10ページからやっぱりむちゃくちゃおもしろい。30年ぶりに中国から帰ってきた元学生運動家が、自分で選択した行為の結果に後悔することなく、変化と現実を受け止めていくさまが、ハードボイルドなんですよ。

今年よく聴いたCD
『Ardis』Gap Mangione
 ディスクユニオンでアタマ3曲をちょろっと試聴。ジャケはヒドいし音も悪いけど、妙にノリのいいジャズだったので購入しました。家で聴くと、ピアノソロ曲では急に録音がよくなったり、はたまた突然70年代ばりのフュージョンが飛び出したりと、なんなんだこの節操のなさは。
 あらためてジャケ裏のメンツを確認すると、ラリー・カールトン、スティーブ・ガッド、ジェフ・ポーカロ? ジェフ・ポーカロが死んだのってだいぶ前だよねえ……。てことはこれ、ずいぶんむかしに録音された秘蔵音源をまとめた福袋みたいなアルバムなのでは。インディーズとはいえ、ジャケがペラ1枚でなんの説明もなく、録音日すら書かれてないなんて……。謎多き名盤。

今年観て考えさせられた映画
『アンヴィル! 夢を諦めきれない男たち』
『電人ザボーガー』
 音楽ドキュメンタリーとおバカヒーローもの、まったくジャンルの異なる2本です。とりわけ『ザボーガー』は前半がほぼコントといってよいふざけたノリなので、前半だけで見限ってしまったかたもおられることでしょう。でもこの映画のキモは後半にあります。はたしてヒーローは、40歳すぎてもヒーローでいられるのだろうか? これまで避けられていたテーマにあえて挑んだ意欲作なのです。
 『アンヴィル』は、ずーっとむかしに人気があったアンヴィルというヘビメタバンドのドキュメンタリー。その後人気が低迷してレコード会社からも契約を切られたけど、中心メンバーの2人は、50歳すぎてもまだ再ブレークを信じ、バンド活動を続けてます。
 そう、この2作のテーマは同じなのです。いやあ、私自身、40過ぎの売れない物書きなもので、身につまされます。自分はこの先、50になっても物書きを続けていられるのだろうか。そのうち、町角でビッグイシューとか売ってるんじゃなかろうかなんて不安が本気で頭をよぎります。
 でも一方で、開き直ってる自分もいます。この歳になって就職もむずかしいだろうし、好きなことやってくたばるなら、それも本望じゃないのか、と。2本の映画を観て、開き直る勇気をもらいました。

 さて、ベストに続いて、今年のワーストもあげようかと思ったのですが、年の瀬にだれかを貶めるってのもヤボなんで、やめときます。悪口は年が明けてからにとっておきましょう。
[ 2012/12/24 20:16 ] おすすめ | TB(-) | CM(-)
プロフィール

Author:パオロ・マッツァリーノ
イタリア生まれの日本文化史研究家、戯作者。公式プロフィールにはイタリアン大学日本文化研究科卒とあるが、大学自体の存在が未確認。父は九州男児で国際スパイ(もしくは某ハンバーガーチェーンの店舗清掃員)、母はナポリの花売り娘、弟はフィレンツェ在住の家具職人のはずだが、本人はイタリア語で話しかけられるとなぜか聞こえないふりをするらしい。ジャズと立ち食いそばが好き。

パオロの著作
会社苦いかしょっぱいか

みんなの道徳解体新書

日本人のための怒りかた講座

エラい人にはウソがある

昔はよかった病

日本文化史

偽善のすすめ

13歳からの反社会学(文庫)

ザ・世のなか力

怒る!日本文化論

日本列島プチ改造論(文庫)

パオロ・マッツァリーノの日本史漫談

コドモダマシ(文庫)

13歳からの反社会学

続・反社会学講座(文庫)

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反社会学の不埒な研究報告