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著書の解説記事を当ブログにぼちぼち移行中です

こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。突然、過去の著書の解説記事がブログにアップされて、なんだろうと思われたかもしれませんが、宣伝のためではありません。
 以前は著書の解説記事をFC2のホームページで公開してまして、ブログの「パオロの著作」の画像をクリックするとそちらが表示されるようになってます。
 FC2のホームページにはFTPで記事をアップするのですが、数か月前からFTPのソフトで接続しようとすると止まってしまうことが増えました。すんなり接続できるときもあります。
 たぶんこちらのパソコン上の設定に問題があるのだとは思うのですが、あれこれ試してもうまくいかないのであきらめて、著書解説記事だけブログに移すことにしました。
 一度に全部移すのは大変なので、ぼちぼちやっていくつもりです。
 今後もときどきブログに著書解説記事が登場しますが、そういうわけなので、気にしないでください。
[ 2022/07/27 13:56 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)

『会社苦いかしょっぱいか』著者解説

『会社苦いかしょっぱいか』
『サラリーマン生態100年史』(新書版)
著者解説


会社苦いかしょっぱいか
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単行本・春秋社 税別1700円 2017年6月発売
新書・角川新書 税別900円 2020年12月発売

※単行本と新書の内容は同じです。

 大正時代にサラリーマンが誕生してから約100年。この機会にその歴史をあらためておさらいしてみようということで、ネットで1年間の連載枠をもらい、過去の史料をひもときました。
 社員のみならず、社長にも興味がありました。『社長漫遊記』をはじめとした往年の映画「社長シリーズ」をDVDやBSで観るたびに、1960年代くらいの社長と社員の関係性というものに興味を惹かれていたもので。社長と社員の距離感が、いまよりだいぶ近い感じがして、なんかいいなあと思ってたのですが、実態はどうだったのか。
 いわば、ビジネス版『「昔はよかった」病』。『「昔はよかった」病』は雑誌連載からの新書化で、タイトな字数制限ゆえに削ったネタも多かったのですが、今作は字数無制限のネット連載だったので、心ゆくまで書けました。分量と密度的には、『誰も調べなかった日本文化史』に通ずると思います。

          *

第1章 昭和の社長よ、いまいずこ
 ちょっと変わってるのかもしれませんが、私は本にまえがきをつけたくないんです。ぐだぐだいわずに、いきなり本文から入りたいし、それでもすぐに内容を汲み取ってもらえる自信もあります。他人の本を読む際も、まえがきをとばして本文から読んでしまうことはよくあります。
 でもたいていの場合、編集者からまえがきをつけてくれと頼まれることが多いんで、つけますけどね。
 今回は第1章がまえがき、序章の代わりになってるので、まえがきはなし。「社長シリーズ」で描かれた会社文化が現実にはどうだったのか。そして、日本の社長といえば、宮尾すすむ……も若い人たちには「ダレ?」って感じかな。

第2章 この愛、経費で落とせますか?
 いい章題でしょ。連ドラのタイトルにしてもいいくらい。社長と社員の歴史を語るのに、いきなり妾と愛人の話から入るなんて、私くらいのもんでしょう。
 困ったのは、妾や愛人に関する史料があまりないことでした。まあ、あたりまえっちゃあ、あたりまえなんだけど。一流企業の社史に、社長の愛人の話なんか載せませんから。

第3章 秘密の秘書ちゃん
 社長といえば、愛人。そして、秘書。ゲスな連想からはじめたのですが、戦後、自立した女性の職業としてあこがれの存在になっていった経緯がわかるにつれ、現代女性労働史のテーマとして、とてもおもしろいと気づきました。できれば、だれかがこのテーマを引き継いで、戦後女性秘書の歴史を本にしてくれることを望みます。

第4章 夢か悪夢かマイホーム 戦前編
 日本の住宅問題に関しては、『反社会学講座』のころから取りあげてます。食と住は、人間の生存権にもっとも密接に関連するのに、大事なことまで自己責任で片付けてしまうのは、日本人の悪いクセ。
 日本の都市部で住宅問題が発生したのは大正時代のことでした。戦前は借家住まいが8割。当時家を購入できた中・上流のサラリーマンたちは、家は買うのがトクか借りるのがトクかで、やはり悩んでました。
 いまでは廃れてしまった間貸しという習慣。この実態も、いまの常識とはかけ離れていて驚かれると思います。

第5章 夢か悪夢かマイホーム 戦後編
 戦後の日本政府は、土地・住宅政策に関して、重大な失敗を積み重ねます。そのツケを払わされたのは、サラリーマン層。60年代に希望の象徴だったマイホームは、70年代には悪夢と化します。社宅から追い出され、老いた両親を引き取ることになり、マイホームを買わざるを得なくなった昭和ヒトケタ世代のお父さんたちの、血と汗と涙の綱渡り。泣けます。

第6章 趣味だ! 休みだ! ギャンブルだ!
 戦前から多種多様な趣味に興じていた社長たち。でもそれはお金があったから。お金がなかった社員や老人たちの趣味といったら、もっぱらギャンブルでした。
 戦後の週休二日制をめぐる議論、そして休日が増えた社員たちの趣味の行方や、いかに。

第7章 いまどきの新入社員列伝
 毎年繰り返される、新入社員批判。今年の新入社員は何型、なんてクソつまんない大喜利を、よくもまあ飽きずにやってますね。そんなレッテル貼りが無意味なことを、史料から戦前戦後の新入社員の実態をあきらかにした私が証明いたしましょう。
 最初に「過保護」といわれた新入社員も、いまや70歳前後。入社式にママがつきそいで来ていた世代だから、いま年寄りになって、こどもの見守り活動とかに熱心なのかな?

第8章 酷電通勤地獄
 サラリーマンにとって、切っても切れないのが通勤。60年代、乗車率300パーセントの通勤地獄は、世界中に報じられたほどのアンビリーバボー。ついには通勤ラッシュが暴動に発展してしまった事件もありました。
 でも、じつは電車の通勤地獄は大正期からはじまってたし、長距離通勤の萌芽も戦前昭和には見られたんです。

第9章 宴会LOVERS
 この章題が「限界LOVERS」のもじりであることに、気づいてくれてもくれなくても、それはともかく、ここでは社長と社員の宴会芸がテーマです。さあ、歴史のフタを開けましょう。今宵あなたを、エロとカオスが渦巻く宴会芸のディープワールドに誘います……。カラオケもあるよ。

第10章 出張は続くよどこまでも
 戦前の大手企業は出張費を気前よくくれたので、社員にとって出張はうれしい臨時ボーナスでした。
 しかし戦後の企業は甘くない。出張費を大幅に削られた社員たちが、旅費を浮かすために編み出した超セコい節約術の数々。
 夢の超特急・新幹線の開業で日帰り出張が可能になったことで、会社は喜び、社員は悲しむ? その実態とは。

第11章 こころの病とサラリーマン
 明治大正の時代から、文士も社長もサラリーマンも、みんなこころの病に苦しんでました。戦前には神経衰弱、戦後はノイローゼからうつ病へと、呼び名は変われど悩みは一緒。
 テレビCMは、モーレツからビューティフルへといったけど、現実はモーレツからノイローゼ、そして過労死へ。負の歴史からも目をそらさないでください。きれいごとばかり語るのは、歴史捏造の第一歩です。

第12章 知られざるビジネスマナーの歴史
 明治40年、近頃の青年の品行が乱れているとの世評に、真っ向反論したのは新渡戸稲造。
 1970年代まで芸能界だけで使われていたあいさつ「お疲れさま」は、いかにして一般人に広まったのか。
 ビジネスマナーの歴史には、常識を覆す事実がたくさん詰まってます。ビジネスマナー講師のみなさんも、本書を読んで勉強してください。ていうか、あなたがたですよ、デタラメなエセ文化史を広めてる元凶は。

第13章 産業スパイ大作戦
 この章だけは、単行本書き下ろし。
 先日、週刊誌の中吊り広告を、印刷会社の社員が掲載前にライバル誌に見せていたことが問題になりましたけど、印刷会社の社員を買収するのは、産業スパイの古典的手口なのです。
 60年代前半、日本は空前の産業スパイブーム。マンガ『おそ松くん』でもネタにされ、産業スパイを養成する専門学校まで登場。「盗むが勝ち」の罪悪感なき情報戦の、明日はどっちだ。

          *

 ということで、本書をすべてのサラリーマンと社長におすすめします。
 若い世代にとっては、昭和の会社文化を覗くことは、驚きの連続でしょう。上司の奇行とも思える行動に、じつはこんな意味とルーツがあったのか、と納得できるかもしれません。
 昭和世代にとっては、ああこんなことあった、と懐かしさをおぼえると同時に、若かった当時は見えなかった事実に気づかされることも多いはず。
 そしてすべての世代にとって、戦前の会社事情は新鮮なはずです。戦前の記憶を持つ人たちが減っていくなか、戦前の様子を史料で確認し、記録していく作業は、ますます重要になってきます。
 まあ、とにかく、軽い気持ちで読んでみてください。私の本のウリは、濃い内容と軽い語り口。昭和って、いまよりかなりデタラメだったけど、なんかおもしろい時代だったんだなあ、と楽しんでいただければさいわいです。
[ 2022/07/27 10:22 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)

時事通信の連載は終了しました

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。もし楽しみにしてるかたがいたら申し訳ないのですが、時事通信のサイトでの連載は、私のほうから降板を申し出て終了しました。
 理由は、自分の意見を書いてはいけないという不思議な編集方針にまったく納得がいかなかったからです。私はコラムというものは筆者の意見を書くものだと思っていたのですが、どうやら時事通信では自分の意見を書いてはいけないようなのです。
 その理由というのが、時事通信は新聞などに記事を配信しているので、批判と受け取られかねないことは些細なことでも一切書かぬよう、配慮をお願いしますというものでした。
 批判を一切しない報道メディアって、それじゃあ中国やロシアの国営放送と一緒じゃないですか。報道メディアとして自殺行為にも等しい方針です。
 しかも私のコラムは時事ドットコムだけの掲載で、他のメディアにまったく配信されてなかったんです。だから問題ないのではと指摘しても、会社の決まりだから、の一点張り。
 何度も書き直したのですが互いの意見が噛み合わず、平行線のままでした。それは編集者個人の判断ではなく会社の方針とのことだったので、お役所と同じ体質なのでしょう。「決まりだから」「前例がないから」ですべて押し通す徹底した事なかれ主義。そんな組織とはこれ以上関わっても不快になるだけだと判断し、私のほうから降板した次第です。
 ボツになった原稿の原稿料は受け取ってませんので、著作権・公表権などは私にあります。なので、今後、他のメディアに掲載されたり、本に収録したりすることもあるかと思います。
[ 2022/07/13 19:05 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)

ボートマッチは試す価値があります

 こんにちは、新党アルデンテ代表、パオロ・マッツァリーノです。前回に続いて選挙についてのお話。
 候補者の訴えをいろいろ聞いても、結局、誰に投票していいのかわからないという意見は、とくに若い人の間では多いと思います。むしろマジメな若者ほど、候補者全員の意見を聞いてみよう、読んでみようとして、かえって迷ってしまうんじゃないですか。
 そりゃあたりまえなんです。自分とまったく同じ考えの候補者なんていないんですから。経済政策に関してはこの人と同意見だけど、この人の安全保障についての意見には全然賛成できないんだよなあ、みたいな、もやもやするケースばっかりです。
 政党や候補者はさまざまな主張を一皿に盛って提供してくるわけで、いわば選挙は定食を選ぶようなものなんです。自民定食とか立憲定食とかがメニューにあるのですが、どの定食にも自分の好きなものと嫌いなものが入ってる。自分の好きなものだけ選ぶということができないのが選挙です。
 好きなものだけが入ってる定食を提供してる政党や候補者は逆に怪しい。都合の悪いことを隠してる可能性が高いです。だから、好きなものを選ぶと自動的に嫌いなものも食わなきゃならないと思ったほうがいい。じゃあ嫌いなものが少ない定食を選べばいいかというと、そういう定食には好きなものも入ってなかったりするんですよね。

 そこで、マスコミ各社がネットで提供してるボートマッチというのをやってみてはいかがですか。カタカナで書くと船こぎ競争みたいだけど、vote、投票ですね。政党や候補者と自分の意見がどれくらいマッチするかを判定してくれるシステムです。
 私もいくつか試してみましたが、ほとんどのものは政党とのマッチングしか判定できません。そんななか、NHKが参院選特設ページでやってるボートマッチは候補者個人とのマッチングもわかるので、おすすめです。
 それで高い数値が出た候補者何人かの主張を詳しく読んでみて、最終的に自分で決めるというのがいいかもしれません。
 私がやってみたところでは、もっとも高い人でも58%でした。まったく注目してなかった人と意外とマッチング率が高いことがわかり、主張を読んでみると、こういう考えの人だったのか、とわかったりとか、とりあえず試してみる価値はありますよ。

 で、自分とはマッチングしなかった人も含めて、いろんな候補者の意見を見ているうちに気づいたのですが、ほとんどの質問に無回答の人がいるんです。それって答えたくないの? それとも政治のことなんてなにもわからないってことなの? しかも、自民党の候補なのに、これまでの岸田政権をどの程度評価しますかという質問に無回答って人がいるのにはさすがに呆れました。
 でもこの人、自民党という強いブランド力をバックに当選してしまう可能性はあります。その場合、政治のことなど何もわかってない、何の意見も持ってない人が議員になってしまうわけです。
 ほら、だから私は前回のブログで、参議院は国民から抽選で選んでも現状とたいして変わらないだろうといったんです。
[ 2022/07/05 17:25 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)
プロフィール

Author:パオロ・マッツァリーノ
イタリア生まれの日本文化史研究家、戯作者。公式プロフィールにはイタリアン大学日本文化研究科卒とあるが、大学自体の存在が未確認。父は九州男児で国際スパイ(もしくは某ハンバーガーチェーンの店舗清掃員)、母はナポリの花売り娘、弟はフィレンツェ在住の家具職人のはずだが、本人はイタリア語で話しかけられるとなぜか聞こえないふりをするらしい。ジャズと立ち食いそばが好き。

パオロの著作
つっこみ力

読むワイドショー

思考の憑きもの

サラリーマン生態100年史

偽善のトリセツ

歴史の「普通」ってなんですか?

世間を渡る読書術

会社苦いかしょっぱいか

みんなの道徳解体新書

日本人のための怒りかた講座

エラい人にはウソがある

昔はよかった病

日本文化史

偽善のすすめ

13歳からの反社会学(文庫)

ザ・世のなか力

怒る!日本文化論

日本列島プチ改造論(文庫)

パオロ・マッツァリーノの日本史漫談

コドモダマシ(文庫)

13歳からの反社会学

続・反社会学講座(文庫)

日本列島プチ改造論

コドモダマシ

反社会学講座(文庫)

つっこみ力

反社会学の不埒な研究報告