こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。みなさんは、これまでだれかに、丁寧な説明をしてくれと求めたことがありますか。あるいは求められたことがありますか。私はたぶん一度もないと思います。
松居さんは船越さんに、丁寧な説明を求めたでしょうか。ブログを拝見したかぎりでは、求めてないようです。ていうか、もしも丁寧な説明をされれば、すべてを許して水に流すのでしょうか? 到底そうは思えませんよね、いまのこじれ具合ですと。
池上彰さんは、丁寧な説明をしてくれるから人気があるのでしょうか。そうじゃないでしょ。「わかりやすい」説明をしてるから、人気があるんです。
テレビCMで予備校の英語の先生が、ほんの5秒くらいで英文法のキモを、これ以上ないってくらい明快かつ簡潔に教えてることに感心したかたも多いのでは。中学・高校の英語の先生のほうが、授業で時間をかけて丁寧に教えてます。でもその説明はかえってわかりにくかったりします。学校の英語の授業がよくわからなかった生徒が、予備校の授業を受けたら目からウロコが落ちた、なんてのは、むかしからけっこうあります。
安倍総理はことあるごとに、国民のみなさんに丁寧な説明をするといってますが、国民は丁寧な説明なんて求めてないんですよ。なぜなら、丁寧な説明なんてものには、なんの価値もないからです。
価値があるのは、わかりやすい説明です。客観的な根拠にもとづいていて、論理的に矛盾がなく、論点ずらしのような姑息なごまかしもない説明ならば、簡潔な説明だけでじゅうぶん納得できるんです。
逆に、根拠もあいまいで矛盾だらけで論点がずれてたら、どんなに言葉を重ね丁寧に説明したところで、それは相手を煙に巻こうとしてるだけだから、疑念と不信が増すだけです。長々と説明すれば相手が根負けして、「もういい!」ということもあるけれど、それは相手を納得させたわけじゃなく、あきらめさせただけ。そんな卑怯な議論は、暴力で相手を黙らせるのと同じくらい低俗です。
長々と説明したあと、相手から「ご丁寧な説明をありがとうございます」なんていわれたら、それは感謝の言葉でなく、皮肉なんですよ。「おまえの話はちっともわかんねえよ」って意味のね。
丁寧な説明は主張の内容が事実かどうかをなにも保証しないんです。根拠と論理が明快ならば、むしろ説明はできるだけ簡潔なほうがいいんです。
[ 2017/07/21 21:08 ]
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