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議員報酬を合法的に返還する方法

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。議員報酬について、以前から気になっていたことがもう一点あったので、調べてみました。
 議員が、自治体の財政が苦しいのに議員報酬が多すぎる、などの理由で一部を自治体に返還、または受け取り拒否を申し出ることがあります。すると、それは公職選挙法の寄付行為に該当するおそれがあるから受け取れない、と拒否されます。それでも強引に突っ返すと、自治体はそのお金を法務局に供託します。第三者に預かってもらうわけです。ただし、そのままにしておくと、そのお金は国のものになってしまうようなので、自治体財政の足しにはなりません。

 一般人の感覚だと、なんで報酬を返すのが寄付行為とみなされるのか、さっぱりわからないんですよ。
 じつはむかしは全国各地で普通に、議員報酬の返還が行われてました。報酬額アップに反対するため、ある党の所属議員が揃って増額分を返還した、なんて例はたくさんありましたし、返還分は自治体の収入になってたようです。
 ところが1990年に公選法が改正されると、議員の寄付のような行為は一切認めないというキビシイものになり、罰則規定も設けられました。有罪になれば議員資格を失うぞ、と脅されて、チキンな議員は報酬返還をあきらめるようになったのです。

 だれがそんな脅しをいってるのか? それは総務省(旧・自治省)です。
 でも、報酬返還が寄付に当たると主張してるのは総務省だけなんです。他の人たちはそんな解釈をしてません。その証拠に、90年以降も報酬の一部を返還した議員はたくさんいるのに、私が調べたかぎりでは、誰ひとりとして逮捕もされてないし、裁判にもなってません。つまり、警察も検察も報酬返還を公選法上の寄付行為、違法行為だとはみなしてないわけです。

 ところで、疑問に思いませんか。議員の寄付は違法だというけど、国会議員も安倍首相も、毎年赤い羽根つけてテレビに映ってるじゃん。あれは違法じゃないの?
 この寄付は違法じゃないのだそうです。自分の選挙区外で寄付すれば、それは公選法上の寄付には該当しないという理由で。
 なんだよそれ! ヘリクツの抜け道じゃねえか! とお怒りのかたもいらっしゃることでしょう。
 しかし、ものは考えようです。そのヘリクツの抜け道を利用すればいいのです。

 議員報酬を返還したい議員は、自分の選挙区外の自治体に寄付すればいいんです。
 バカいうな? 自分の選挙区の自治体財政が苦しいから報酬を返還するのだろう。よそに寄付したら本来の目的を果たせないではないか?
 それをやるのが、ひとりだけなら、たしかにそうです。でも、2人以上ならどうでしょう。
 ちがう選挙区の地方議員同士が提携すればいいんです。議員報酬を返還したい議員同士で、互いの自治体に報酬を寄付するんです。
 たとえば、東京都議のパオロ議員と千葉県議のマリオ議員が、ふたりとも議員報酬を一部返還したいと考えているとします。でも地元には返還できない。そこで2人が提携して、パオロは千葉県に、マリオは東京都に、自分の報酬を寄付するんです。これなら自分の選挙区外への寄付だから違法ではないし、結果的に地元自治体の財政に貢献できます。
 全国の議員でネットワークを作れば、希望返還額が近い議員を見つけて、互いの自治体に返還することも可能です。
 これなら合法的な寄付だから、自治体は供託せずに受け取れるはず。
 どうなんでしょう。これでもまだ、総務省はべつの法律を持ち出してケチをつけてくるんでしょうか。選挙区外への寄付が違法だというのなら、選挙区外で赤い羽根に寄付した議員も全員、議員資格を停止しなきゃなりませんけど?
[ 2016/07/16 21:31 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)
プロフィール

Author:パオロ・マッツァリーノ
イタリア生まれの日本文化史研究家、戯作者。公式プロフィールにはイタリアン大学日本文化研究科卒とあるが、大学自体の存在が未確認。父は九州男児で国際スパイ(もしくは某ハンバーガーチェーンの店舗清掃員)、母はナポリの花売り娘、弟はフィレンツェ在住の家具職人のはずだが、本人はイタリア語で話しかけられるとなぜか聞こえないふりをするらしい。ジャズと立ち食いそばが好き。

パオロの著作
つっこみ力

読むワイドショー

思考の憑きもの

サラリーマン生態100年史

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歴史の「普通」ってなんですか?

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会社苦いかしょっぱいか

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