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パオロ・マッツァリーノ公式ブログ
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言葉の時代考証

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。秋・冬と豊作だったテレビの連ドラでしたが、この春、ちゃんと録画して観てるのは『シグナル』だけ。『崖っぷちホテル』と『家政夫のミタゾノ』は放送時間に観られるときだけ観てます。気軽に愉しんで、ちょっといい気分で寝られるという深夜枠ドラマの役割をきっちり果たしている良作なので、やっぱり放送時間に観るのがいいのかな、と。

 朝ドラの『半分、青い。』は、おもしろくなってきました。朝ドラってやっぱり、現代物のほうがいいんじゃないの? 戦前の話だと現代人にとってはもう異世界のファンタジーなんですよ。作り物臭がぷんぷんにおってきて共感しにくい。
 ひとつ引っかかったのは言葉の問題。こども時代の回で、「マジ」「ビミョー」ってセリフが聞こえてきたのにはビックリしました。その時代にはまだどちらもほとんど使われてなかったはずです。
 マジは80年代後半くらいから、ビミョーはもっとずっとあとでしょう。てなことをいうと、マジは江戸時代からあったんだぜー、と知識をひけらかす雑学マニアが出没しそうですが、それは言葉として存在したというだけで、庶民の日常会話には使われてなかったと思いますよ。

 夕方には『カーネーション』の再放送をやってるんですね。いま、相撲で中断してますけど。たまたま観た日の回で、主人公が仕事仲間に「お疲れさんです」っていってました。
 これもまちがいです。お疲れさまはもともと芸能界だけで使われていたあいさつで、一般人が使うようになったのは80年代から。
 78年の朝ドラ『おていちゃん』の台本にお疲れさまというセリフがあったのですが、これは芸能界で仕事をしている脚本家が、つい書いてしまったのでしょう。でもこのときは、たまたまリハーサル現場にいたNHKのアナウンサーが気づき、大正時代にお疲れさまというあいさつはなかった、とディレクターに教えてセリフが修正されたというエピソードが残ってます。『カーネーション』のときは、もうお疲れさまが日常語になりすぎていて、だれも気づかなかったんですね。

 まあ、言葉の時代考証はむずかしいところです。時代劇で、本当にその時代の言葉でしゃべられたら、たぶん現代人には理解できないし。セリフが現代語に吹き替えられてる、と思うことにしましょうか。
[ 2018/05/24 20:52 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)

将来なにになりたいですか?

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。こどものころ、「将来なにになりたいですか」と質問されたり、作文を書かされたりするたびに困ってました。私は、なんにもなりたくなかったからです。

 たとえば現在、不動産屋で働いてるひとたちは、こどものころから土地建物が大好きで、将来は不動産屋で働きたいです、と作文に書いてたの? たぶん、そんなひとほとんどいませんよね。たまたま仕事を探していたとき、不動産屋の求人があって、たまたま応募したら採用された、って感じじゃないですか。
 特殊な資格を必要としない業界なら、だいたいの仕事はそんなもんです。たまたま就職して、その仕事が向いてればプロになれる。向いてなくたって、続けていればいつのまにかプロになってたりする。
 こどもに将来なりたい職業なんて聞くことに意味があるんでしょうかね。幼いころから将来の目標を明確に設定し、それに向けて研鑽・努力に励まねばなりませぬ、みたいな悲壮感あふれる指導をする必要はないんじゃないの。
 こどものころから始めなければならない職業は、子役とスポーツくらいでしょ。子役はオトナになってから始めるわけにいきません。スポーツは非情な世界です。どれだけ経験と実績を積み重ねた名選手でも、年とると必ず若い才能に負けて引導を渡されます。逆にいうと、10代で芽が出なければプロになるのはまず不可能です。
 むかしは音楽も3歳からやらなきゃダメとかいってましたけど、必ずしもそうじゃなさそうです。中学生くらいで楽器をはじめて、プロのミュージシャンになってるひともいますから。

 現実には、こどもの頃なりたかったものになれたひとのほうが少数派なんじゃないですか。たいていのひとは、オトナになってから仕事を探し、たまたま就職してますが、べつにそれが不幸な人生ってわけじゃありません。むしろあまりに目標を絞っていると、挫折したときに軌道修正ができなくなるかもしれません。

 いま私は肩書きもなく、どこの組織や会社にも所属せず、何者でもなく、なんの保証もなく、たまたまもの書きをやって細々と暮らしてます。こどものころには、将来こうなっているなんてまったく想像もしませんでした。
 自分の本が思ったほど売れないのは不満ではあるけれど、高級なものを食べたいとか、高価なものを所有したいって欲求がほとんどないので、いまの状態をさほど不幸だとは思ってません。なにより、こどものころから大嫌いだったイバってるオトナのケツをなめずに生きていけてるのは、ありがたいことだと。ある意味、なんにもなりたくなかったこどものころの夢を叶えたのかもしれません。
[ 2018/05/05 21:13 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)
プロフィール

Author:パオロ・マッツァリーノ
イタリア生まれの日本文化史研究家、戯作者。公式プロフィールにはイタリアン大学日本文化研究科卒とあるが、大学自体の存在が未確認。父は九州男児で国際スパイ(もしくは某ハンバーガーチェーンの店舗清掃員)、母はナポリの花売り娘、弟はフィレンツェ在住の家具職人のはずだが、本人はイタリア語で話しかけられるとなぜか聞こえないふりをするらしい。ジャズと立ち食いそばが好き。

パオロの著作
偽善のトリセツ

歴史の「普通」ってなんですか?

世間を渡る読書術

会社苦いかしょっぱいか

みんなの道徳解体新書

日本人のための怒りかた講座

エラい人にはウソがある

昔はよかった病

日本文化史

偽善のすすめ

13歳からの反社会学(文庫)

ザ・世のなか力

怒る!日本文化論

日本列島プチ改造論(文庫)

パオロ・マッツァリーノの日本史漫談

コドモダマシ(文庫)

13歳からの反社会学

続・反社会学講座(文庫)

日本列島プチ改造論

コドモダマシ

反社会学講座(文庫)

つっこみ力

反社会学の不埒な研究報告