こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。やはり『半沢直樹』は期待を裏切らなかった。前シーズンと同様に、原作2冊分を贅沢に使い濃縮したのが勝因だったことは間違いなし。前半のITベンチャーと証券会社の話がけっこう好きで、キャラに馴染みができたところであっさり前半が終了してしまい残念だなあと思ってたら、後半にもキープレーヤーとして登場してくれました。前半が後半の伏線になっているあたりもニクい作りですよねえ。
すさまじい熱量で押し切ってしまったのは大正解。でも、あえてうがった見かたをするのなら、半沢がピンチになるたびに歌舞伎アベンジャーズの誰かが助けに来る展開ばかりなので、最後のほうになると、どうせまた誰かが助けてくれるんだろ、って思っちゃったところも、なきにしもあらず。
一番の皮肉は、『半沢直樹』を痛快だと喜んでる視聴者の多くが、現実の世界では政治家の疑惑を突き上げようともせず、擁護・黙認してることですね。
序盤で絶賛した『MIU404』も最後まで愉しめました。以前にもいいましたけど、犯罪ドラマには社会問題と向き合う姿勢が不可欠です。それがないと薄っぺらな犯罪ファンタジーになってしまいます。
最終回で、これが2019年を舞台にしていたのだとあきらかになったときには、そう来たか! ってうなりました。というのは、緊急事態宣言のさなかにNHKで放送された、テレビの未来を考える番組に脚本家の野木さんがリモートで出演してて、コロナ禍をドラマはどう扱うべきか、迷いを口にしてたからです。フィクションだからまったく無視することもできるけど、それでいいんだろうか、と。
なので私はその点にも注目して『MIU404』を見はじめまして、そうか結局、無視することにしたんだな、とずっと思ってたんです。だから最終回の種明かしで、そう来たか! 逃げずに設定に落とし込んだところに、野木さんの脚本家としての誠実さを感じました。
ただ残念だったのは、ときどき話の流れが微妙に跳んで、「ん?」ってなったこと。これ、長年映画やドラマを観てきた者にはわかる、シーンがカットされてるときの違和感なんです。放送時間の関係で、脚本にはあったはずのシーンがちょいちょいカットされてたのでしょう。
この点では、ネットフリックスみたいな時間制約のないメディアの自由度がうらやましい。たとえば『全裸監督』は各話の長さがまちまちで、10分以上も違います。テレビドラマではありえないでしょ。
一方、コロナ禍を完全無視する選択をしたのが『親バカ青春白書』。全国の大学が閉鎖されてるときに、楽しいキャンパスライフを描くのは、暴挙なのか希望なのか。いずれにせよ、不運だったことだけはたしかです。
私は福田雄一さんの作品は『アオイホノオ』だけが傑作で、それ以外はすべて駄作だと思ってます。映画もドラマも序盤だけ見て、またいつものスベリ芸か……とわかったところでやめてしまいます。
しかし意外なことに、『親バカ』はなんとなく観てられたんです。どうやらスベリ芸の部分はカットしてネット限定公開にしたようで、放送分はわりと普通のドラマになってました。その結果、逆にいい話になりすぎて笑えないというジレンマ。
正直、おもしろいとはいえなかったけど、日曜の夜はたいてい家でヒマしてるんで、なぜか毎週観ちゃうんです。
永野芽郁さんの母親役が新垣結衣さん(若くして亡くなった設定で回想シーンのみの出演)だったのですが、ときどき永野さんが、ガッキーがよくやるのと同じ表情の作りかたをしてたんです。あれ偶然? それとも狙ってやった演出?
序盤が良かった『私の家政夫ナギサさん』は、並みのレベルにおさまってしまいましたけど、結末はあれでよかったんですかね? 若い子とおじさんの夫婦って、アリなの? ナギサさんと同年代のおじさんである私としては、複雑です。現実には、絶対キモいといわれそうな気がするんだけど。
最後に新ドラマですが、先日NHKBSではじまった『一億円のさようなら』は先の展開がまったく読めないので、期待大。
平凡なサラリーマンの夫が、じつは妻が若いころに巨額の遺産を相続していながらずっと隠していた事実を知ってしまいます。で、1話のラストで妻は夫に1億円の現金を残して家を出てしまうのですが、夫婦はこのあとどうするのか、どうなるのか。ふたりが出会った頃の回想シーンはどうリンクしてくるのか。わくわくしますねえ。
[ 2020/09/28 20:44 ]
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