反社会学講座ブログ

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文科省未検定道徳教材『シン・手品師』

 ひとりぼっちで公園にいる寂しげな少年に、通りすがりの手品師C.モムーラ氏が話しかけました。
「キミ、元気を出しなさい」
 モムーラ氏がパチンと指を鳴らすと、少年の手のなかにキラキラ光る紙切れがあらわれました。
「なにこれ……パーティー券? わー、楽しそうだね。有名アーティストとかも来るの?」
「有名アーティストは、来ないかな」
「じゃあ、だれが来るの?」
「有名政治家の孫とか、学校法人理事とか」
「へぇ……。とにかく、ありがとう!」
「なにかカン違いしてるようだね。キミにあげるとはいってないよ」
 少年があらためてパーティー券を見ると、ねだん200まんえんと書いてありました。
「くれるんじゃないのかぁ……」
 少年はポケットから200まんえんを取り出して、モムーラ氏に渡しました。
「大金を使っちゃった。パパに報告しなきゃ」
「待ちなさい」
 モムーラ氏がまた指をパチンと鳴らすと、公園の池から泥人形が10体、這い上がってきました。
「報告の義務があるのは、20まんえん以上の場合だけだ。キミも含めて11人で、18まん1818えんずつ払ったことにすれば、報告の義務はなくなるよ」
「すごいよ、おじさん! ねえ、この手品のやりかたを詳しく説明してよ!」
「ああ、いいとも。だけど、いまおじさんはトギ戦の応援で忙しいんだ。トギ戦が終わったら、詳しく説明するよ」
「わかった。待ってる! 約束だよ!」

 それから一か月。少年は今日も公園で待っていますが、いまだにモムーラ氏は説明をしに来てくれません。

       *

 約束を守ることの大切さを、クラスのみんなで話しあってみましょう。
 C.モムーラ氏の「C」は何の略なのか、クラスのみんなで大喜利をやって盛り上がりましょう。
[ 2017/08/02 18:07 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)

RPGの思い出

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。何十時間もゲームを続ける根気がないのでRPGはやりません。何百回も戦闘を繰り返しレベルを上げる作業は時間の無駄としか思えません。そんなわけでドラクエもファイナルファンタジーもやったことがないのですが、記憶がかすれるくらいむかしに、RPGをやったことはあります。パソコンのアップルⅡで『ウルティマ3』をクリアしました。ええ、その当時はまだ若いから根気があったんです。
 その当時『バーズテイル』というRPGがありまして、アップル版はウルティマで育てたキャラをそのまま使えると聞きました。他のメーカーの有名ゲームのセーブデータを読み込んで、鍛え上げたキャラを使えてしまうって画期的でしょ。いまだったら著作権とかの絡みで実現できなさそうですが、当時はゆるかったんでしょうね。
 で、購入してやってみました。ウルティマ3のセーブデータが入ったフロッピーディスク(5インチですよ! 懐かしい!)が読み込まれ、ゲームがはじまると、ひとり見慣れないヤツがいます。スキンヘッドの男なんてウルティマのパーティーにはいなかったはずだけど……? バーズテイルにはクレリック(僧侶)がないので、モンクという職業に変換されたようなのですが、いざゲームをはじめると、こいつが素手で敵を次々に瞬殺していくではありませんか。
 どうやらこのゲームでのモンクは、少林寺の修行僧みたいなイメージらしいのです。ウルティマでは仲間を癒すくらいしか使いみちがなかったクレリックが、最強の殺戮マシーンへと転職したのですが、使えないヤツと決めつけてたので、ZUBIZUBAという超適当な名前をつけてしまったことが悔やまれました。
[ 2017/07/30 21:36 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)

丁寧な説明には価値がない

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。みなさんは、これまでだれかに、丁寧な説明をしてくれと求めたことがありますか。あるいは求められたことがありますか。私はたぶん一度もないと思います。
 松居さんは船越さんに、丁寧な説明を求めたでしょうか。ブログを拝見したかぎりでは、求めてないようです。ていうか、もしも丁寧な説明をされれば、すべてを許して水に流すのでしょうか? 到底そうは思えませんよね、いまのこじれ具合ですと。
 池上彰さんは、丁寧な説明をしてくれるから人気があるのでしょうか。そうじゃないでしょ。「わかりやすい」説明をしてるから、人気があるんです。
 テレビCMで予備校の英語の先生が、ほんの5秒くらいで英文法のキモを、これ以上ないってくらい明快かつ簡潔に教えてることに感心したかたも多いのでは。中学・高校の英語の先生のほうが、授業で時間をかけて丁寧に教えてます。でもその説明はかえってわかりにくかったりします。学校の英語の授業がよくわからなかった生徒が、予備校の授業を受けたら目からウロコが落ちた、なんてのは、むかしからけっこうあります。
 安倍総理はことあるごとに、国民のみなさんに丁寧な説明をするといってますが、国民は丁寧な説明なんて求めてないんですよ。なぜなら、丁寧な説明なんてものには、なんの価値もないからです。
 価値があるのは、わかりやすい説明です。客観的な根拠にもとづいていて、論理的に矛盾がなく、論点ずらしのような姑息なごまかしもない説明ならば、簡潔な説明だけでじゅうぶん納得できるんです。
 逆に、根拠もあいまいで矛盾だらけで論点がずれてたら、どんなに言葉を重ね丁寧に説明したところで、それは相手を煙に巻こうとしてるだけだから、疑念と不信が増すだけです。長々と説明すれば相手が根負けして、「もういい!」ということもあるけれど、それは相手を納得させたわけじゃなく、あきらめさせただけ。そんな卑怯な議論は、暴力で相手を黙らせるのと同じくらい低俗です。
 長々と説明したあと、相手から「ご丁寧な説明をありがとうございます」なんていわれたら、それは感謝の言葉でなく、皮肉なんですよ。「おまえの話はちっともわかんねえよ」って意味のね。
 丁寧な説明は主張の内容が事実かどうかをなにも保証しないんです。根拠と論理が明快ならば、むしろ説明はできるだけ簡潔なほうがいいんです。
[ 2017/07/21 21:08 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)

日本人はカホコを笑えないかもしれない(夏ドラマ評)

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。『会社苦いかしょっぱいか』に書きましたが、最初に「過保護」と呼ばれたのは、タモリさんくらいの世代の人たちです。彼らが大学を出て新入社員になったとき、呼んでもいないのに入社式に母親がついてくることが話題となり、過保護、甘ったれ、ママゴン息子などとからかわれたのです。
 この世代は老人になったいま、地域の子どもの見守り活動とかにもやたらと熱心です。自分が過保護に育てられ、自分の子どもも過保護に育て、過保護をあたりまえと考えているから、よその子も過保護に見守ったほうがいいと考えるのでしょう。
 そんな過保護世代が過保護に育てた娘、さらに過保護に育てられた孫娘が登場する『過保護のカホコ』は、五〇年以上続いてきた過保護の歴史的背景を的確に描きつつ、ドラマとしても続きが楽しみな傑作に仕上がってました。
 あの一族が醸し出す不気味な家族愛をブラックユーモアとして描いてやろうとほくそ笑む、遊川さんの顔が目に浮かびます。
 でもみなさんに、あの一族を笑う資格がありますか? 世界一安全な日本で、地域の子ども見守り活動なんてのをおおげさにやってる姿は、外国人の目には心配性の過保護に映りますが、みなさんは疑問を持つこともなくやってますよね? もうすでに日本のみなさんは、過保護に慣れきってしまってるんです。
 遊川作品のヒロインはクセが強いことが多いので、演じる女優にも抜きんでた演技力と表現力が求められます。そのなかでも私の印象に残ってるベスト2が、『女王の教室』の天海祐希さんと『曲げられない女』の菅野美穂さん。そこに今回の高畑充希さんも加わるんじゃないかと期待が持てます。
 今回も、こんな女と絶対関わり合いたくないよと腹立つキャラなのですが、それをおもしろがって見ていられるように演じちゃう高畑さんは、やっぱり上手いんです。芸達者ですよ。
 遊川作品に馴染みのない視聴者は初回を見て、これからロマンスが発展することを期待するかもしれませんけど、鬼の遊川は必ずや、甘く平和な恋物語を望む視聴者をどん引きさせるような展開を用意しているはずなので、それも楽しみです。

 もう一本、予想以上の出来だったのが、『警視庁いきもの係』。おふざけのキワモノだろうと冷やかし半分で見たら、謎解きの経緯とかひねりかたとかが、ちゃんとミステリになってます。渡部篤郎さんはなんであんな芝居なの? と不思議だったけど、初回のラストでその妙なリアクションの意味があきらかにされるのもミステリっぽい仕掛け。よくできてると思ったら、原作の小説があるんですね。
 橋本環奈さんが口とんがらかしてガサガサの声で食ってかかる姿は妙におもしろい。いつか椿鬼奴さんと母娘役でガサガサの共演をしてほしい。

 まだはじまってないけど、『わにとかげぎす』はどうなんだろ。一応見るつもりです。原作のマンガがとても好きだったんで。ちなみに『ヒミズ』と『ヒメアノール』は好きじゃないです。

 そうそう、ところで春ドラマの『みをつくし料理帖』は、久々に傑作と呼べる時代劇でした。ケチつけるところがほとんどないし。回を重ねるごとに黒木華さんが役をどんどん自分のものにしていきます。もうあの役は黒木さん以外考えられません。続編作らないとはいわせませんよ、NHKさん。
 まさに関西風の澄んだおダシのようにあっさりしつつも味わい深い。あれをもの足りないという人は、親子愛の特盛り・友情の絆のつゆだく、みたいな感動押し売りドラマの見過ぎで感受性がマヒしてるんですよ。気をつけてくださいね。
[ 2017/07/15 22:20 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)

経済学者の説明への違和感

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。
 獣医学部の開設は規制緩和だから正しいのだ、問題はない、とする経済学者たちの主張には、ものすごい違和感をおぼえます。彼らは論点をすり替えることで問題を無効化しようとしています。
 どうやら彼らは、規制緩和の味方をする自分たちが進歩的な学者で、自分らを批判してる連中こそが既得権にしがみつく守旧派の悪者だと印象づけたいようです。まさにそこがヘンなんです。だって、獣医学部を作るな、なんて批判をしてる人はいないんですから。いや、獣医のなかにはいるのかもしれんけど、一般の人たちにはいませんよ。そもそも加計問題に批判的な一般人の大半は、規制緩和には賛成だと思いますよ。私も規制緩和には大賛成です。
 じゃあ、なにを問題としてるのかというと、規制緩和を求められている数多くの候補のなかで、なぜ獣医学部が最優先で選ばれたのか。その理由を聞きたいのに説明してくれないから、みんなムカついてるんです。説明がないところに、理事長と総理がおともだちだといわれたら、ああそういうことですか、と普通のオトナなら100人中100人が想像しますよ。
 なのに経済学者たちは、優先順位の説明をすっとばして、選考過程に問題はなかった、と、誰も求めてない説明ばかりしています。
 これまでも規制緩和の重要性を説く経済学者は星の数ほどいました。そのなかに、日本経済回復のためには獣医学部の規制緩和が効果的だから、何よりも優先すべきだ、なんて主張してた経済学者がどれだけいました? 私はそんな意見、聞いたことがありません。
 一般生活者のシロウト考えでいえば、獣医学部の規制撤廃なんかより、たとえば、農水省の天下り団体が独占してるバターの輸入規制をいますぐにでも撤廃してくれれば、何年も続いてるバター不足と価格高騰という身近な問題を即、解決できるんじゃない? って考えちゃいます。バター不足で苦労してるパン屋もたくさんあると聞きます。ああ、だからパン屋は和菓子屋に商売替えしろって文科省は勧めてるのか。
 いま私はわかりやすい例としてバターをあげましたけど、べつのものでもいいですよ。他に求められている数ある規制緩和よりも、獣医学部の開設をなぜに最優先しなきゃいけないのか。政府を擁護してる経済学者のみなさん、シロウトにも納得のいくよう、説明していただけませんかね?
[ 2017/07/11 21:13 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)
プロフィール

Author:パオロ・マッツァリーノ
イタリア生まれの日本文化史研究家、戯作者。公式プロフィールにはイタリアン大学日本文化研究科卒とあるが、大学自体の存在が未確認。父は九州男児で国際スパイ(もしくは某ハンバーガーチェーンの店舗清掃員)、母はナポリの花売り娘、弟はフィレンツェ在住の家具職人のはずだが、本人はイタリア語で話しかけられるとなぜか聞こえないふりをするらしい。ジャズと立ち食いそばが好き。

パオロの著作
会社苦いかしょっぱいか

みんなの道徳解体新書

日本人のための怒りかた講座

エラい人にはウソがある

昔はよかった病

日本文化史

偽善のすすめ

13歳からの反社会学(文庫)

ザ・世のなか力

怒る!日本文化論

日本列島プチ改造論(文庫)

パオロ・マッツァリーノの日本史漫談

コドモダマシ(文庫)

13歳からの反社会学

続・反社会学講座(文庫)

日本列島プチ改造論

コドモダマシ

反社会学講座(文庫)

つっこみ力

反社会学の不埒な研究報告