こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。
先日、朝ドラ『花子とアン』の劇中で、「銀ブラ」という言葉は、銀座をぶらつくことでなく、銀座でブラジルコーヒーを飲むことだという俗説を紹介してました。
すぐ真に受けた人がたくさんいるようですが、これ、まったくのデタラメですからね。銀ブラは、銀座をぶらつくこと、ぶらぶらすることの略なんです。こちらが正解。
これはいいネタになるかなと思って調べたら、なんだ、すでに星田宏司さんと岡本秀徳さんが『「銀ブラ」の語源を正す』という本で完全に検証済みだったんですね。読んでみると、ブラジル説を否定するほぼすべての証拠史料が網羅されてます。
ブラジルコーヒー説の発信源まで突き止めているのですから、もう、これに反論することは不可能でしょう。
ブラジルコーヒー説は、2008年に出版された『日本で最初の喫茶店「ブラジル移民の父」がはじめたカフェーパウリスタ物語』という本のなかで、著者の長谷川泰三さんがいいはじめた説だったそうです。
この長谷川さんというのは、カフェパウリスタの経営会社である日東珈琲の元社長です。カフェパウリスタが大正時代にオープンしたときに、「ブラジルコーヒー」というのをウリにしてたんです。当時、慶應大学の学生たちが銀座のカフェパウリスタによく来ていたって逸話を書いてるうちに、銀ブラは銀座でブラジルコーヒーを飲むって意味だったのかもね~、みたいな独自説を披露したところ、それがテレビなどでおもしろおかしく取りあげられて、いつのまにか事実であるかのように広まってしまったようなんです。
もちろん長谷川さんの説の根拠となる資料は存在しません。当時の学生たちも、銀ブラは銀座でブラジルコーヒーの略だ、などとは一言もいってないんですから。長谷川さんは文献を誤読、拡大解釈しているだけです。
まあ、今後、ブラジル説の証拠となる史料が出てくる可能性もなくはないですが、その確率は、STAP細胞が見つかるのと同じくらいの確率だと思いますよ。
[ 2014/07/10 09:16 ]
未分類 |
TB(-) |
CM(-)