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反社会学講座ブログ

パオロ・マッツァリーノ公式ブログ
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コント・平成最後の道場破り

 俺は俺より強いヤツを求め、日本中を旅し続けている武道家だ。時代遅れと笑うがいい。俺はそういう生きかたしかできない男なのだ。
 そんな俺に天が味方してくれたのだろうか。今日、はじめて訪れたこの町の裏通りで、「極真カラテ」と書かれた看板を見つけたのだ。
 躊躇なく、俺はその道場の扉を開けた。
「たのもう!」
「いらっしゃいませ」
 穏やかな笑顔でカウンターの向こうに立つのは、カフェのマスターのような初老の男性。微塵も殺気が感じられない。俺のような道場破りを目の前にして、ここまで見事に平常心を保てるとは、この男、相当の使い手に違いない。
 それより、なんだこの道場は。内装まで、まるっきりカフェのようではないか。
「何故、道場をカフェのごとく偽装しているのですか?」
「カフェのごとくじゃなくて、カフェなんですけども」
「笑止。看板に極真カラテと大書してあるではないかっ!」
「あれは、きわみまことちからラテ、です」
「……は?!」
「力うどん、ってご存じですか」
「お餅が乗ってるうどん」
「そこから発想を得て、カフェラテに焼き餅を浮かべた、ちからラテというオリジナルメニューを作ってみました。で、私の名前が極真と書いて、きわみ まことと申します。開発者である自分の名前をつけまして、きわみまことちからラテ。当店のおすすめです」
「いただこう」
 ……
「お待たせしました、きわみまことちからラテでございます」
「ううむ、深煎り豆が醸し出す強いアロマと苦み。それをやさしく包み込むミルクのクリーミーな泡と自然な甘さ……。こんな美味いラテは飲んだことがない。俺の負けだ……」
「おそれいります」
「だが、マスター!」
「なんでしょう?」
「餅は、余計だ!」
[ 2019/03/31 17:46 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)

春休み特別講義 日本人と茶髪の歴史

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。ヘアケア製品のブランド・パンテーンが、新学年がはじまる時期に合わせて「この髪どうしてダメですか」というキャンペーンをはじめたとのことで。
https://pantene.jp/ja-jp/brandexperience/school-hair

 髪の色や髪型を校則で決めることは本当に必要なのか。中高生や教師やその他オトナたちに問いかけるもので、私のところにも協力の依頼が来ました。あ、べつに金品などは一切もらってないですよ。
 なんで私に話が来たかというと、昨年発売した『歴史の「普通」ってなんですか?』という著書で、茶髪・長髪・パーマが日本で迫害を受けてきた歴史を取りあげたからです。
 ぶっちゃけ、この本読んでください、学校の図書室に購入依頼を出してください、で終わらせたいところですが、今回は中高生のみなさんが不毛な議論で潰されないためにも、本の内容から抜粋して講義をしておきます。

 むかしの日本人は地味で保守的だったと思ってるなら、それは誤った歴史認識です。江戸時代、江戸の庶民のあいだでは、男女ともに髪の結いかたにむちゃくちゃたくさんの流行がありました。当時のファッションリーダーは歌舞伎役者と花魁(おいらん)。彼らが新しい髪型を披露すると、江戸の若者はこぞって髪型をマネしたものです。
 みなさんの先祖の日本人は、髪のおしゃれが大好きな民族だったのです。もしも江戸時代にヘアカラー剤があったら、いろんな色に髪を染めるひとがいて、マンガの『銀魂』みたいな世界になっていたかもしれません。

 明治時代には画家・文人の淡島寒月が、日本ではじめて茶髪にチャレンジしています。灰汁(あく)で脱色したといってますが、だれもマネしなかったところをみると、うまくいかなかったようです。
 その後、日本では長いこと髪染めはあまり行われませんでした。パーマやマニキュアは戦前からけっこう流行ってたけど、髪染めは戦後になってもマイナーなままでした。
 その理由は、日本人の髪質にあう品質の良いヘアカラー剤がなかったからです。手間がかかるわりにきれいに染まらなかったので、染めたくてもあきらめてたひとが多かった。
 でも、ヘアカラーメーカーの開発者たちはめげずに研究を続けました。その結果、1980年代後半にはヘアカラーの品質はかなりのレベルに達しました。そこで、メーカーや美容室が、サッカー選手や芸能人をモデルに起用して茶髪普及キャンペーンに力を入れたところ、90年代前半にようやく茶髪ブームが到来したのです。
 なんか『下町ロケット』や『陸王』のような感動的な展開です。社長、ついにやりましたよ! みたいな。
 しかし、そういうドラマには必ず、主人公たちのジャマをするキャラが登場します。若者の間で茶髪がブームになると、現実の世界にも、それを敵視するおじさんが登場しました。1996年ごろが茶髪批判のピークで、週刊誌などにはアンチ茶髪記事が頻繁に載りました。とりわけ、中高生の茶髪に対してはおじさんたちの批判が集中します。
 でも、なぜ茶髪や髪染めがいけないのかという理由は不可解なものばかり。生まれつきのままにしろというのなら、生まれつき茶髪の子に黒染めを強制するのもいけないはずです。茶髪にすると不良になる? 茶髪にすると勉強せずにバカになる? カネがかかるから万引きをするようになる? 逆に髪を染めない子がダサいといじめられる?
 どれも根拠がありません。歴史的にも統計的にも間違ってます。茶髪ブームが起きたのは90年代でした。じゃあそれ以前は不良はいなかったのですか? とんでもない。むしろ以前のほうが多かったし、むかしの不良はみんな黒髪でしたけどね。勉強しないヤツも、万引きするヤツも、茶髪が流行る前からたくさんいました。髪の色が目立つほうが、店員の注意を惹きやすいから、犯罪はやりにくくなるじゃないですか。陰湿なイジメは戦前から普通にありました。つまり、茶髪にすることで非行や犯罪が増えたというデータはないのです。
 勉強をサボる生徒や万引き、イジメをする生徒は、キビシく指導するべきです。でも、生徒が髪の色を変えたことで、世間のおじさんや先生たちは、なにか迷惑を被ったのですか? うるさいとか臭いとか目が痛いとかカネを盗まれたとか、具体的な被害を受けたのなら、禁止する理由になりますが、なんとなく気に入らないってだけでは理由になりません。

 私は中高生の髪の色や髪型なんて、好きなようにさせればいいと考えてます。それは、規制する正当な理由がないからです。
 自由に理由は要りません。自由を規制する側に、その理由を説明する義務が生じるのです。この基本理念が無視されたとき、法治国家は崩壊します。支配者によって無制限に自由が奪われる社会になってしまいます。
 もちろん、すべてが自由ってわけにはいきません。社会には法律やルールで自由を規制しなければならないことがいろいろあります。ただし、他人の自由を奪うからには、理由がなければいけません。理由のない理不尽・不条理なルールは存在してはならないのです。
 だから生徒のみなさんには、自由を規制するルールがなぜ存在するのか、その理由を問う権利があります。学校側には、説明する義務があります。規則だから、昔からそうだから、なんてのは説明になってません。
 でも、それは裏を返せば、生徒のみなさんも、自由を規制する理由をきちんと説明できるオトナになることが求められるわけです。そのために必要な、論理的・科学的思考力や、調査力、文章力、コミュニケーション力などをきちんと身につけて、賢いオトナになってください。
[ 2019/03/24 17:05 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)

あえて震災の感傷を排す

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。東日本大震災のときに壊れた建物などを震災遺構として残すかどうかで、8年経ったいまでももめてるところがあるそうです。
 その是非を感傷で決めてはいけません。震災遺構は、その維持管理費をすべて寄付でまかなえるもののみ、残すべきです。
 建物だけでなく道路や橋など、すべての建築物は完成した瞬間から劣化がはじまり、ほうっておけば崩壊します。だから必ず維持管理が必要になるんです。そして維持管理にはけっこうなお金がかかります。
 もし、震災遺構の維持管理を怠ったために崩れ落ち、見学に来てた人が下敷きになるなるなんてことが起きたら、しゃれになりません。
 維持管理の費用を税金でまかなうつもりなら、やめたほうがいい。被災した自治体でお金がありあまってるところなんてないはずです。他に使いみちがたくさんあるのに、震災遺構というノスタルジーの維持管理に使うのはバカげてます。ただでさえ、日本全国の自治体で、高度成長期に作った水道などのインフラは改修時期に来ていて、予算を工面するのに頭を悩ませてる現実があるというのに。
 震災の教訓を正しく伝えるなら、文字や映像での説明で残すべきです。モニュメントを見たところで、何が伝わるのですか。印象だけですよ。災害対策は、事実と根拠に基づいて、効果のあることをやらなければいけません。感情論でやるのは、かえって危険です。
 感傷じゃないというのなら、なおさらのこと、そういうあなたが率先して維持管理費を寄付するのがスジってものでしょう。多くの人がこれを遺構として残したいと本気で思ってるのなら、維持管理費を寄付でまかなうことはできるはずです。
[ 2019/03/11 19:18 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)

毒舌と不謹慎

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。ゴーンさんが満を持して披露したコスプレは何だったんでしょうか。世界一高い報酬をもらってる作業員? あの出オチを、100何日間、ずっと考えてたんですかね。
 それで思い出すのは、ゴーンさんが逮捕されたときにホンダの販売店の社員がツイッターで「やったぜ日産」とツイートした件。日本人にしては珍しく毒っ気があるなと思ったのですが、やはりというか、私がその情報を聞きつけたときにはすでに、不謹慎だなどと批判が集まり、削除・謝罪に追い込まれたあとでした。
 毒舌や風刺を理解できるかどうかは知能の高さと関連があるという説を聞いたことがあります。毒舌ツイートを不謹慎だと批判して削除させてしまう一方で、高嶋ちさ子さんのような、自分勝手なことをいってるだけのひとを、毒舌だなどともてはやしてる様子を見ると、その説の信憑性が高まります。
 毒というのは、自分より立場が強い者に向けられるから、痛快なんです。逆だったら弱い者イジメです。自分よりも強い権威や権力に毒を吐けば、怒った権力者に逆襲され、自分が潰されるリスクがあります。発言者にもリスクがあることを承知の上で毒を放つ勇気が称賛されるわけです。
 やったぜ日産のツイートは、ちょうどそのころ日産が使っていたキャンペーンの文言を使い、しかもそれをライバル企業のホンダの一社員がやったというところに、リスクを背負って毒矢を射ったおもしろさがあったんです。実際、リスクはあったわけで。ただ、あれをバカッターと批判してたひとがいましたけど、その批判は的外れですよ。
 不謹慎とかいうけど、誰に対して不謹慎なんですか? ゴーンさん本人? でも彼は長いこと、毒や風刺が好まれるフランスで暮らしてたんです。自分くらいの権力者なら、ヘタうったら毒や風刺で揶揄されるだろうことくらい、わかってるはずです。
 日産の社員も、じつはあのツイートをおもしろがってたんじゃないですか。自分たちがいえない絶対権力者への批判を、ライバル社の社員がやってくれたんですから。
 あのツイートを不謹慎だと責めたひとたちは、ゴーンさんの底なしの不謹慎ぶりこそをもっと責めるべきなのでは? 会社を救うためといって、作業服を着て地道に働いてた工員を大量にリストラして、自分は会社のカネで親や姉にマンションをプレゼントしてたんですよ。これほどひとをバカにした不謹慎な話はありません。

 毒舌といえば、最近ではお笑い芸人の有吉さんが有名ですが、その評判は間違ってないと思います。有吉さんは自分よりも格が上の者にもときおり毒を吐いてますから。去年のオールスター後夜祭で、CMあけに芸人に詰め寄ってたのは、真骨頂でしたね。これはもちろん、以前紳助さんがやったことを再現して紳助さんを茶化してたわけですが、相当キツい毒ですよ。ヘタしたら、紳助さんを尊敬してる吉本芸人からインネンをつけられかねないリスクもありますし。

 それに引き替え、毒舌の名に値しないのが、高嶋ちさ子さんです。高嶋さんの暴言は、いつも自分より立場が下の者にばかり向けられてます。横暴そうに見えるけど、権威や権力には決して逆らわない、自己保身に長けたひと。
 もし、毒舌を売りにするのなら、ストラディバリウスなんて、何億もするほどの音じゃねえんだよ! くらいのタンカを切ってほしいものです。でも高嶋さんは、権威を傷つけるようなことはいいません。エラい権力者にも毒を吐きません。

 自分が嫌ってるものが辛辣に批判されてると、毒舌だと手を叩いて喜ぶのに、自分(もしくは自分が好きなもの)が毒舌のターゲットにされると怒りだすひとがいます。
 毒舌や風刺を楽しみたいのなら、自分や自分が好きなものに毒が向けられても笑っていられるようでなければダメですよ。
[ 2019/03/08 19:34 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)
プロフィール

Author:パオロ・マッツァリーノ
イタリア生まれの日本文化史研究家、戯作者。公式プロフィールにはイタリアン大学日本文化研究科卒とあるが、大学自体の存在が未確認。父は九州男児で国際スパイ(もしくは某ハンバーガーチェーンの店舗清掃員)、母はナポリの花売り娘、弟はフィレンツェ在住の家具職人のはずだが、本人はイタリア語で話しかけられるとなぜか聞こえないふりをするらしい。ジャズと立ち食いそばが好き。

パオロの著作
偽善のトリセツ

歴史の「普通」ってなんですか?

世間を渡る読書術

会社苦いかしょっぱいか

みんなの道徳解体新書

日本人のための怒りかた講座

エラい人にはウソがある

昔はよかった病

日本文化史

偽善のすすめ

13歳からの反社会学(文庫)

ザ・世のなか力

怒る!日本文化論

日本列島プチ改造論(文庫)

パオロ・マッツァリーノの日本史漫談

コドモダマシ(文庫)

13歳からの反社会学

続・反社会学講座(文庫)

日本列島プチ改造論

コドモダマシ

反社会学講座(文庫)

つっこみ力

反社会学の不埒な研究報告