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一長一短の夏ドラマ

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。今期のドラマはどれも一長一短という感想を持ったのですが、それは悪口ではありません。長短あるのは個性がある証拠。長も短もなく、可も不可もないってのが、なによりつまらない。

『監察医朝顔』
 初回、本筋の事件は1時間であっさり終わり、残りの30分どうするのかと思ったら、朝顔の家庭事情が描かれます。母親の不在や、刑事である父が現場の証拠品捜査に異常に熟練してること、朝顔の遺体との向き合いかたなど、前半で何げなく張られていた伏線が回収され、そういう理由があったのかと腑に落ちます。それをナレーションや説明ゼリフに頼ることなく、映像と普通の会話だけでわからせてるのが素晴らしい。初回だけで単発ドラマや映画だったとしても成立してる完成度。それだけに、医学ミステリのネタがいまひとつなのが惜しい。

『Heaven?』
 以前、『チャンネルはそのまま!』について、ミニシリーズだからテンポのいい作品になったが、ワンクールに延ばしたらダラダラしたかも、と書きました。『Heaven?』はまさにその悪い方向に行ってそう。2話のシェフと社長のエピソードって全然おもしろくなかったんだけど、原作にありましたっけ? 少なくとも時間延長してまでやるネタじゃないでしょ。ヘンに感動とかを狙わず、シチュエーションコメディに徹するべき。

『ルパンの娘』
 コメディとはいえ、ここまでリアリティをガン無視して、すべてがありえない話を確信犯的にやれるのは、凄い肝っ玉ですねえ。マジメな批評は無意味です。見るか見ないかは好き嫌いで決めてください。さすがに同じノリを最後まで続けたら飽きられるのは確実なので、どこかの時点で展開を変える用意をしてるはず。とことん攻めてほしいものです。

『ボイス』
 1話完結の刑事ものやミステリが主流になってますが、せっかく連ドラでやるのなら、盛り上がったところで来週に続く、このあとどうなるんだろう、ってのを見たいなって欲求に応えてくれる作品。猟奇的な犯人像がステレオタイプすぎるところが若干シラケますけども、主役ふたりの正義の熱量が異様に高いので、極悪な犯人をぶつけないと釣り合わないのかな。

『凪のお暇』
 安アパートにひとり暮らしで、自分ひとりが食っていくのに困らないだけの仕事しかしないという不埒な生きかたをしてる私は、まさにずっとお暇をいただいてるようなもの。このまま老いさらばえていくのではと凪が不安になるところは、身につまされました。
 これもとてもよくできてるドラマです。高橋一生さんがすげえイヤなヤツを楽しそうに演じてるのもいいですね。全体的には合格点ですが、なにかもの足りなさをおぼえたのも事実。主人公が控えめなキャラだからでしょうかね? とりあえず、次回も見て確かめます。
[ 2019/07/23 13:49 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)
プロフィール

Author:パオロ・マッツァリーノ
イタリア生まれの日本文化史研究家、戯作者。公式プロフィールにはイタリアン大学日本文化研究科卒とあるが、大学自体の存在が未確認。父は九州男児で国際スパイ(もしくは某ハンバーガーチェーンの店舗清掃員)、母はナポリの花売り娘、弟はフィレンツェ在住の家具職人のはずだが、本人はイタリア語で話しかけられるとなぜか聞こえないふりをするらしい。ジャズと立ち食いそばが好き。

パオロの著作
つっこみ力

読むワイドショー

思考の憑きもの

サラリーマン生態100年史

偽善のトリセツ

歴史の「普通」ってなんですか?

世間を渡る読書術

会社苦いかしょっぱいか

みんなの道徳解体新書

日本人のための怒りかた講座

エラい人にはウソがある

昔はよかった病

日本文化史

偽善のすすめ

13歳からの反社会学(文庫)

ザ・世のなか力

怒る!日本文化論

日本列島プチ改造論(文庫)

パオロ・マッツァリーノの日本史漫談

コドモダマシ(文庫)

13歳からの反社会学

続・反社会学講座(文庫)

日本列島プチ改造論

コドモダマシ

反社会学講座(文庫)

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反社会学の不埒な研究報告