こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。遅ればせながら、秋ドラマの序盤評を。
序盤といいながら、すでに終了したイレギュラーな作品がありまして、『令和元年版怪談牡丹灯籠』。これがほぼ満点といってもいい出来だったので、ぜひとも言及しておきたくて。
牡丹灯籠というと、怪談として有名ですが、それは全体のうちのひとつのエピソードにすぎません。もともとは、明治時代に三遊亭圓朝が作った大長編落語です。何日もかけて演じるネタで、お客さんも毎日寄席に通って聞いたってんだから、当時は寄席がテレビやラジオと同じ役割を果たしてたことがわかります。
落語といっても笑いの要素はなくて、因果応報の観念にもとづく愛憎劇です。因果応報なんで、悪いことをしたヤツは全員死にます(笑)。とはいうものの、悪いことしてないヤツも死ぬんだよね。
今回のドラマは、怪談以外の本筋も映像化した珍しい作品です。人間の欲望や業といった醜さを中心に描きながらも、どこかロマンチックな感じもするのが不思議。時代劇の様式は守りつつも、時代劇演出にありがちな冗長な描写が極力省かれていて、ダレるところがありません。全体としては群像劇なのですが、実質的な主役である尾野真千子さんの悪女ぶりと、不義の相手となる柄本佑さんの酷薄な演技が光ってます。
今期は続編が目立ちます。『まだ結婚できない男』と『時効警察はじめました』には、なぜいまさら続編? とクビをかしげたものの、フタを開けるとさすがのクオリティ。どちらも前シリーズを超えるとこまでは行かなそうですが、これくらい楽しめれば御の字です。
三木聡さんが監督した映画は、振れ幅が大きいんですよね。ホームランか三振かみたいな。『亀は意外と速く泳ぐ』と『転々』はホームランなので、『時効警察』が好きなひとは必見。とくに『亀は意外と速く泳ぐ』はシュール・ナンセンス系コメディの名作なのに、世間でまったく評価されてないのが残念でなりません。たまたま1年くらい前にDVDで見直してるのですが、何度見ても私の評価は下がりません。
期待してなかったけどいちおう見た『おっさんずラブ in the sky』でしたが、やっぱり笑っちゃいました。一度当ててメジャーになっても、深夜枠ドラマのノリを忘れてないのがいいところ。それにしても前作同様、こんなゲイ率の高い職場って、ある?
オリジナルだと『同期のサクラ』。いつもどおり、遊川さんのドラマは見るのに覚悟がいります。人間の化けの皮を剥がして、イヤなところをむき出しにされるから。でも今回は毎回、じいちゃんの言葉とかで泣かせにくるのがズルいなあ。仕掛けてくるのがわかってても、うるっときちゃうでしょ。『過保護のカホコ』は後半が甘くなりすぎてつまらなかったので、今回は最後まで甘辛のままでお願いしますよ。
[ 2019/11/04 20:53 ]
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