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Jアラートは火の用心

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。私はソフトバンクのプリペイドガラケーを使ってるので、Jアラートとは無縁です。先日のミサイル騒ぎではじめてどんなシステムなのか知りました。
 Jアラートは火の用心と同じですね。危機管理にはほとんど役に立たないので、なくても全然困りません。いかにも、情緒ですべてを解決しようとする日本人らしいやりかたです。危機管理に必要なのは警報じゃなくて、情報だということを、まるでわかってない。
 以前から私は拍子木を叩いてまわる火の用心や防犯パトロールを無意味どころか逆効果だと批判してきました。あれは単なる警報なんです。危ないよー危ないよー、と騒いでるだけ。どんな火事や犯罪がどこでどれくらい起きてるかといった、防犯防災に不可欠な情報はなにももたらしません。それどころか、パトロールの時間と経路という情報を、放火魔や犯罪者に音で教えているという、マヌケな風物詩です(実際、放火魔が火の用心の音を参考にして犯行を重ねてた例はけっこうあります)
 Jアラートも、危ないよー危ないよーと警報を発するだけで、なにも情報を与えてくれません。ミサイルがいまどのあたりを飛んでるのか、それを1分ごと、30秒ごとにでもリアルタイムで教えてくれなければ、対処のしようがありません。10分前に北海道上空を通過しました、って過去の情報を教えられて、どうしろっての? もし直撃弾だったら、死者のスマホに「10分前にあなたのところに着弾しました」と通知が来るのですか? 凄いブラックユーモアですね。
 危機に際して人々がなにより欲しいのは、最新の正確な情報なんです。警報だけ流して情報を流さないから、デマがはびこるんです。人々は情報が欲しいから、ウソ情報にもとびついて、かえって危険な行動に走ってしまう。だからデマを防ぐためにも、政府は正確な情報を流し続けなければいけないし、そうする義務があるのです。
 警報だけ流して情報を流さないのは無責任です。それは人々を不安にさせるだけ。Jアラートなどという警報だけで危機管理をしてるつもりになってる政府や、それをありがたがってる国民こそが、安全ボケ、平和ボケです。一刻も早く、警報でなく情報を流すシステムを構築してください。そうすれば私もスマホを買い替えるかもしれません。
[ 2017/08/30 20:12 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)
プロフィール

Author:パオロ・マッツァリーノ
イタリア生まれの日本文化史研究家、戯作者。公式プロフィールにはイタリアン大学日本文化研究科卒とあるが、大学自体の存在が未確認。父は九州男児で国際スパイ(もしくは某ハンバーガーチェーンの店舗清掃員)、母はナポリの花売り娘、弟はフィレンツェ在住の家具職人のはずだが、本人はイタリア語で話しかけられるとなぜか聞こえないふりをするらしい。ジャズと立ち食いそばが好き。

パオロの著作
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