こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。
夏休みの自由研究に使える(かもしれない)アイデアをひとつ教えましょう。
題して、「自分の住む町の治安状況を調べてみよう」。
狙いとしては、マスコミの偏った報道や世間の無責任なデマに流されることなく、統計にもとづいた事実を直視する理性と知性を養いましょう、ってなところです。
その方法は、住んでる地域を管轄している警察署に問い合わせるだけ。
いきなり110番に電話してはいけません。あれは緊急通報用の番号なので、問い合わせのときは、各地の警察署に電話をかけます。
まずは、ネットで自分の住んでる地域を担当してる警察署を調べてみましょう。大きい市や区ですと、警察署がいくつかあって町ごとに担当がわかれているのが普通です。
いまどきのことですから、おそらく日本全国ほぼすべての警察署が、サイトを開設してるはずです。問い合わせの電話番号などもそこでわかると思います。
管轄の警察署のサイトを見つけたら、念のため犯罪統計のページがあるかどうか確認してください。そこに町ごと、犯罪種別ごとの詳細な犯罪統計データがあったらラッキーですが、そう簡単にことは運びません。
私が知るかぎりでは、情報公開にそこまで熱心な警察署はほとんどありません。管轄地域全体の犯罪数を、いくつかの罪種にかぎって過去3年分くらい公開してるだけ、みたいなのが多いです。で、昨年に比べて犯罪が増加している、減少しているなんて注釈をつけてたりしますけど、そんな分析は統計学的にいうと、無意味です。
日本は国全体でも犯罪がとても少ないので、町単位にするとかなり少なくなってしまいます。なので、犯罪発生状況の傾向は、長期的に見ないと正しく判断できません。少なくとも過去10年分くらいのデータを見てください。でないと、増加・減少などの傾向は読み取れません。
次に、どの犯罪について調べるか。殺人や誘拐なんてのは町単位で見たらめったに起きませんし、万引きは逆に多すぎて、店が届け出ないことも多いので統計調査には不向きです。不審者情報は未遂や誤報が多いのであてになりません。
どこの町でもある程度起きていて、治安の良し悪しの指標にしやすいのは、住宅に侵入する窃盗の数でしょう。警察の分類用語でいうと「空き巣」と「忍び込み」の合計数になります。
というわけで、自分が住む町で発生した空き巣と忍び込み、その毎年の発生件数を過去10年分調べてみましょう。
調べる内容が具体的に決まったところで、管轄の警察署に電話してたずねます。私が以前住んでた町で試した経験では、地域の犯罪統計について教えてくださいといったら、生活安全課にまわされて、とてもめんどくさそうに応対されました。
そりゃそうですよ。むこうにしてみれば、余計な仕事を増やされるんですから。でも、市民には知る権利がありますし、調査研究のためなのだから、恐縮せず、ていねいな態度でお願いしてみてください。
よほどの大事件が起きてでもいないかぎりは、断られることはないはずです。ただ、データを調べるのに時間がかかるので、折り返し電話します、ってことになると思います。教えてもらったらお礼の言葉を忘れずに。
データを入手できたらグラフにしてみると、傾向が一目でわかります。
たぶん、ですけど、日本全国の傾向から推測すると、長期的にはほとんどの町で、空き巣事件は横ばいかやや減少傾向になってるはずです。
そうだ、できれば過去10年の町の人口の変化も調べておいてください。これは市区町村のサイトでわかるでしょう。人口が急増している町では、犯罪も増えている可能性があります。人口が減ってるのに犯罪が増えてたら、ちょっと危ない。
まれに、ある年だけ数字が突出してることもあります。そういうときは図書館に行って、その年の地元の新聞を読んでみてください。プロの窃盗団が、正月に帰省してる家を狙って集中的に仕事をした、なんて記事が見つかるかもしれません。
データの変化から、町の歴史まで読み取れることもあるのです。
[ 2016/08/21 20:48 ]
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