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都議会議員候補の選挙公報で目立つフレーズ

 ナポリ3区の有権者のみなさまこんにちは。新党アルデンテ代表、パオロ・マッツァリーノでございます。
 これまでも選挙のたびに勝手にマニフェストを発表したりしてきましたけど、今回は趣向を変えまして、東京都議選候補者の選挙公報を分析してみました。http://www.h29togisen.metro.tokyo.jp/election/publication.html
 といっても全部読むのは大変。23区だけにかぎりまして、それぞれの候補がいちばん大きな文字で訴えているフレーズ、ワードは何なのか。その一点のみに注目してみました。有権者にもっとも強く訴えたいことは、いちばん大きな文字で書くはずですから。もちろん自分の名前以外で、ですよ(なお、フレーズ中の「!」の有無は考慮しません)

 まあなんといっても今回の都議選の目玉といったら、やはりこれ。ダントツで多かったのは、
「都民ファーストの会公認」30人
 是が非でも当選したい気持ちはわかるけど、政策よりも都民ファースト公認だよ、ってのを一番のウリにするのはどうなのよ。
「東京を世界一(世界で一番)に」4人
 世界一って、小学生が考えたみたいなキャッチフレーズですが、こちらは都民ファースト最大のライバルである自民の候補が使ってます。「ぼくは都民ファースト公認だぞー!」「ぼくなんか世界一だもんねー!」やれやれ。

「9条」4人
 これは共産の候補です。国政ならともかく、都政で憲法を前面に出すのはどうなんでしょう。ただし、共産の候補は具体的な政策をデカく書く傾向が強く、訴えのわかりやすさは評価します。「豊洲」3人 「築地」3人 これなんかもそう。支持する・しないがはっきりわかれてしまうので、リスクもともないます。

 党派を越えて多用されるのは「改革」17人。本心では現状維持を望んでいても、選挙では改革を訴えないとね。でも最近は保守を公言する人が増えたんだから、「私は既得権を死守し、改革の芽を摘みます!」と掲げる正直な候補がいてもおかしくないんですけど、さすがにまだいません。

「安全・安心」5人
 でました。中身のないおまじないワードナンバーワン。なんとかのひとつおぼえで、安全・安心と呪文を唱えていれば厄払いができると信じてる人たち。

「福祉」6人
「子育て」5人
「介護」3人
 このへんはむかしから定番の主張なので、むしろ少ないくらいにも感じます。

「都政に正論」2人
 重大なカン違いをしてますね。「ぼくイケメン」と自称する男がいたら、おまえがイケメンかどうかを決めるのはおまえでなく、他の人たちだよ、といわれるでしょう。
 それと同様に、正論かどうかを判断するのは、それを聞いた人たちです。自分で自分の意見を正論だと主張するのは、最初から、オレは絶対に正しく、異論や反論はすべてまちがいだと宣言してるわけで、知的な態度とはいえません。

 その他の傾向としては、現職であれば、過去の実績をウリにするのが無難なやりかた。あとは、地元生まれ、地元育ちであることを訴える人も目立ちます。全体的には、抽象的なフレーズを使う人が多いんですけどね。
 最後に、少数の個性派フレーズの数々を。
「憲法を瞳のように大切に」
「世田谷大好き♡(ハートマーク)
「つぶせ共謀罪 安倍を監獄へ 小池知事倒そう」
「NHKから国民を守る党」

 いかがでしたか?(←まとめサイトとかでいちばんよく見るフレーズ)
 よくわからんものから、ちょっとアブナいものまで、候補者の主張はさまざまですね。みなさんもぜひ、選挙公報に目を通してみてください。
[ 2017/06/30 10:36 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)

前向きに生きてくれなんて望まない

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。
 難病患者や末期ガン患者は、明るく元気にすべてに感謝し前向きに生きて、人々に勇気と感動を与えなければいけないのですか。
 私は、難病患者やガン患者が泣きわめくことを認めたい。おのれの不運を恨み、天にツバすることを認めたい。ヤケになって、呪詛の言葉を吐き散らすことを認めたい。感謝などしなくてけっこう。勇気も感動も求めません。
 難病や不治の病になった人のほとんどは、ただ不運なだけです。その人にはなんの責任もありません。ヤケを起こして健康な人に恨みごとをぶつけるくらいの権利はあるでしょ。そういう人間の弱さを認めることこそを「寛容」というんじゃないですか。
 病気になった人に対して、自己管理が甘いからだ、などと科学的根拠のない精神論的因果をでっち上げて責める人を、私は軽蔑します。
 一方で、不運な人が聖人のように美しく生きることを期待して、勇気と感動をもらおうとする人たちのことも、私はあさましいと思ってます。
 私はオトナになってから突発性難聴を患い、片耳の聴力をほとんど失いました。デカい音で音楽を聴いてたわけでもなく、原因は不明です。まあ片耳は問題なく聞こえますから、不便なことは多々あるけれど、生きていくのに重大な支障はありません。その程度のことでも、ちきしょう、なんで自分が、と思いましたよ。
 ですから、もしも不治の病で余命を宣告されたら、ヤケを起こすかもしれません。聖人のように生きる自信なんてありません。だから他人にも、強く美しく前向きであれ、などと望まないのです。
[ 2017/06/28 10:45 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)

誤解二題

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。
誤解その1。
 「鵜呑みにするな」という言葉を誤解してる人がいるようです。根拠のない話をたやすく信じてはいけない、というのが、「鵜呑みにするな」の正しい意味・用法です。
 ところが、こちらが根拠をあきらかにして主張してるにもかかわらず、「鵜呑みにしてはいけない」などという人がいます。それだと単なるイチャモンだし、反則です。
 根拠があきらかなのに、自分の気にくわない事実を信じたくないから鵜呑みにしないというのは、強情張ってるだけの愚か者です。

誤解その2。
 私は日常生活での「昔はよかった」はありえないといいましたけど、古いものをすべて否定してるわけじゃありません。趣味の世界にかぎって、それを楽しむのならアリだと思ってます。
 たとえば、観光地でSLを走らせてそれに乗りに行くってのはアリです。でも、都会での毎日の通勤がSLだったらイヤでしょ。ススで黒くなるし、冷暖房のない列車なんて、もう考えられません。
 ここ数年、LPレコードが再評価されてますけど、レコードで音楽を聴くのはアリです。レコードの音には独特の味わいがありますから。
 でもだからといって、CDもデータ再生もすべてやめてアナログレコードだけの時代に戻れといわれたら、それは絶対イヤですよ。
 たまにマニア気取りなのか、昔の音楽や映像作品だけをベタ褒めして、今の作品をまったく評価しない人がいますけど、それは違いますよね。新しい作品にだって、いいものはあります。
 趣味の世界では、昔「は」よかったではなく、昔「も」よかった、という態度が望ましいのでは。
[ 2017/06/18 20:58 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)

『みをつくし料理帖』が滅法おもしろい

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。いつものように朝ドラは、テレビをつけたままいろいろやりながらの視聴。日によって観たり観なかったり。それでもストーリーがなんとなくつかめちゃうのが朝ドラたるゆえん。この前の関西が舞台だったヤツは、人工感動甘味料たっぷりのウソ臭い話だったけど、今度の『ひよっこ』はなかなかいいんじゃないでしょうか。
 私が感心したのは、主人公みね子のおじ(峯田和伸さん)が、ビートルズの素晴らしさを熱っぽく伝えようとするも、周囲の若者は全然無関心というシーン。時代の現実を正しく描いてます。60年代、ビートルズの良さを認めてたのは、ごく一部の人たちだけでした。ほとんどの若者は興味がないか、バカにしてたんです。

 今期はドラマが不作とかボヤいてたら、遅れて大当たりが来ました。『みをつくし料理帖』。時代劇です。
 これ以前、民放で北川景子さん主演の単発ドラマとしてやってましたよね? いまひとつだったんで、途中で見るのやめちゃいましたが。
 同じ原作を作り直す、いまふうにいえば、リブートですか。大成功ですね。原作は読んでませんが、おそらく黒木華さんのほうが原作のイメージに近いのでは?
 黒木さんは古風な顔立ちのせいで、時代劇とかの起用が多いけど、ホントはもったいない。現代劇でも頭抜けてうまい人だから。ももクロの映画でも、新任教師役の黒木さんが登場した瞬間から、だらけた空気が引き締まって映画のグレードが上がりました。けなす人もけっこういた『リップヴァンウィンクルの花嫁』も私は好きですね。周囲に流されっぱなしで不幸になる、あんまり共感できないキャラなのに、黒木さんが演じるとなんだか絵になる。
 で、『みをつくし料理帖』でも当然のごとく、うまい。他にもうまい役者ばかり揃えてしまったので、木村祐一さんだけヘタなのが目立っちゃいました。でもこれ、木村さんのせいでなく、キャスティングの失敗です。東京の人がムリに関西弁しゃべると、関西の人は気持ち悪いっていうでしょ。その裏返しで、普段関西弁の木村さんが江戸弁で芝居するから、ぎこちなくなっちゃってるんです。

 時代劇が衰退したのは、チャンバラと勧善懲悪という固定概念から抜けられなかったせいだと私は思ってます。似たような話ばかり作れば、飽きられますよ。NHKが『ちかえもん』とか、チャンバラに頼らない時代劇を作っていることは非常に野心的な試みで、もっと評価されてもいいのでは。あ、そういえば『ちかえもん』も『みをつくし料理帖』も脚本は藤本有紀さんじゃないですか。
[ 2017/06/03 22:02 ] おすすめ | TB(-) | CM(-)
プロフィール

Author:パオロ・マッツァリーノ
イタリア生まれの日本文化史研究家、戯作者。公式プロフィールにはイタリアン大学日本文化研究科卒とあるが、大学自体の存在が未確認。父は九州男児で国際スパイ(もしくは某ハンバーガーチェーンの店舗清掃員)、母はナポリの花売り娘、弟はフィレンツェ在住の家具職人のはずだが、本人はイタリア語で話しかけられるとなぜか聞こえないふりをするらしい。ジャズと立ち食いそばが好き。

パオロの著作
つっこみ力

読むワイドショー

思考の憑きもの

サラリーマン生態100年史

偽善のトリセツ

歴史の「普通」ってなんですか?

世間を渡る読書術

会社苦いかしょっぱいか

みんなの道徳解体新書

日本人のための怒りかた講座

エラい人にはウソがある

昔はよかった病

日本文化史

偽善のすすめ

13歳からの反社会学(文庫)

ザ・世のなか力

怒る!日本文化論

日本列島プチ改造論(文庫)

パオロ・マッツァリーノの日本史漫談

コドモダマシ(文庫)

13歳からの反社会学

続・反社会学講座(文庫)

日本列島プチ改造論

コドモダマシ

反社会学講座(文庫)

つっこみ力

反社会学の不埒な研究報告