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パオロ・マッツァリーノ公式ブログ
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冬ドラマと昨年話題の作品評

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。国際ロマンス詐欺ではありません。
 全体的に手堅いけれど、抜きんでたものがない印象の今期のテレビドラマ。そのなかから一本選ぶなら、『3年A組』です。事前に設定・あらすじを読んだかぎりでは新鮮さを感じなかったんですけど、『家族ゲーム』の脚本家が書いてるとのことで、ひねりを効かせて楽しめるレベルにまで持ってってるのは、さすがプロの仕事。
 いまはこの手の作品を書くのがむずかしい時代です。みんな寄ってたかってネットでありそうな展開を予想しまくっちゃうから、少しくらいの意外性では驚かないし、かといって誰も予想しない展開にしちゃうと、たぶん矛盾で自爆する。整合性と裏切りのバランスをどこでとるかですよね。
 『いだてん』も観てますが、おそらく私も含めてクドカンファンのみなさんは、いつものはちゃめちゃなスピード感が控えめなので、もの足りないのでは。

 正月にやってたドラマの一気再放送で『陸王』を観ました。
「社長、私たちも手伝います!」
 エビデ~イ
「お兄ちゃんは、1人で営業に回ってたのよ!」
 エビデ~イ
 なんなのこれ。のべつまくなしエビデ~イの歌が流れて、はい、ここが感動ポイントですよ、と教えてくれる親切設計。感動の押し売りに飽きてしまい、途中で観るのやめました。
 結局、池井戸作品の映像化で私がおもしろいと思えたのは、『半沢直樹』だけなんですよね。

 『おっさんずラブ』も正月の再放送で観ました。もともとそっち方面には何の関心もなかったので、スルーしてたのですが、観たらヒットの理由がわかりました。
 これ、もし男女の話だったら、あまりにも凡庸なラブコメなんですよ。それを男同士にするだけで、こんなに爆笑できるのか!
 と同時に、性別の変更によって、恋愛ドラマの本質というか骨格がはっきり見えたのが興味深い。三角関係だの嫉妬だの不倫だの、そうか、恋愛ドラマってこういうことをやってるんだよな、と。
 もうひとつ気づかされたのは、物語を楽しむのに「共感」は必ずしも必要ではないってこと。私はゲイではないので、キャラクターに共感できません。なのにこのドラマを楽しめました。まあ考えてみれば、私は戦争にも暴力にもまったく共感できませんが、戦争映画やバイオレンス映画を楽しんでますからね。共感って、じつはマストな要素ではないのかもね。
[ 2019/01/25 20:48 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)

2018年のよかったもの

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。遅ればせながら、2018年のよかった本・ドラマ・映画をまとめました。


『暴力の人類史』(スティーブン・ピンカー 青土社)
 これ、数年前に翻訳版が出たとき、図書館でずっと貸出中だったんで、そのまま忘れてました。急に思い出して読んでみたところ、迷うことなく必読図書として推薦できる名著でした。
 いま現在の世界が人類史上もっとも暴力や殺人が少ない時代である事実を、大量の資料から証明しています。イギリスで、14世紀と20世紀で殺人件数はどのくらい違うと思いますかとアンケートをとったところ、案の定20世紀のほうが増えたと思う人が多かったそう。でも史料から導き出された正解は、95パーセントの減少。「この衝撃的な事実は、のどかな過去と退廃した現在というステレオタイプをことごとく裏切る」。
 どうやら「昔はよかった」病は日本だけでなく、世界中に蔓延してるようです。
 さらに興味を惹かれたのは、暴力や殺人が激減しても、決してゼロにはならない理由に関する検証と考察。その理由を本書は「道徳性と正義の過剰」にあるとしています。
 法学者ドナルド・ブラックさんいわく、「私たちが犯罪と呼ぶもののほとんどは、加害者の視点から見れば正義の追及だ」。
 強盗目的など、いわゆる「悪」の殺人は全体の1割程度しかありません。殺人犯のほとんどは、自分が相手から許しがたい辱めや不利益を被ったことへの制裁・復讐として殺人を犯しているのです。殺人犯にとっては自分こそが真の被害者なのです。だから、自らが正義の死刑執行人となって罪深き加害者に鉄槌をくだす権利があると考えます。むろんそれは加害者の一方的な正義にすぎず、被害者側から見れば、加害者が自分の暴力行為を正当化したヘリクツでしかありません。
 正義や道徳には殺人や暴力を思いとどまらせる効果もたしかにあります。しかしそれと同時に、正義や道徳は殺人や暴力を生む原因でもあるし、殺人や暴力を正当化する理由としても使われています。正義や道徳を盲信する人たちは、その事実から目を背けているのです。


『昭和元禄落語心中』(NHKテレビドラマ)
 原作マンガの評価が高かったので、おそらく実写化のオファーも殺到してたのではないでしょうか。結果的に、もっとも幸福なカタチでの実写化だったと思います。
 NHKのドラマは、視聴率が取れそうな役者をムリヤリねじ込んだりせず、作品のイメージを最大限活かせるキャスティングを優先してるところに好感が持てます。
 岡田将生さんをはじめ、役者陣もみな適材適所でハマってましたし、盤石な脚本・演出で、情の濃い話を紡ぎあげました。10回ほどの連ドラなのに、大河ドラマを1年間観たかのような満足感。


『ビジランテ』(邦画)
 ここ数年、映画館で映画を観てません。ほとんどWOWOWに頼ってるので、劇場公開から1年遅れの評価となります。で、2018年に観たなかでのベストが『ビジランテ』。
 指摘する人も多かったようですが、つじつまの合わないところもあるんです。でも、それはこの作品の評価を下げる理由にはなりません。なぜならこの映画が目指したのは謎解きミステリーではないから。この映画の主題は「地方都市の気持ち悪さ」なんです。
 おそらく監督も地方都市の気持ち悪さに気づいていて、いつか描いてやろうと企画を温めていたのでしょう。なにもないけど平和な住宅地、という見せかけのイメージの裏で、政治家と開発業者とヤクザがデカいツラして牛耳っている。善良な小市民たちはそうした巨悪には目をつぶる一方で、見せかけの平和を守るために防犯パトロールという名の自警団活動(ビジランテは自警団の意味)にいそしむが、彼らの正義は排他性と独善で汚れている……。
 そういう気持ち悪さを意識してない人たちがこの映画を観ると、おのれの醜さを鏡で見せられたようで不快になるんです。認めたくないんです。秀作でありながら一般人からの評価が意外と低かったり、あまり話題にならなかったのは、そのあたりに理由がありそうです。


2018年の残念だったこと

 池袋の中華料理店『黒龍門』の閉店。ここの麻婆炒飯は、かかってる麻婆が山椒の効いた本格派。めちゃくちゃうまいB級グルメって感じで気にいってました。2018年の夏は暑すぎて、辛いもの食べて汗かくことすらイヤだったんでしばらく足が遠のいてました。秋になってから久々に行ったら、すでに店はなく……。
[ 2019/01/07 21:34 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)
プロフィール

Author:パオロ・マッツァリーノ
イタリア生まれの日本文化史研究家、戯作者。公式プロフィールにはイタリアン大学日本文化研究科卒とあるが、大学自体の存在が未確認。父は九州男児で国際スパイ(もしくは某ハンバーガーチェーンの店舗清掃員)、母はナポリの花売り娘、弟はフィレンツェ在住の家具職人のはずだが、本人はイタリア語で話しかけられるとなぜか聞こえないふりをするらしい。ジャズと立ち食いそばが好き。

パオロの著作
偽善のトリセツ

歴史の「普通」ってなんですか?

世間を渡る読書術

会社苦いかしょっぱいか

みんなの道徳解体新書

日本人のための怒りかた講座

エラい人にはウソがある

昔はよかった病

日本文化史

偽善のすすめ

13歳からの反社会学(文庫)

ザ・世のなか力

怒る!日本文化論

日本列島プチ改造論(文庫)

パオロ・マッツァリーノの日本史漫談

コドモダマシ(文庫)

13歳からの反社会学

続・反社会学講座(文庫)

日本列島プチ改造論

コドモダマシ

反社会学講座(文庫)

つっこみ力

反社会学の不埒な研究報告