こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。今月もWeb春秋の連載『
会社苦いかしょっぱいか』が更新されました。
第9回は年末という時期にぴったりな、宴会芸の近現代史がテーマです。
1970年代の宴会のオゲレツぶりは、セクハラなんてレベルを軽く凌駕してました。だからずっといってるでしょ、日本人の道徳心はむかしよりいまのほうがずっと強まっているのだと。それこそが、否定しようのない歴史の真実。
一般人でも乱れてたんだから、お笑い芸人なんてもっと過激です。
75年の『週刊現代』には、先代の柳家小さん一門が毎年恒例にしていた忘年会の様子をレポートしていますが、記事のタイトルで「警視庁には見せられない」とことわってるほど。
以前は中華料理屋でやってたのですが、あまりの下品さにウエイトレスが耐えられず、店から断られたので小さんの家でやるようになったのだとか。それもそのはず、一門の落語家たちが次々に披露する宴会芸は、すべて基本フルチン。部屋の灯りが消えたかと思うと、全裸でケツに火のついたローソクを挟んだ前座が「ホ、ホ、ホータル来い」と歌いながら登場したり、先代の江戸家猫八が「粗チン大会を行う」と宣言してフルチンになると、あまりの小ささにだれもかなう者がいなかったり。
同じく『週刊現代』84年の記事で赤塚不二夫さんが語るところでは、タモリさんは全裸オットセイという芸を、雪が積もった軽井沢の別荘の庭でやっていたそうです。
ちかごろのお笑いは裸のヤツばかりで芸が無い、とか批判するかたがいますけど、お笑いはむかしから、裸が基本。裸にはじまり、裸に終わるのです。