こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。年も押し詰まり、今年のベストなどを発表する時期になりました。私も毎年やってますが、今年はベストの前に、ワーストのほうから発表したいと思います。まずは膿を出してスッキリしてからということで。今年ガッカリさせられた「ざんねんなにんげん図鑑2017」。
最初はやはりこの問題。そう簡単に風化させませんよ。「日野皓正、日馬富士と、暴力を擁護するひとたち」。
何年か前に、プロの格闘家がシロウトにインネンつけられてボコボコに殴られるも一切反撃せず、大ケガをしたという事件がありました。被害に遭った格闘家は痛々しい姿で会見し、もし反撃をしたら相手はかえって逆上するだろうし、ヘタしたら殺してしまいかねないからガマンしたのだ、などといってました。
おおげさかもしれないけれど、私は感動しました。本当の強さって、こういうことなんだろうな、と。こういうのこそ、道徳の教科書に載せるべきエピソードなんじゃないの? 三國連太郎さんが戦争に行ったとき、上官からどんなに殴られても銃を撃つことを拒否し続けたという話を聞いたときと同じくらいの衝撃を受けました。
それに比べたら、日馬富士が恥ずかしいくらいに小物だとわかるでしょ。相撲界というタテ社会では格下の者は絶対抵抗してこないとわかってて、暴力をふるった卑怯者。殴り返してこないとわかってる少年を殴った日野も同様ですね。
暴力をふるった時点で、自分の教育が機能しなかったことを認めたも同然なのに、自分の敗北に気づかず、これはしつけだ教育だと威張ってる残念なひとたち。
次は、「ベーシックインカム導入論を無視するひと」。私が経済関係のことをちょろっとでも書くと、すぐに反論・批判が寄せられるのですが、不思議なことに、私がベーシックインカム(以下BI)を支持したことに対する批判はまったくありませんでした。
だからといって、彼らがBIを支持しているわけでもなさそうです。むしろ、気に入らないけど理論的に反論できないので無視してなんとかやりすごそうとしてる、そんなところでしょう。過去に雑誌などに載ったBI批判論にひととおり目を通したのですが、どれも論点ずらしのヘリクツばかり。BIに関しては、肯定論のほうが圧倒的に説得力があります。
私は、明日からBIをはじめてもいいんじゃないか、くらいに思ってますが、自民党はまったくやる気がなさそうです。相変わらず、個々の問題ごとに所得などの基準で給付するかどうかを決める旧態依然たる福祉を増やすばかりで、将来破綻するリスクは無視して革命であるぞと自画自賛。
抜本的な福祉改革であるBIを世界に先駆けて実施することこそが、本当の意味での革命なんですけどね。
最後は、「ミサイル攻撃におびえて無意味な避難訓練をするひと」。暴力的な教育を擁護して強がってる連中が、ミサイルにびびりまくってるんだからねえ。
危機管理に感情論は不要です。アタマを使って現実的に対処しなければいけないのです。北朝鮮からのミサイルは発射されて数分で日本に到達します。しかも国民に知らされるのも発射されて数分経ってから。そのわずかな時間でなにができます? 避難行動なんて無意味な気休めでしかありません。
不思議でならないのですが、避難訓練をしてる人たちは自衛隊を信用してないのですか? 自衛隊のミサイル迎撃システムは、いま現在実行可能な、もっとも科学的で効果の高い対処法です。逆にいうと、それで迎撃できないタイプのミサイル攻撃を受けたら、われわれにできることはなにもありません。
だからミサイルは自衛隊にまかせて、普段どおりの生活を続ければいいんです。避難訓練なんかしても、日本人をビビらせてやったぞ、と北朝鮮を喜ばせるだけ。
どうしても心配なら、発射後に警告する無意味なJアラートをやめて、発射前に警告する「ミサイル予報」にしたらどうですか。
政府は世界中からさまざまな情報を得て事前に準備をしています。だから、明日ミサイルが発射される確率は80パーセントです、みたいな予報ができるはずで、それを事前に発表し、どうするかは各自の判断にまかせればいい。でも、そういう情報公開を評価するひとよりも、予報がはずれたときに文句いうひとのほうが多いから、やらないのでしょうけど。
日本にとっては地震のリスクのほうが、遙かに高いのですよ。ミサイルは外交努力などでも抑止できるけど、大地震は人間の力では止められません。いつかまた必ず来ます。ミサイルという目先の派手な問題に目を奪われて、震災の記憶が薄れ、地震への備えがおろそかになるほうが、よほど危険です。
[ 2017/12/14 18:55 ]
未分類 |
TB(-) |
CM(-)