こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。毎日暑いですね。
世間はお盆休みです。自由業の私には世間の休みはあまり関係ありません。先日仕事が一段落したところなんで、旅行などに出掛けるチャンスなのですが、この暑さですし、みんなが出掛けて混雑しているときにのこのこ出掛けて混雑に拍車をかけるのもねえ。
ワイルドじゃないんで、バーベキューやキャンプなんて野外活動もごめんです。暑いさなかにわざわざおもてでメシ炊いたり肉焼いたりして、なにが楽しいのか、意味がわかりません。
というわけで、もっぱらウチで本読んだりテレビ見たりして、だらだらとすごしています。
拾いものだったのは、WOWOWで放送された『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』というドキュメンタリー映画。現代アートに縁のない私は知らなかったのですが、バンクシーというカリスマ的なストリートアーティストがいるそうです。街中にゲリラ的に作品を置いたり、違法なことをするので、顔を出さない覆面アーティスト。
彼についてのドキュメンタリーなのかと思ったら、ちがいました。バンクシーの追っかけをしてた、ストリートアート好きなヘンなオッサンが主役なんです。このオッサン、芸術の才能がまるでないくせに、バンクシーのお世辞を真に受けて自分もストリートアーティストを目指してしまいます。もちろんアートの世界ではなんの実績もないのですが、もともと古着屋商売をしてて金持ちだったんで、湯水のごとく資金を投入し、大々的に展覧会を開き、宣伝して、他人のパクリばかりのしょうもない作品を大量に展示したら、なんと、百万ドル以上売上げて大成功し、いまじゃすっかり大物アーティスト気取りです。
いんちきなパクリ作品が名作として高値で取り引きされてしまう現代アートの実態を暴露した、ドキュメンタリーの秀作です。
が、あまりにできすぎた話なので、この映画自体がでっちあげのフィクションなんじゃないか、このオッサンこそがじつはバンクシーなんじゃないか、という疑惑が映画公開後に取りざたされたようです。でも海外サイトなどの情報によれば、このオッサンの実在は確認されていて、バンクシー本人ではなさそうです。だいいち、面が割れてしまったら非合法なパフォーマンスがやりづらくなりますから、わざわざ素顔をさらす意味もないでしょう。
それに、これまで個性的なアイデアやパフォーマンスをやって名をあげてきたアーティストが、たとえ他人名義であっても、皮肉や諷刺のためであっても、おのれの劣化コピーのような作品を大量に発表し続けるだろうかと考えると、アーティストの心理としてありえない気がします。
まあ、万が一、これがフィクションだったとしても、コメディの傑作としてじゅうぶん評価に値します。いずれにしても観て損はありません。
[ 2012/08/13 17:04 ]
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