こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。
ちかごろ、しつけの悪いこどもや犬を、「やんちゃ」という言葉で美化・正当化する人たちがいるのが気になります。
「ウチの子、やんちゃなんですぅ」と嬉しそうにいう親や飼い主。それがいいことだと思ってるの? 不穏な空気を感じます。「元気」ではなく「やんちゃ」とわざわざいうのはそこに、騒いだり暴れたりして他人に迷惑をかけているというニュアンスが含まれてるからです。
こどもが被害者になることにはやたら神経質になっているクセに、こどもや犬が騒いで周囲に迷惑をかけたり暴れたりして加害者になることには無頓着な親たち。自分のしつけがなってないのを、「やんちゃ」というかわいらしい響きの言葉でごまかしてるだけ。ぶしつけなガキや犬など、ちっともかわいくない。
私はこどもや若者の権利や自由を擁護しますけど、しつけにはかなりキビシいほうです。体罰は絶対に否定しますがしつけは絶対必要です。図書館や電車などで、よそのこどもやその親に、何度も注意してるくらいです。
人間のこどもと犬のしつけの基本は同じです。叩いたり殴ったりせず、根気よく何度も教え込むしかありません。犬も幼児も自分で社会性を身につけることはできないからです。親や飼い主が教えなければ、ダメ犬、ダメ人間になります。道徳の授業とかでは代替できません。
犬を飼ったら、なにはなくとも、「おすわり」と「待て」ができるようにしつけるのが基本なのに、それすら教えない飼い主が多いんです。飼い主が買い物するあいだ、スーパーやお店の前につながれてる犬がいますけど、しつけのいい犬は、おすわりでおとなしく待ってられるんです。バカな犬は飼い主がいないあいだ、ずうっと吠えてます。しつけのできないバカな飼い主に買われてる犬は不幸です。迷惑を被る周囲の人たちも不幸にします。しあわせなのは飼い主だけ。
人間のこどもだと、レストランや電車や病院の待合室などで騒いだり走ったりするのが問題になります。赤ん坊が泣くのはしかたないとしても、物心ついた幼児が公共の場で騒いだら、叱るのが親の義務です。
そういうと必ず返ってくる言葉が、「ウチの子、何度いっても聞かないんですぅ」。
その言葉、額面通りには受け取れません。そういう親って、ホントに叱ってるのかな。2、3回叱っただけであきらめてるんじゃないですか。
ずっとおとなしくさせろ、なんてムリをいうつもりはないですが、限度を越して騒いだら、親はそのたびに注意しなければいけません。それってそんなにむずかしいことでしょうか。
以前、雑誌のコラムに書いたのですが、数年前に私が目撃した例をお話しします。
平日のランチタイムにファミレスに入ったときのこと。通された席の近くに、こどもづれで食事をしている3人のヤンママグループがいました。
うわ、うるさくなったらイヤだなあ、と警戒したのですが、どうせ食べたらすぐに出るつもりだったので、少しのあいだガマンしようと決めました。
しばらくすると案の定、こどもたちがキャーキャー騒ぎ出しました。
するとヤンママのひとりが「うるさい。」ビシッとひとこと、こどもたちを叱りました。不必要に怒鳴ったりしないけど、意志を感じさせる、小気味いい叱りかたでした。
こどもたちは声を小さくしました。ヤンママたちもおしゃべりを続けます。しばらく静かでしたが、こどもはすぐにまた調子に乗ります。今度はこどもたちが椅子の上に立ち上がりました。するとまたさっきのヤンママ、「座れ。」ビシッと一喝。こどもたちは座り、ママたちはまたおしゃべりに興じます。
そのヤンママはヒステリックになることもなく、ねちねちあとをひく叱りかたでもなく、こどもたちが限度を越すたびにビシッ、ビシッと叱るんです。
感心しましたね。わざとゆっくり食事をして、しばらく横目で観察してました。いかにも「やんちゃ」そうなママさんが、立派にこどもをしつけてるじゃないですか。いやあ、第一印象で偏見を持って悪かった、あなたは素晴らしい母親です、マザーオブザイヤーに認定します、と心の中で表彰しつつ、店を出たのでした。
[ 2015/03/15 22:38 ]
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