こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。年末で忙しいときにも、ささっと食べられる、とっておきの東京丼物B級グルメをご紹介します。
まずは秋葉原。おでん缶の自販機で有名な場所のそばにある居酒屋「石くら」の牛すじ丼。
ごはんの上にたっぷり載った牛すじの煮込み、プラス温泉玉子、以上。潔い。牛すじはちょっと濃いめの味付けなので、食べ終わる頃にはもう飽きてます。なのに、なぜか半年くらい経つと無性に食べたくなって、また足を運んでしまうあたりが、いかにもB級グルメたるゆえん。
私は昼の定食でしか食べたことがないので、夜の居酒屋タイムでも出してるかどうかは知りません。ていうか、じつはこの店の名前もさっきネットで調べて知りました。本当にたまたま昼時に店の前を通りかかって入って以来、私にとっては「牛すじ丼の店」だったのです。
次は渋谷。センター街と井の頭通りをつなぐ路地にある中華料理店「香港食市場」の麻婆豆腐丼(たぶんランチのみ)。こちらも店名を知らず、いまネットで確認しました。
いまどき500円で、鶏のからあげが2個ついてるんですよ。値段が値段だけに、驚くほどのうまさではないけれど、そのへんの町中華の麻婆は軽く超えてるんじゃないですか。
最後は池袋駅北口の「天丼ふじ」なんですが、この店をB級と呼ぶのは失礼かもしれません。天丼と、私のおすすめ穴子天丼、ともに800円です。コスパだけを考えたら、てんやに行ったほうがいい。
この店は、天丼の味以外が、すべてにおいてB級なんです。ここを発見したのもたまたまでした。池袋の北口って、ディープゾーンでめったに行かないんですよ。2年ほど前、北口近くのゲオに中古スマホを探しに行った帰りのことでした。店先にかかるのれんには天丼の文字。天丼の専門店なんて珍しいなと思いつつも、あまりにくたびれた外観で入る気にはなれませんでした。でも店内はお客さんで埋まってるのがのれん越しに見えたので、ずっと気になってたんです。
で、後日、思い切って入ってみました。AMラジオが流れる狭い店内はカウンターのみ。接客するのは外国人留学生のアルバイト。厨房ではおやじさんがひとりで黙々と天ぷらを揚げ続けています。
待つこと数分、出てきた穴子天丼の見た目がまた、なんとも地味。店全体が、ザ・昭和。インスタ映えなんて概念は、この店には存在しないのです、永遠に。
しかし、穴子をひとくち食べて驚きました。えっ? なにこれ、うまっ! これは私の勝手な想像ですが、おやじさんはきっと、一流の天ぷら屋で修行したひとなんじゃないですか。いや、ホントにそう思わせる味なんです。
インスタ映え競争に疲れた現代人にとって、この店はオアシスです。見た目なんて、地味でいいんだ。
ひとつ心配なのは、おやじさんがけっこうなお歳に見えること。黒龍門、乱切りそばあずみ、私が気にいってた店がなぜか次々閉まる池袋で、天丼ふじは最後の希望です。おやじさんの引退の日がなるべく先延ばしになるよう、祈ってます。
[ 2019/12/04 21:15 ]
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