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『○○妻』と『オリエント急行殺人事件』

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。
 風邪をひいてしまいました。ここ2、3日は横になってテレビ見てました。もう、だいぶよくなりましたのでご心配なく。

 『○○妻』、いいですよ。『家政婦のミタ』の二番煎じになるのではって下馬評もありましたけど、初回は期待を上回る出来でした。『ミタ』の続編を望む声に、脚本家の遊川さんがもっとも適切なカタチで応えてくれました。
 『ミタ』はすでに完結して、ミタの謎もあきらかになってしまったんですから、同じキャラで続編をやっても十中八九、前作を越えられません。
 だったら一度リセットして、べつの「仕事が完璧だけど謎めいた女性」のストーリーを描いたほうが、展開の自由度が高くなるし、似たようなテイストの作品を求めてる視聴者も満足させられます。

 裏でやってた『残念な夫』もいちおう録画しておいて見ました。視聴者の共感を拒むような『○○妻』に対し、こちらは、それあるある~って視聴者の共感で成立するタイプのドラマ。
 個人的にはテーマに興味がないので続きは見ませんが、だいぶリサーチしてネタを仕込んである様子はうかがえますし、主演の二人の芝居も楽しいので、脚本家の腕のふるいようによっては、けっこう人気が出るかもしれません。

 そして、興味津々だったのが、三谷さんの『オリエント急行殺人事件』ですよ。ミステリファンならほとんどの人が、映画か小説のどちらかで、あの話をすでに知ってるわけです。ナゾが解き明かされても、もはや驚く人はほとんどいないという、ネタバレしすぎた話を、いまさらどう料理するというのか。
 前編で原作のストーリーをほぼやっつけてしまって、後編は犯行計画をオリジナルで描くんですね。で、おもしろかったのは後編のほうなんですよ。前編は延々、容疑者の取り調べが続くんで、私は退屈で寝ちゃいました。前編の途中で見限って、後編を見なかった人もいたんじゃないかと心配しましたが、視聴率はほぼ変わらなかったみたいです。
 後編は完全にいつもの明るく楽しい三谷喜劇のノリなんです。ただ、そのノリで殺人計画を練るってどうなのよ。ブラックコメディと割り切って楽しめる人なら問題ないけど、道徳心の強いかたは不快感をおぼえるかもしれません。
 要するにこれは『忠臣蔵』だな、と思って見ていたら、犯人たちが脅迫状を書くシーンで、「討ち入り前の血判状だ」とセリフでいってるじゃないですか。やはりそうだったのか。
 探偵役の野村さんの芝居には賛否あるでしょうけど、私は賛のほうです。自信過剰な天才をリアルに演じたら、ただ単にイヤなヤツになっちゃいます。あのくらい振り切ってコミカルにしても許されます。そもそも名探偵なんて存在自体がファンタジーみたいなものですから。
[ 2015/01/19 21:41 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)
プロフィール

Author:パオロ・マッツァリーノ
イタリア生まれの日本文化史研究家、戯作者。公式プロフィールにはイタリアン大学日本文化研究科卒とあるが、大学自体の存在が未確認。父は九州男児で国際スパイ(もしくは某ハンバーガーチェーンの店舗清掃員)、母はナポリの花売り娘、弟はフィレンツェ在住の家具職人のはずだが、本人はイタリア語で話しかけられるとなぜか聞こえないふりをするらしい。ジャズと立ち食いそばが好き。

パオロの著作
つっこみ力

読むワイドショー

思考の憑きもの

サラリーマン生態100年史

偽善のトリセツ

歴史の「普通」ってなんですか?

世間を渡る読書術

会社苦いかしょっぱいか

みんなの道徳解体新書

日本人のための怒りかた講座

エラい人にはウソがある

昔はよかった病

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ザ・世のなか力

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コドモダマシ(文庫)

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