こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。先日、新刊が発売になりました。『歴史の「普通」ってなんですか?』(ベスト新書)。ブログ左の「パオロの著作」欄の表紙画像をクリックすると、私が書いた内容紹介ページが開きます。アマゾンとか販売サイトへ誘導するリンクじゃないので、ご安心を。
今回、電子版も書籍版と同時発売となっております。本が売れないと、健康で文化的な最低限度の生活ができませんので、よろしくお願いします。私が大学に勤務して給料もらってるなんてのはフェイクニュースですから。私は怠け者なんで、そんな安定収入があったら本なんて書きません。
さて、ちょっと時間がたってしまいましたけど、夏ドラマの総括と、秋ドラマの序盤評を。
夏ドラマは、序盤の評価が最後まで変わりませんでした。変態性とヒューマニズムを合わせ持つ『高嶺の花』、いのちの問題に真摯に向き合う『透明なゆりかご』、地味だけど的確な脚本と演出をほめたい『健康で文化的な最低限度の生活』。この3本がベスト。
なにより意外だったのは、『ギボムス』の評判がやたらとよかったこと。私は綾瀬はるかさんの大ファンなので、もちろん初回はチェックしましたよ。でも、いかんせん、こんなキャリアウーマンいねえよ、とリアリティなさすぎで興醒めだったので、初回だけでやめてしまいました。
逆に、私は石原さとみさんに女優としての魅力を感じたことは一度もないです。『高嶺の花』の演技も、期待には応えてたけど、期待を越えてはいないって感じで。でもドラマ自体は評価します。
このドラマが視聴率でふるわなかったのを石原さんのせいにしてる批評がけっこうありましたけど、それは違いますね。個性的でトガってるドラマのおもしろさを理解できない視聴者が多かったというだけのこと。
やはり視聴率がいまひとつだった『健康で文化的な最低限度の生活』についても、擁護しておきましょう。
生活保護制度を悪用するのはごく一部の人間にすぎません。利用者のほとんどは、さまざまな不幸・不運によって貧困に陥ってしまった、ごく普通のひとたちです。そして担当職員もヒーローではない、ごく普通のひとたち。
そういうメッセージを伝えるため、きれいどころの吉岡里帆さんに、あえて地味で普通の人間を演じさせてます。そして、受給者を演じる毎回のゲスト俳優に実力ある演技派を揃えることで、物語の説得力をあげるという方針をとっていて、成功してました。このドラマの主役は毎回のゲスト俳優であって、吉岡さんは狂言回しなんです。
いちばん印象に残ったのは、アルコール依存症患者を演じた音尾琢真さん。ホントに味のある役者さんですよね。いつも感心します。
さて、はじまったばかりの秋ドラマを何本か観ましたが……今期は一択です。その一本とは、『昭和元禄落語心中』。控えめにいって、傑作。ひょっとしたら、ドラマ史上に残る名作になる可能性すらあります。
観た人はおそらくみなさん、同じことに驚いたんじゃないですか。岡田将生さんって、こんなに芝居できるひとだったんだ! なんかいままで、告知でバラエティ番組に出て先輩俳優にイジられるひと、くらいの印象しかなかったのですが、初回では老齢の落語家を見事に演じてました。高座のシーンにも不自然さがなかったんで、相当、落語の特訓もしたんでしょうね。
となると、逆に第2話からの青春編はどうなのよ、と心配になったけど、杞憂でした。ついでに、ライバル・親友役の熱い男を演じた山崎育三郎さんも文句なし。
もともと落語は嫌いじゃないんで、落語マンガのおもしろいのがあると評判を聞きつけて、原作マンガも以前に読んでます。でもなんかノリがあわなくて、1巻だけでやめてしまったんですよねえ。そんな先入観もあって、ドラマも期待せずに観たのですが、すっかりやられちゃいました。毎週楽しみです。
[ 2018/10/21 18:12 ]
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