こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。覆面アーティストとして有名なバンクシーさんの絵が高値で落札されたとニュースで報じられました。そういえば、東京都にある防潮扉にも、バンクシーさんの作品らしきネズミの絵が描かれてたと話題になりましたよね。
小池都知事は大はしゃぎで、作品が描かれた部分を外して保存するよう命じ、ゴールデンウイークには都庁で展示・公開までされたんです。
でもあの東京のネズミの絵は、ほぼ間違いなくニセモノですね。だれかがバンクシーさんの作品を転写しただけでしょう。
私がそう推論したのには、もちろん理由があります。
理由その1。盗まれなかったから。
バンクシーさんの作品には高額の値がつくことは、美術の専門家じゃない私でも知ってるのだから、プロの窃盗団にとっては常識でしょう。実際、パリの美術館の駐車場の案内板かなんかに書かれた作品は、盗難対策がなされていたにもかかわらず、早々に盗まれました。
東京の防潮扉の絵は、10年くらい前からあったことが知られてたそうです。いまどき、金になるとわかれば蛇口でもエアコンの室外機でも盗まれるんですよ。あの絵が本物だったら、とっくのむかしに盗まれてたはずです。
理由その2。作品にテーマもメッセージ性もないから。
作品を見れば容易にわかりますが、政治風刺や社会風刺を前面に出すのがバンクシーさんの作風です。そのメッセージは、反権力、反権威、反戦、平和主義といった、かなりリベラルなものばかりです。あえて、ストリートアート(落書き)という違法な手段を用いてるのも、反権力の立場を明確にするためでしょう。
なので、もしも本当にバンクシーさんが日本で作品を残すとしたら、日本の保守層が不快感をおぼえるような作品になるはずです。あの防潮扉のネズミの絵に、なんのメッセージがありますか? なにもないですね。なんのメッセージもテーマも皮肉も諷刺もない、単なるかわいいイラストを、バンクシーさんがわざわざ日本に描きにくるわけがありません。
私はバンクシーさんのファンですから、ぜひ日本に作品を描きに来てもらいたい。いまだったらきっと、日韓のいがみあいを風刺するような作品になるんじゃないですか。もしそんな作品が描かれたら、「そんな落書きを公金・税金を使って保存するな! すぐに消せ!」みたいな抗議の声が殺到するかもね。
[ 2019/10/04 19:25 ]
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