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近況と最近のテレビ

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。ここのところ新刊の校正とか仕事が少し重なって、珍しく小忙しい状態です。
 そんななかでもテレビはぼちぼち観ています。今期のテレビドラマで毎週観てるのは『日本沈没』だけ。近年の日曜劇場は何をやっても半沢風味の味付けになるんだな、って感じですけども、日本沈没はさすがに土下座でおさまる問題じゃないので、どういう結末になるのか楽しみです。

 どうでもいい情報ですけど、私、最近もみあげに白髪が増えて北大路欣也さんっぽくなってきたんですよ。そこで、自分と似てる芸能人を教えてくれるアプリを試してみたら、香川照之さんと判定されました。え~、似てるっていわれたこと一度もないけどな。

 先週からはじまったNHKの『阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし』の初回を観たら、ストーリーどうこうよりも、木村多江さんが江里子さんのしゃべり口調を完璧にマスターしてたことに驚きました。単なるモノマネではなく、演技としてちゃんと成立させてるあたり、役者って凄いなって感心します。

 私、ここ何年もテレビのニュースはNHKしか観てません。CMもないし、コメンテーターも出ないし、どうでもいいエンタメ情報(○○さんの曲が1億回再生を記録しました~みたいな)もないのがいいんです。
 でも公共放送の宿命として、選挙期間中は朝のニュースの時間が政見放送になっちゃいます。なのでTBSのリニューアルしたばかりのニュースを初めて観ました。民放だからCMは仕方ないけど、いまどき珍しくコメンテーターが出演しないんですね。7時になると安住アナが無表情でこども番組みたいなダンスを踊るシュールな演出にビックリしました。
[ 2021/11/12 17:42 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)

昭和の俳優が総理に悪口をいった話

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。近ごろは芸能人がテレビで政治家の悪口をいうとネットでムチャクチャ叩かれるのが恒例になっちゃいました。私は見てなかったけど、先日も選挙特番で太田さんが自民党の政治家に悪口をいって叩かれてたようですね。

 では、むかしはどうだったのか。1965(昭和40)年10月、『佐藤総理を囲んで』の収録の模様を覗いてみましょう。これは民放各局の共同製作で隔月ペースで放送されていた、当時の総理・佐藤栄作と各界の著名人が語らう番組です。
 この日のゲストは俳優の森繁久彌とラジオパーソナリティの秋山ちえ子。

秋山「近ごろの青少年は政治家になり手がないといいますね」
森繁「それは理由がある。だいたい、政治家になる連中は少し知能指数が低いのじゃないか。選挙になるとたすきを肩からかけてペコペコ『お願いします。お願いします』だ。だから当選すると急にイバリたがるんだな」
秋山「あれはよほど勇気がないとできないでしょうね」
佐藤「私はタスキはかけたことはないが、たしかに政治家なんてのは、キミ、どこか狂ってないとできないと思うね」
森繁「いゃあ、役者もそうかも知れませんな」
秋山「ほんとに、お気の毒です」
(出典:波野拓郎『知られざる放送』)

 現役総理の目の前で、政治家は知能指数が低いだなんて、森繁のストレートすぎる悪口にビックリしますけど、佐藤栄作がそれに怒ることなく、政治家なんてのはどこか狂ってるとブラックな悪ノリで返してることにも驚きます。意外と器の大きい人だったんですね。さすがノーベル平和賞、ってまあ、それは受賞理由じゃないでしょうけど。
 それに比べて最近の政治家の器の小さいこと。ちょっとでも悪口いわれるとすぐに怒り出すし、返しもつまらない。その支持者たちも、芸能人の政治批判にやたら敏感で、すぐにネットでギャーギャー怒ります。
 それにしても、こんな過激な対談がホントに放送されたの? いまの常識だとそう思いますよね。じつはこの部分、収録に立ち会っていた橋本官房長官が現場でテレビ局のスタッフに強く要請したことにより、放送時にカットされました。
 総理本人が悪口を何も気にしてないし、絶妙な返しまでして盛り上げてくれたのに、なんで官房長官が独断で放送局に圧力をかけてカットさせるんですか。

 放送でカットされた個所がなんで再現できるんだ? と疑り深いかたがさっそくケチをつけてきそうです。
 この番組は民放各社の共同製作で、各テレビ・ラジオ局が同じ番組を放送することになってました。なのでテレビ局はみんな自主的にカットしたバージョンを放送したのですが、協定を守らないヤツらがいたんです。ラジオ局の文化放送とラジオ関東だけは、この部分をカットせずそのまま放送したのだとか。総理本人からの要請ではないので、カットする義務はないという判断で。やるねえ。そのおかげで、政治圧力で放送内容がカットされたことがバレましたし、記録が残ってるんです。
[ 2021/11/02 20:43 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)
プロフィール

Author:パオロ・マッツァリーノ
イタリア生まれの日本文化史研究家、戯作者。公式プロフィールにはイタリアン大学日本文化研究科卒とあるが、大学自体の存在が未確認。父は九州男児で国際スパイ(もしくは某ハンバーガーチェーンの店舗清掃員)、母はナポリの花売り娘、弟はフィレンツェ在住の家具職人のはずだが、本人はイタリア語で話しかけられるとなぜか聞こえないふりをするらしい。ジャズと立ち食いそばが好き。

パオロの著作
つっこみ力

読むワイドショー

思考の憑きもの

サラリーマン生態100年史

偽善のトリセツ

歴史の「普通」ってなんですか?

世間を渡る読書術

会社苦いかしょっぱいか

みんなの道徳解体新書

日本人のための怒りかた講座

エラい人にはウソがある

昔はよかった病

日本文化史

偽善のすすめ

13歳からの反社会学(文庫)

ザ・世のなか力

怒る!日本文化論

日本列島プチ改造論(文庫)

パオロ・マッツァリーノの日本史漫談

コドモダマシ(文庫)

13歳からの反社会学

続・反社会学講座(文庫)

日本列島プチ改造論

コドモダマシ

反社会学講座(文庫)

つっこみ力

反社会学の不埒な研究報告