こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。
さあみんな、おまちかね、「都合よくデータを切り取って人々を不安に陥れよう!」の時間だよ!
警察庁によると、13歳未満の児童・生徒が連れ去られる事件は平成20年の63件から増加傾向にあり、22年以降は90件前後で推移。25年は94件だった。
(MSN産経ニュース2014年9月24日付) 上の記事を読んで、なにか感じない? こどもを狙った犯罪が増加していることへの憤り? なるほど。それもありますね。
でもごめんね、パオロさんはとっても性格悪いんだ。だから、他のところが気になっちゃう。
なぜ、平成20年と比較してるのだろう?
今日は、この理由をみんなと考えてみよう。
まずは、この警察発表の元になっているデータを探すんだけど、今回はすぐにみつかったので助かりました。平成25年の警察白書です。

この表の略取・誘拐という欄がネタ元。赤線で囲ってみました。
おっと、賢いきみたちには、もう犯人のトリックがわかっちゃったかな。犯人といっても警察なんでややこしいんだけど、ま、要するに警察の人は、もっとも件数が少なかった平成20年を基準として、犯罪が増加している! と発表した。するとマスコミの人たちが見事に、その情報に食いついたというわけさ。
でも実際には、平成20年がたまたま少なかっただけであって、それ以前はいまよりもっと誘拐事件が多発してたんだ。
てことは、さっきの報道は、こういうふうにいい換えることもできてしまう。
警察庁によると、13歳未満の児童・生徒が連れ去られる事件は平成16年の141件から減少傾向にあり、22年以降は90件前後で推移。25年は94件だった。
ほら、同じデータを使っているのに、データを切り取る位置を変えて報道することで、読者に真逆の印象を与えることができてしまうんだ! 情報操作って、コワいよね。
表の殺人の欄を見るとさらに驚きが! 誘拐とは逆に、なんと平成20年がもっとも多いじゃないか。マスコミはこの事実も公平に報道しなければいけないよね。
警察庁によると、13歳未満の児童・生徒が殺される事件は平成20年の115件から減少傾向にあり、22年以降は70件前後で推移。
さあ、今回の検証で、日本のマスコミは警察が投げ与えてくれた情報を鵜呑みにし、自分たちで確認もせずに報道してしまうことが明らかになってしまったね。
彼らはなぜか、日本はダメになる、日本はどんどん悪くなっている、と悲観論や滅亡論ばかり報じたがる。自分たちで悪いニュースを流しておいて、日本人は自信を失っている、とか論評するのだから、日本のマスコミは滑稽だね。