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反社会学講座ブログ TOP > 2022年01月

冬ドラマの序盤評

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。遅ればせながら前期ドラマの『日本沈没』の感想。ドラマとしての出来は悪くはなかったと思います。ただ、ひとつ引っかかったのは、日本がこれまで移民や難民の受け入れをほぼすべて拒否してきた事実がまったく言及されなかった点です。なのに日本が沈没するから日本人を移民として受け入れてくれ、ってのはずいぶん自分勝手な話じゃないですか。他国からイヤミのひとつもいわれて当然ですけどね。

 さて、1月はじまりのドラマの序盤評です。まだ始まってないのもありますが、それはおいおいお話しするということで。
 やっぱりよかったでしょ、『ミステリと言う勿れ』。私は以前から原作マンガを、ミステリファンなら絶対ハマると推してきましたが、ドラマの初回も会心の出来。原作読んでストーリーを知っててもなお、真相があきらかにされるシーンではやるせなくなりました。
 原作マンガの読者レビューでは、自分のイデオロギーにあわないセリフがあるからというだけの理由でストーリーとかを無視して作品を全否定する極端な意見が目立つんですよ。そういう意見をいってる人たちが他にどんな作品をレビューしてるのか見ると、ミステリ小説をほとんど読んでないんです。たぶん彼らはミステリのおもしろさに興味がないから、イデオロギー的なセリフにばかり目が向くのでしょう。
 古今東西のミステリ小説を何千冊も読破してきたミステリマニアが『ミステリと言う勿れ』をミステリの文脈でどう評価するのかを、ぜひ聞いてみたいのです。私はミステリマニアを名乗れるような者ではございません。小学生の頃から読んでるから、おそらく1000冊くらいは読んでるはずだけど、むかし読んだのはたいてい内容を忘れちゃってるので、マニアとは語りあえません。

 久々に黒木華さんの芝居をたっぷり見られると期待してた『ゴシップ』ですが、ストーリーにもキャラにも惹かれる要素が見当たらず、初回の途中でやめてしまいました。こないだ観た映画『甘いお酒でうがい』では明るい不思議ちゃんみたいな役柄でした。演技の幅が広い。
 もう1本、初回で脱落したのが『鎌倉殿の13人』。三谷さんの脚本とはいえ、もともと戦国時代よりも前の日本史に関心がない私はやはり馴染めませんでした。

 逆にまったく期待してなかったのにおもしろかったのが、『しもべえ』と『恋せぬふたり』。
『しもべえ』はドラえもん的なファンタジーコメディなんだけど、ダメな女子高生を助けるのがファンタジー度ゼロのおじさんで、彼はどうやらアプリなんです。なんじゃそりゃ、とツッコむあなたの感性は正しい。第2話の予告でサブタイトルが「さらに面白くなりました」って、そんな自画自賛のサブタイトルはなかなかつけられませんよ。勇気あるなあ。

 設定が非常に興味深い『恋せぬふたり』。恋愛抜きの『逃げ恥』、といえば企画意図が伝わりますかね。恋愛に興味がない男女が同居することになるのですが、はたして恋愛感情抜きのままふたりは家族になれるのか。はたまた、恋愛感情が芽生えるのか。
 高橋一生さんと岸井ゆきのさん、このふたりのキャスティングが絶妙なので、次回も観てみたくなります。前からいってますけど、NHKはドラマのキャスティングがうまいんです。民放は視聴率を獲れるかどうかで役者を選びがちですが、NHKは作品本位で役者を選んでます。
[ 2022/01/13 21:54 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)

歳をとって思うこと

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。歳とると、自分の誕生日なんて気にしなくなるので、今朝、ポケ森の動物たちに教えてもらって、あ、今日誕生日だった、と思い出しました。
 歳とったこととは関係ないかもしれないけど、近ごろ、酒を飲みたいと思わなくなりました。べつに健康に気をつかってやめてるわけではなく、自然と欲しなくなった感じ。
 サッポロのラガービールが好きなんですけど、ラガー缶は通年販売はしてません。年に3回くらい? ゲリラ的に販売されます。そのたびに1本飲んで、やっぱりうまいなあ、と確認して終わり。それ以外はほとんど飲みません。
 酒だけでなく、暴飲暴食など不摂生を注意されて、うるせえな、オレの勝手だろとか強がりいえるのは40代までなので覚悟しといたほうがいいです。50すぎたら健康に気をつかわないと死ぬよ。もうホントにカラダのあちこちにガタがきます。良くなるところなんてひとつもないんだから。哀しくなりますよ。

 年末のM-1では、錦鯉がチャンピオンになりました。以前からおもしろいと評価してましたけど、まさかM-1獲っちゃうとはねえ。前年に決勝まで残って次の年に優勝って、なにげに実力者の王道パターンじゃないですか。
 中年の星とか賞賛される一方で、ベテラン芸人のなかから危惧する声が上がってました。こういう例があると、芽が出ずにくすぶりながら続けているお笑い芸人がやめどきを見失い、ずるずるといつまでも続けてしまうのではないか、と。
 私は、それこそ余計なお世話だと思います。人生100年時代、寿命が延び続けているなかでは、下積み期間がこれまでより伸びて遅咲きの人が増える傾向は、あらゆる職種で増えるかもしれません。あるいは中高年になってから、まったくの異業種に転職してゼロからやり直す、やり直さざるを得なくなることもあるでしょう。だから中高年からの可能性を閉ざしてはいけません。
 むしろ私は、若くして成功する人たちがフィーチャーされることを危惧してます。10代でインフルエンサー、年収何千万円なんて華々しく活躍する人たちがテレビでたびたび紹介されてますが、そういうのばかりを見させられると、20代や30歳くらいでまだ何も成し遂げられてない人が、それが普通なのにカン違いして、オレはもうダメだ人生終わった、とヤケを起こし、無差別テロに走るような例が増えるのではと、そっちのほうが心配です。
 長寿社会では、50になってもバイトしながら売れない芸人やってたってべつにかまわないよ、ってくらいの寛容さが、社会の安全弁として必要になってきます。
[ 2022/01/09 21:17 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)
プロフィール

Author:パオロ・マッツァリーノ
イタリア生まれの日本文化史研究家、戯作者。公式プロフィールにはイタリアン大学日本文化研究科卒とあるが、大学自体の存在が未確認。父は九州男児で国際スパイ(もしくは某ハンバーガーチェーンの店舗清掃員)、母はナポリの花売り娘、弟はフィレンツェ在住の家具職人のはずだが、本人はイタリア語で話しかけられるとなぜか聞こえないふりをするらしい。ジャズと立ち食いそばが好き。

パオロの著作
つっこみ力

読むワイドショー

思考の憑きもの

サラリーマン生態100年史

偽善のトリセツ

歴史の「普通」ってなんですか?

世間を渡る読書術

会社苦いかしょっぱいか

みんなの道徳解体新書

日本人のための怒りかた講座

エラい人にはウソがある

昔はよかった病

日本文化史

偽善のすすめ

13歳からの反社会学(文庫)

ザ・世のなか力

怒る!日本文化論

日本列島プチ改造論(文庫)

パオロ・マッツァリーノの日本史漫談

コドモダマシ(文庫)

13歳からの反社会学

続・反社会学講座(文庫)

日本列島プチ改造論

コドモダマシ

反社会学講座(文庫)

つっこみ力

反社会学の不埒な研究報告