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ジャズ・トゥナイト その後

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。今年2月16日付けのブログに、長年にわたりNHK-FMの『ジャズ・トゥナイト』のパーソナリティだった児山紀芳さんが亡くなったことを書きました。

参考記事:児山紀芳さんを偲んで

 児山さんより適任のジャズ評論家はいないのではと、このときの私は、番組の存続にすら悲観的でした。
 それから半年も経ってしまったのですが、その後どうなったか。4月から大友良英さんがパーソナリティを引き継ぎました。大友さんって誰よ? というかたでも、朝ドラ『あまちゃん』のテーマの作曲者だといえば、第一線で活躍中の音楽家だとわかっていただけるでしょう。
 大友さんはフリージャズ方面の活動をしてた経歴もあるそうで、そっちのコワい系(前衛的という意味ね)の選曲をするのだろうかと心配でした。しかしフタを開けるとうれしい誤算。新譜・旧譜・硬軟取り混ぜて、ベテランジャズファンも、ジャズを聴いてみたい一般人も楽しめる番組になってます。(毎月の最終週だけは別番組なので、聴いてみようと思ったかたはご注意を。)

 てか、この半年で私はすっかり大友さんのファンになってしまいました。有名ジャズミュージシャンを取りあげるときも、歴史的大名盤ばかりでなく、このアルバムのこの曲どうよ? とばかりに、スルーされがちな隠れ名曲を教えてくれます。
 最初に耳を惹かれたのは、カテリーナ・バレンテがギターの弾き語りで「四月の思い出」を歌い、そこにチェット・ベイカーがトランペットを重ねるデュオ。こんな素晴らしい演奏があったのかと驚き、購入意欲満々で音源を探したのですが、このふたりのデュオは2曲しか録音されてないと知ってがっかり。
 しかしその後も、番組を聴いたあとに何度中古CD屋を漁りに行ったことか。できれば大友さんに番組をずっと続けてもらいたいくらいですが、お忙しいかただと難しいかもしれませんね。一時期、児山さんはもうひとりのパーソナリティと一週交代でやっていたことがありました。その方式でもいいので、貴重なジャズ番組をなるべく長く続けてほしいものです。
[ 2019/09/23 21:01 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)

改名のワンチャンスがあってもいい

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。先日の『チコちゃん』でシュウマイの問題が出題されてて笑っちゃいました。シュウマイまでぶっ壊そうとしたあいつへのあてつけかな。
 あいつと同類じゃないかと誤解されるのは迷惑なので、はっきりさせておきます。じつは私も以前、NHKはニュースと天気予報以外をスクランブルしたらどうかと提案したことがあります。

参考記事:ホットコーヒー裁判の真相

 このブログ記事を読んでいただければおわかりになるはずですが、私はNHKに好意的です。私がぶっとばしたいのは、本当は見てるくせに、見てないから受信料は払わないとウソついてる連中です。

 さて、先週だったか、NHKの『クローズアップ現代』で改名についてやってました。最近は、トランスジェンダー関連や、親につけられたキラキラネームで生活に支障をきたしているなどの理由で改名するひとが多いのだとか。
 正式に改名するには裁判所に申し立てて、正当な理由が認めらなければなりません。ちょっと面倒です。でも、番組でもいってましたけど、江戸時代までの日本では、成人したときなどをきっかけに改名するのが一般的でした。明治時代に全国民を戸籍で管理するために、勝手に改名できないようにしたんです。

 みなさんが日本の伝統、常識と思ってる社会慣習の多くは、じつは明治時代にむりやり作られたものだったりするんです。日本の歴史文化に無知なくせに保守を自称してる政治家とかは、戦後の日本社会は伝統的な家族観を破壊した、などと難じますが、日本の伝統的な家族観を最初に破壊したのは明治政府です。
 本来の日本人は、生涯に何度も結婚・離婚を繰り返すのが普通でした。捨て子や親のない子を養子にするのも、とても簡単にできました。そういった、縛りの少ない多様性こそが伝統的な庶民の家族観だったのに、戸籍で管理されるようになって届け出が厳密化され、自由な伝統が失われたのです。

 で、改名に関してなんですが、私からひとつ法改正のご提案。成人――今度から18歳ですか、その歳になったときに、無条件で名前を一度変える権利がもらえるってことにしてはどうでしょう。
 名前ってのは、自分の承諾なしに勝手に親につけられてしまうものです。だったら、オトナになったら自分の意志で変える権利があって当然でしょう。その権利を行使するかどうかは、自由です。何歳のときに行使してもかまいません。2度目の改名からは、これまで通り裁判所の審理を必要とする方式にすれば、やたらと変えられることはありません。
 マイナンバー制度ができたのだから、名前を変えても行政手続き上の支障はとくにないはずです。18歳までガマンすれば改名できるとなれば、キラキラネームや性別関連で悩んでる若者も希望が持てるのではないですか。もちろん逆に、キラキラネームに変えることも可能です。自分の責任でやるのなら、文句は出ません。

 最近の日本の親が名付けに凝るのは、少子化のせいでもあります。拙著『誰も調べなかった日本文化史』に書いたのですが、戦前の日本では、一郎は思いのほか少なくて、三郎のほうがやたらと多かったんです。長男次男あたりまでは名前を考えたけど、3人目ともなるとめんどくさくなり、三郎でいいや、って感じになったのではないかと。

 改名という日本の伝統文化の復活を期待してます。わくわくしますね。
[ 2019/09/07 20:26 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)
プロフィール

Author:パオロ・マッツァリーノ
イタリア生まれの日本文化史研究家、戯作者。公式プロフィールにはイタリアン大学日本文化研究科卒とあるが、大学自体の存在が未確認。父は九州男児で国際スパイ(もしくは某ハンバーガーチェーンの店舗清掃員)、母はナポリの花売り娘、弟はフィレンツェ在住の家具職人のはずだが、本人はイタリア語で話しかけられるとなぜか聞こえないふりをするらしい。ジャズと立ち食いそばが好き。

パオロの著作
つっこみ力

読むワイドショー

思考の憑きもの

サラリーマン生態100年史

偽善のトリセツ

歴史の「普通」ってなんですか?

世間を渡る読書術

会社苦いかしょっぱいか

みんなの道徳解体新書

日本人のための怒りかた講座

エラい人にはウソがある

昔はよかった病

日本文化史

偽善のすすめ

13歳からの反社会学(文庫)

ザ・世のなか力

怒る!日本文化論

日本列島プチ改造論(文庫)

パオロ・マッツァリーノの日本史漫談

コドモダマシ(文庫)

13歳からの反社会学

続・反社会学講座(文庫)

日本列島プチ改造論

コドモダマシ

反社会学講座(文庫)

つっこみ力

反社会学の不埒な研究報告