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選ばず、こだわらず、対策を

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。先週、『病室で念仏を唱えないでください』の最終回で、母と妻が同時に溺れていたら、どちらを助けるかという仏教説話が使われてました。このジレンマを問われた高名なお坊さんは、「近いほうを助ける」と答えたのだそうな。
 私はすべての宗教を思想としてみてるので、信仰心はありません。寺社を訪れても拝んだり祈ったりしません。天罰神罰みたいなものを一切信じないけど、ご利益なんてのも一切期待してません。
 もちろん仏教の信者でもありませんが、宗教思想の中では仏教思想は一番おもしろいと評価してます。仏教といってもいろいろありまして、近いほうを助ける話は禅宗の説話みたいなので、他の宗派の僧侶は異を唱えるかもしれません。でも、この説話には仏教的なセンスがよく現れていると思います。
 要するに「選ばない」のが大事だと。仏教は「こだわる」ことを戒めるんです。どのいのちを救うかを選ぶことはこだわりであるし、救ういのちを選ぶ権利が自分にあると思うのは、自分が仏や神の立場に立とうとしてることになります。なんと傲慢な。
 しかも誰を救うか選ぶとなると、そこには必ず選別するための理由があるわけです。なんらかの理由によって選んでしまうと、理由に該当するしないによって不公平が生じます。選ばれるために理由や判定基準を操作すると、それは不正になります。

 コロナウィルス不況の対策がいろいろ検討されてますけども、いま行われてる対策はすべて、救う対象を選ぶものばかりです。だから、なんであいつらには補助金出すのに、オレらにはないんだ、あの業者には貸し付けするのにこっちには貸してくれないのか、みたいな不公平が生じます。
 減税ってのもおかしな話です。そもそも収入がなければ税金も払わないんですから、減税されても意味がない。消費税の減税も同じです。5%や3%減税されたからといって、先立つもの、お金がなければ買えません。
 だから、ある程度まとまった額の現金を、無条件で全員に配るってのが、いまの状況下では最良の対策です。誰を救うかを選んでるかぎり、ムダに時間だけが過ぎていくし、必ず不公平と不正が生じます。
 この期におよんでなお、困ってるひとだけに支給するべきだ、などと政治家や政府が「選ぶ」ことにこだわってるのは、不合理極まりない。
「ワタシは困ってるからお金ください」
「いや、あなたは困ってない。困ってることを証明せよ」
 みたいな不毛なやりとりを窓口で繰り返すつもりですか。
 現金を配っても貯蓄に回るなんて心配をしてるひとは、アタマだけでなく目も悪い。いますぐそこで、カネがなくて困ってるひとたちの姿が見えてないんですから。近いところから救わなきゃ、しょうがないでしょ。全員に一律で現金を給付すれば、困ってるひとは確実に助かります。余裕のあるひとが貯蓄しようが、どぶに捨てようが、寄付しようが、どうでもいいことです。好きにすればいい。
 病気でもひとは死ぬけど、貧乏でもひとは死にますよ。一刻も早く、選ばず、こだわらず、対策を講じるべきです。
[ 2020/03/26 16:51 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)
プロフィール

Author:パオロ・マッツァリーノ
イタリア生まれの日本文化史研究家、戯作者。公式プロフィールにはイタリアン大学日本文化研究科卒とあるが、大学自体の存在が未確認。父は九州男児で国際スパイ(もしくは某ハンバーガーチェーンの店舗清掃員)、母はナポリの花売り娘、弟はフィレンツェ在住の家具職人のはずだが、本人はイタリア語で話しかけられるとなぜか聞こえないふりをするらしい。ジャズと立ち食いそばが好き。

パオロの著作
つっこみ力

読むワイドショー

思考の憑きもの

サラリーマン生態100年史

偽善のトリセツ

歴史の「普通」ってなんですか?

世間を渡る読書術

会社苦いかしょっぱいか

みんなの道徳解体新書

日本人のための怒りかた講座

エラい人にはウソがある

昔はよかった病

日本文化史

偽善のすすめ

13歳からの反社会学(文庫)

ザ・世のなか力

怒る!日本文化論

日本列島プチ改造論(文庫)

パオロ・マッツァリーノの日本史漫談

コドモダマシ(文庫)

13歳からの反社会学

続・反社会学講座(文庫)

日本列島プチ改造論

コドモダマシ

反社会学講座(文庫)

つっこみ力

反社会学の不埒な研究報告