こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。オリンピックに関して、以前にブログでこんな記事を書きました。
スポーツと国歌
http://pmazzarino.blog.fc2.com/blog-entry-231.html 60年代くらいまでは、スポーツが世界を平和にできるのではという希望を信じることができたかもしれません。でも、いまやスポーツは臆面もなく政治利用されてます。
スポーツで世界は平和になりません。逆でしょ。平和だからスポーツができるんです。スポーツを楽しみたいのなら、世界を平和にしなきゃいけません。だから本来ならスポーツファンこそが、スポーツの政治利用に異議を唱えて平和を訴えなきゃいけないはずなのですが。
オリンピックは、世界一速いヤツ、世界一強いヤツ、世界一上手いヤツを決めればいいんじゃないの。スポーツにスポーツ以上のものを期待するからおかしなことになる。
以前のオリンピックだかワールドカップだかで、「楽しんできたいと思います」みたいなコメントした選手が、「日の丸背負ってんだから遊びじゃなくて真剣にやれ」なんて批判されてたことがありましたけど、保守的な道徳観で叱るなら、「スポーツなんかやって遊んでないで、マジメに働け」っていうのがスジでしょ。
スポーツが人間性を養うなんてのは、なんの根拠のない妄想です。相撲協会をごらんください。国家の法律で禁止された暴力的制裁を容認し、組織の掟を重視するなんてのは、ヤクザの倫理そのものです。
相撲はスポーツじゃなくて神事だ? 去年、深川のあたりでは、神事に携わるヤツが金と権力に取り憑かれて人殺しをしてましたけど? 神の名を借りて暴力を正当化するヤツこそが、一番のバチ当たり。
相撲界のみならず他のスポーツでも賭博だの脱税だの薬物だのでつかまる選手や元選手はたくさんいます。それは個人の資質の問題であって、スポーツが人間性を良くすることもないし、悪くすることもありません。
スポーツは、「努力はほとんど報われない」という冷酷な事実を教えてくれます。スポーツに人生を捧げて努力してる人間が世界中にどれだけたくさんいることか。でもそのうちの99.99……パーセントは栄光をつかむことなく終わります。これほど割にあわないことはない。それでもスポーツをやるひとは絶えないのだから、ハマるひとにとっては、スポーツは最高にエゴイスティックで魅力的な遊びなのでしょう。
そんなにスポーツやオリンピックに文句があるなら見るなよ、と怒られそうです。はい、見ませんよ。オリンピックのテレビ中継は、一度も見たことがありません。なぜなら、オリンピックの全競技に1ミリも興味がないから。私は年に2日しかスポーツを見ません。ツールドフランスの総集編とNFLのスーパーボウル中継。以前はシーズン中の試合もたまに見ましたが、めんどくさくなってやめました。
私みたいなひとは他にいないのでしょうか? テレビを見てると、タレントもコメンテーターもアナウンサーも、全員がオリンピックに前のめりの興味を示してる印象を受けます。なかには「ぼく、オリンピックに興味ないんでなんのコメントもないです」というひとがいてもおかしくないのに、ほぼ皆無というのが不自然です。
私はスポーツを否定してるのではなく、興味がないだけです。ただ、ひとつだけ文句をいうならば、興味がないひとにまで、参加や応援を強要するな、ってこと。みんながオリンピックに興味があるふりをしなきゃいけないような風潮がおかしい。スポーツに興味がない者にとっては、オリンピックはハロウィンや恵方巻と同じくらいどうでもいい行事のひとつにすぎないのですから。