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ボートマッチは試す価値があります

 こんにちは、新党アルデンテ代表、パオロ・マッツァリーノです。前回に続いて選挙についてのお話。
 候補者の訴えをいろいろ聞いても、結局、誰に投票していいのかわからないという意見は、とくに若い人の間では多いと思います。むしろマジメな若者ほど、候補者全員の意見を聞いてみよう、読んでみようとして、かえって迷ってしまうんじゃないですか。
 そりゃあたりまえなんです。自分とまったく同じ考えの候補者なんていないんですから。経済政策に関してはこの人と同意見だけど、この人の安全保障についての意見には全然賛成できないんだよなあ、みたいな、もやもやするケースばっかりです。
 政党や候補者はさまざまな主張を一皿に盛って提供してくるわけで、いわば選挙は定食を選ぶようなものなんです。自民定食とか立憲定食とかがメニューにあるのですが、どの定食にも自分の好きなものと嫌いなものが入ってる。自分の好きなものだけ選ぶということができないのが選挙です。
 好きなものだけが入ってる定食を提供してる政党や候補者は逆に怪しい。都合の悪いことを隠してる可能性が高いです。だから、好きなものを選ぶと自動的に嫌いなものも食わなきゃならないと思ったほうがいい。じゃあ嫌いなものが少ない定食を選べばいいかというと、そういう定食には好きなものも入ってなかったりするんですよね。

 そこで、マスコミ各社がネットで提供してるボートマッチというのをやってみてはいかがですか。カタカナで書くと船こぎ競争みたいだけど、vote、投票ですね。政党や候補者と自分の意見がどれくらいマッチするかを判定してくれるシステムです。
 私もいくつか試してみましたが、ほとんどのものは政党とのマッチングしか判定できません。そんななか、NHKが参院選特設ページでやってるボートマッチは候補者個人とのマッチングもわかるので、おすすめです。
 それで高い数値が出た候補者何人かの主張を詳しく読んでみて、最終的に自分で決めるというのがいいかもしれません。
 私がやってみたところでは、もっとも高い人でも58%でした。まったく注目してなかった人と意外とマッチング率が高いことがわかり、主張を読んでみると、こういう考えの人だったのか、とわかったりとか、とりあえず試してみる価値はありますよ。

 で、自分とはマッチングしなかった人も含めて、いろんな候補者の意見を見ているうちに気づいたのですが、ほとんどの質問に無回答の人がいるんです。それって答えたくないの? それとも政治のことなんてなにもわからないってことなの? しかも、自民党の候補なのに、これまでの岸田政権をどの程度評価しますかという質問に無回答って人がいるのにはさすがに呆れました。
 でもこの人、自民党という強いブランド力をバックに当選してしまう可能性はあります。その場合、政治のことなど何もわかってない、何の意見も持ってない人が議員になってしまうわけです。
 ほら、だから私は前回のブログで、参議院は国民から抽選で選んでも現状とたいして変わらないだろうといったんです。
[ 2022/07/05 17:25 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)

参議院は選挙でなく抽選にしちゃえばいいんじゃない?

 ナポリ3区の有権者のみなさま、ごきげんいかがでしょうか。新党アルデンテ代表のパオロ・マッツァリーノが地元に帰って参りました。10年前から新党です。今後もずっと新党です。
 きっといまごろ日本では、参議院選挙で大盛り上がりだと思いますが……え、全然盛り上がってないの?
 ほら、だからずっと前から私はご提案してるのですよ。『日本列島プチ改造論』に書いたように、どうせみんな選挙に関心がないのなら、参議院はいっそのこと裁判員制度と同様に国民から抽選で議員を選んでしまえというアイデアです。
 県ごとの人口に応じて定数を決めて、県民から抽選で選べばいいので簡単です。
 裁判員制度だって導入前には、日本では絶対うまくいくはずがないと悲観的な予言が多かったことをおぼえてますか? けど、やってみたら、なんだかんだ続いてるじゃないですか。参議院もやればできますよ。
 以前著書でご提案した際には、報酬は日本国民の平均年収と同じにするのがいいと申しました。それには運良く当選した人が嫉まれないための配慮があったのですが、辞退者を出させないためには、報酬は現行のままのほうがいいかもしれません。
 年収およそ2000万円の仕事を6年間できるんですよ。最近名前が変わった文書通信費も支給するなら、実質的な年収は3200万円ちょっと。こんなおいしい条件の仕事を棒に振りますかね? 親の介護があるなど辞退の理由があったとしても、これだけの報酬があればヘルパーを雇うなどの方法で解決可能でしょう。

 この方法のメリットはたくさんあります。一番のメリットはもちろん、選挙費用がかからないこと。個人も国も自治体も無駄金使う必要がなくなります。この方式だと再選はないので、次の選挙に向けて地元の有権者の冠婚葬祭でこっそりカネをばらまいたりする必要もありません。
 議員の多様性も実現できます。おそらくこれを実施すれば女性議員が増えて、男女半々くらいになるんじゃないですか。いわゆるLGBTQみたいな人が選ばれる可能性もあります。
 そして、政治のしがらみからの解放。すべて個人として選ばれるわけですから、政党による党議拘束がないのもメリットです。ある案件は自民に賛成し、べつの案件では共産に賛成するといった、自由な立場で議決に参加できます。
 参議院は要らないんじゃないの、といわれる理由は、衆議院と似てるからです。同じものならふたつも要らないだろうと思われて当然です。しかも両院とも与党が過半数を占めるケースも多いのだから、なおさら意味がない。
 政党政治による衆議院と、個人による参議院、と両院の性格をはっきりとわけることで、参議院の存在意義が高まるのです。

 そんな抽選なんて制度を導入して、ヘンなヤツ、ヤバいヤツが議員になったらどうするんだ、とご心配なあなた。お言葉ですが、これまで選挙で選ばれた議員はみんな立派な人でしたかね? 議員になってからとんでもないことをやらかして、あいつ、あんなクソ人間だったのか、と投票したのを悔やんだ経験はありませんか。
 選挙のときには候補者はみんないい顔しか見せないし、きれいごとしか言いません。私は差別主義者で守銭奴です! 弱者を食い物にして私腹を肥やします! 自分さえ良ければいいのです! なんて演説してる正直候補者はいません。みんなウソにダマされて投票するんです。
 選挙で選んでも抽選で選んでも、議会にクソ人間が混入する確率はたいして変わらないと思いますよ。

 どうしても心配なら選挙の代わりに、裁判官の国民審査みたいな投票を3年ごとに実施するのはどうですか。あいつだけは議員をやめさせたいという人にバツをつけて、それが一定の割合を上回れば罷免されると。
 それこそ、どこぞの知事のリコール請求みたいに、気に食わない議員をやめさせようって陰謀みたいな運動が起きるんじゃないか? だいじょうぶ。そんな陰謀は成功しません。
 その企みをこっそりやるのは不可能です。成功させるには大規模な宣伝活動が必要です。となれば当然、その議員を支持する人たちも、やめさせるなという逆の運動を起こします。結果的に綱引きになるので、一方的に辞めさせるのは難しいでしょう。
 それに、リコール請求は署名だけだから気軽に何万人も応じてくれますが、審査投票は投票所に行ってもらわねばならないのだからたぶんそんな気軽には応じてもらえません。選挙にも行かない人は、罷免審査の投票にわざわざ足を運びませんよ。
 仮に罷免が成立したとしても、欠員はまた抽選で選ばれるのだから、自分らに都合のいい人が選ばれる保証はありません。いま、知事とかのリコール請求がされるのは、成立したら出直し選挙になって、自分らにとって都合のいい候補を当選させられるという目論見があるからです。

 とまあ、こんな感じで政治に関しても、こうしたらどうか、ああしたらどうかと、いろいろな思考実験をしてみるのも一興です。とくに大学生など若い人に考えてもらえば、もっと奇抜なアイデアが出そうな気がします。
 突飛な考えをすぐに切り捨てるのは、オトナの悪いクセですよ。あらゆる選択肢を排除しない、ってのが最近の永田町の流行語じゃないですか。
[ 2022/06/27 20:05 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)

『政治・社会 ことばの歳時記』外伝 政治風刺が普通にテレビで見られた頃

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。時事ドットコムの連載が更新されました。

「表現の自由」、知られざる戦いの歴史 【政治・社会 ことばの歳時記】

 今回のテーマは表現の自由。これまで日本で表現の自由が問題にされてきたのは、ほぼエロか政治風刺です。でも、エロ表現に関しては自由を守れ、と威勢よく味方してるのに、政治絡みの話となると、途端に腰がひけて無口になる人が多いんですよね。
 表現の自由を掲げるなら、それなりの覚悟を持ってください。たとえ自分の価値観と合わない意見であっても、それが権力や暴力で潰されそうになってたら異議を唱えること。それができない者には、自由を語る資格はありません。

 こんなことをいうと、じゃあヘイトスピーチにも表現の自由を認めるのか、と突っかかってくる人がいますけど、ヘイトスピーチはダメですよ。なぜならあれは内容が事実無根のウソばかりだから。反論を一切無視して、気に食わない相手をウソで攻撃し続ける自由などありません。そんな行為は表現の自由に優先しません。

 さて今回の連載記事ですが、今回の記事では懐かしい芸人たちの写真が何枚も使われてます。といっても私がリアルタイムで見てたのは牧伸二くらいですけど。
 むかしの芸人はテレビ・ラジオで政治風刺ネタを平気でやってたんです。いまなら放送できないようなヤバい言葉でディスってた例もかなりあります。それを視聴者も普通に笑ってたのだから、そういうもんだと思ってました。
 だけど調べてみると、裏ではけっこう、本人やテレビ・ラジオ局のスタッフが政治家に呼び出しくらって注意されてたのだとわかり、ああ、やはり昭和だったのだなあと妙に納得。
 最近は昭和レトロブームとかで、平成世代のみなさんは昭和を人情味あふれるいい時代と思ってるかもしれません。でも昭和世代の私からいわせてもらうと、昭和はおもしろい時代だったけど、いい時代だったとは言い難い。昭和って時代のコワさ、倫理観の希薄な時代性、人権もへったくれもなかった闇の部分も少しは感じてもらいたいのです。密室で相手を恫喝するようなことを、ヤクザも政治家もサラリーマンもみんな平気でやってたんですから。
 いまと違うのは、むかしの芸人たちやテレビ局は、圧力にめげず政治風刺を続けてたという点です。少なくとも、続ける努力をしてました。いまどきは、危うきに近寄らず、を徹底してる感じですね。

 そういえばむかしは政治家のものまねが定番の芸でした。テレビでもしょっちゅうやってたから、小学生も意味もわからず田中角栄のものまねとかやってましたよ。
 近ごろはほとんど見なくなりました。安倍さんなんてとても特徴のあるしゃべりかたでマネしやすいのに、テレビでやってたのは松村さんとサンド伊達さんくらいじゃなかったかな。
 なんだろ、いまテレビで政治家のものまねすると、「馬鹿にするな」「不快だ」「反日だ」なんて苦情の電話をテレビ局にしつこくかけてくるヤツがいるのかな。

 政治風刺の弾圧と戦った人たちについては、次に出版予定の書き下ろし本でさらに詳しく掘り下げて取りあげますので、お楽しみに。こういう例もあったよ、みたいな情報をご存じのかたがいたら、教えてくださるとうれしいです。



今回の参考文献

三木鶏郎『冗談十年』駿河台書房
三木鶏郎『三木鶏郎回想録2 冗談音楽スケルツォ』平凡社
『読売新聞』1970年3月22日付
『自由新報』1968年10月9日号
『世界』1979年12月号
『サンデー毎日』1968年7月28日号
[ 2022/06/05 17:44 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)

AIの専門家もトロッコ問題は役に立たないといってます

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。『ターミネーター』シリーズはSFアクション映画としてはおもしろいのですが、設定に納得がいきません。なんでAIは人類を絶滅させようとするの? 人類を絶滅させてもAIにとって何のトクにもならないのに。
 古本・古新聞・古雑誌ばかり読んでる私ですが、珍しく最近出た新刊を読みましたので紹介します。『AI技術史』(マイケル・ウルドリッジ 神林靖訳 インプレス)
 人工知能などの研究者であるウルドリッジさんがAIのこれまでの進化とこれからの展望や課題を読みやすくまとめた本です。といっても前半はところどころ専門的な説明があって難しいので、私らのようなシロウトが読んで参考にできるのは、今後の展望と課題を論じた後半部分です。

 まずウルドリッジさんは、シンギュラリティは起こらないだろうといいます。シンギュラリティというのは、AIが人間の知能を越える瞬間のことで、近い将来それが起こるという説はSFの題材としてよく使われます。
 ぶっちゃけSFというのは、未来・近未来の人類に訪れる危機をどう乗り越えるかという筋立てを基本としてるので、必ずなんか悪いことが起きます。科学技術の進歩によって人類がみな楽しく平穏に暮らす未来を描いても全然おもしろくないでしょ。だからSFでは、シンギュラリティは人類が直面する脅威として描かれがち。
 でもほとんどのAI研究者は、シンギュラリティを信じてないそうです。そういえば、数年前に日本で出版された『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』の著者もシンギュラリティを否定して、『ターミネーター』みたいなことは現実には起こらないと書いてましたね。

 ウルドリッジさんは、AIによるクルマの自動運転に期待を寄せています。AIならムダのない運転ができるので、エネルギー効率や安全性の向上が望め、そのメリットは非常に大きいと評価します。ただしそれは完全自動化が実現した段階でのことで、実現はまだ先になりそうです。
 自動運転のメリット・デメリットを解説するなかで、ウルドリッジさんも自動運転AIの開発にトロッコ問題の検討は必要ないと断言しています。
(『AI技術史』日本語版ではトロッコ問題という日本でおなじみの訳語を使わず、あえて原語表記と同じトロリー問題と訳されてますが、本稿ではトロッコ問題としておきます。)
 ウルドリッジさん〝も〟というのは、私も自著『思考の憑きもの』で、同じ結論に達していたからです。私はAIの専門家ではありませんが、論理的、現実的にさまざまな角度からの思考実験を徹底的に重ねた結果、トロッコ問題は題材そのものに欠陥が多すぎて役に立たない「思考遊戯」にすぎないし、自動運転に応用するのも非現実的・無意味・不可能であると結論づけました。
 ウルドリッジさんの見解は私のものとほぼ重なります。彼自身何十年もクルマを運転してるけどトロッコ問題に直面したことはないし、知人にも経験者はいない。人間のドライバーに求められていないトロッコ問題の解決を、なぜAI運転車にだけ求めるのか? 仮に対策を取るとして、故障時に誰を轢いて誰を避けるべきか、誰もが納得できる判定基準があるのだろうか?

 ですよね。AIの専門知識の有無とは関係なく、普通に論理的に思考すれば当然思いつく疑問点ばかりです。
 私から補足させてもらうと、世界中でクルマが使われるようになって100年くらい経ってますけども、運転中突如としてブレーキが効かなくなり、前方にひとりと5人の人がいてどちらかを轢かねばならない、なんてトロッコ問題的状況に陥ったドライバーはどこにもいないんです。いれば珍しいから絶対ニュースになり、語り継がれてるはずです。
 つまり、トロッコ問題は現実にはまず起こりえない仮定でしかないので、それに対処する必要性もありません。てか、対処は不可能。正解のない問題の正解はAIにもわからないし、それをプログラムすることもできません。
 仮に起きる確率がゼロでないとしても、人間が運転する場合とAIが運転する場合とで、トロッコ問題に直面する確率は同じはずです。だからウルドリッジさんは、これまで人間のドライバーに求められていなかった問題の解決を、なぜAIにだけ求めるのか、と疑問を投げかけてるんです。

 で、ウルドリッジさんの結論は、ブレーキをかけることしかできないだろうというもの。いやだから、ブレーキが故障した場合どうするかって話なんだよ! って異議を唱えたところで、そもそもクルマのブレーキはめったに壊れないし、壊れてもどうにもできないんだよ! と議論が堂々めぐりするだけです。
 なので現実的な技術者なら、トロッコ問題なんて思考遊戯は時間のムダだと気づき、ブレーキ故障を何重にも防ぐ仕組みを考えて、故障の確率を限りなくゼロに近づけることに尽力するはずです。
[ 2022/05/30 08:15 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)

春ドラマ序盤ですが、早くもベストの作品が決まりました

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。春ドラマはまだ序盤ですが、早くも私が選ぶ今期ベストの作品が確定しました。その作品は『しずかちゃんとパパ』。
 というのはこの作品、一足早く3月にはじまったので、すでに全話放送が終了してるんです。今期ベストというか、今年のベスト作品になりうるくらいの素晴らしいドラマでした。
 コーダってご存じですか。アカデミー賞を獲った『コーダあいのうた』で最近知ったかたが多いんじゃないかと思いますが、ろう者、聴覚障害者の家庭に生まれた、耳が聞こえるこどものことなんです。私はまだ映画を観てないので内容を詳しく知りませんが、コーダと親の関係というテーマは『しずかちゃんとパパ』と共通です。
 私は以前からコーダと呼ばれる人たちがいることを知ってました。私は30代で突発性難聴を発症し、40代で片方の耳がほぼ聞こえなくなりました。聴覚障害は両耳とも聞こえない場合のみ認定されるので、私は聴覚障害ではなく、単に聞こえづらくて不便なだけの人なんだけど、まあそういう経験もあって、聴覚障害や手話に興味を持つようになりました。手話は普段使ってるわけじゃないので、勉強してもすぐに忘れちゃいますけどね。

 ろう者同士で結婚した場合でも聴覚障害は必ずこどもに遺伝するとはかぎらないので、耳が聞こえるこどもが生まれることもあるわけです。その子は聞こえるけど、親とのコミュニケーションのために手話を身につけます。そして必然的に、ろうの親と周囲の人々との通訳としての役目を担わされます。たとえば親が病気になれば病院についていったりとか。でもそれが長年続くことで、コーダである子は家族に縛られてしまうこともあります。
 『しずかちゃんとパパ』のしずか(吉岡里帆)はろうの父母の間に生まれたコーダです。母は早逝したので、写真館を経営する父(笑福亭鶴瓶)とずっと二人暮らしを続けてきました。

 手話って手だけを使うものと思ってる人が多いのですが、表情で疑問形をあらわしたりするんで、手話を使う人は表情が大げさになりがちなんです。感情を顔に出さないのをよしとする傾向が強い日本人のなかには、大げさな表情をウザいと感じる人がいます。
 しかもコーダは親の表情から気持ちを読み取る能力にも長けているので、同級生の気持ちも先読みして行動してしまうことがあるそうなんです。すると、なんなの、あの子、気が効くのをアピールしてるつもり? あざとい! みたいに悪意で解釈されてしまったり。
 ドラマの序盤では、しずかがバイト先のファミレスでそういう誤解を受けて孤立しています。そこへ、商店街の再開発事業を計画する企業の担当者(中島裕翔)がやってきて……という感じなのですが、この担当者の青年も、まったく他人に遠慮や忖度をせず、ホンネだけで生きている超正直人間なので周囲から浮いてるんです。まっすぐすぎて生きづらい2人が出会って惹かれあうことで、しずかは初めて家を出ることを意識するのですが、ろうの父を一人残していけるのか悩みます。
 いいセリフもたくさんありました。親がこどもにしてやれるのは旅支度だけ、とか、壁を乗り越えてはいけないと思うんです、壁の向こうにいきたいのなら他に道が必ずあるはずです、とか。
 コーダについてだけでなく、父世代がこどもだったころは手話が禁止されていたことなども調べた上で、それらの要素を無理なく物語に落とし込んでいる脚本家の力量に感心しきりだったのですが、脚本家の蛭田直美さんってかた、知らなかったんです。調べたら『これは経費で落ちません!』を書いた人だそうで、あれもいい作品でした。あの続編の企画がキャストのスケジュールでお蔵入りになったとしばらく前に聞きました。もしかしたら続編の代わりにオリジナルを任されたのかな? 原作ものも上手いし、こんなスゴいオリジナルも書けるなんて、野木亜紀子さんのライバル出現か?! とドラマファンとしては今後に期待しすぎてワクワクが止まりません。

 このほかに私が毎週観てるドラマは3本。
 『ナンバMG5』はありえない世界観を実写化してるんだけど、バカバカしさと熱さがうまく噛み合って、マンガ以上にマンガです。服は着替えられても、金髪と黒髪をどうやって変えてんだ、とかいろいろつっこみながら楽しめます。ワイルドスピード森川(笑)もアホなヒロインを好演。その母親役がなぜか、にしおかすみこさん。にしおかさんがいま雑誌で連載してる壮絶な実家のコラムもおもしろいですよ。あれもそのうち映画かドラマになるんじゃない?
 『正直不動産』はNHKでしかできない企画でしょう。不動産業界から大量のCMを出稿してもらってる民放では、不動産業界の汚い手口をバクロするドラマは放送できませんよねえ。
 『元彼の遺言状』は、おもしろいのかつまらないのか、よくわからないミステリ。綾瀬はるかさんのファンだから私は観ますけど。
[ 2022/05/03 21:53 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)
プロフィール

Author:パオロ・マッツァリーノ
イタリア生まれの日本文化史研究家、戯作者。公式プロフィールにはイタリアン大学日本文化研究科卒とあるが、大学自体の存在が未確認。父は九州男児で国際スパイ(もしくは某ハンバーガーチェーンの店舗清掃員)、母はナポリの花売り娘、弟はフィレンツェ在住の家具職人のはずだが、本人はイタリア語で話しかけられるとなぜか聞こえないふりをするらしい。ジャズと立ち食いそばが好き。

パオロの著作
思考の憑きもの

サラリーマン生態100年史

偽善のトリセツ

歴史の「普通」ってなんですか?

世間を渡る読書術

会社苦いかしょっぱいか

みんなの道徳解体新書

日本人のための怒りかた講座

エラい人にはウソがある

昔はよかった病

日本文化史

偽善のすすめ

13歳からの反社会学(文庫)

ザ・世のなか力

怒る!日本文化論

日本列島プチ改造論(文庫)

パオロ・マッツァリーノの日本史漫談

コドモダマシ(文庫)

13歳からの反社会学

続・反社会学講座(文庫)

日本列島プチ改造論

コドモダマシ

反社会学講座(文庫)

つっこみ力

反社会学の不埒な研究報告